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幸せ星2



それからカカシとの付き合いは、なんとなく続いていた。
時々、食事に行ったり飲みに行ったり。
休憩時間、偶然にも休憩所で鉢合わせして和やかに談笑する機会もあった。
だんだんとカカシがイルカの身近にいるようになってきた。
カカシさんて話してみると感じが違うなあ。
今までカカシに持っていた印象が払拭されていく。
優しい人には変わりがないけど、優しくて面白くて楽しい人だ。
それでいて、時折、垣間見るカカシの上忍としての厳しい一面やはっきりと意見という様を見て、 イルカはカカシになお、いっそう好感を抱き尊敬の念を深めていった。
ただ、どんなに親しくなっても上忍と中忍という間柄は忘れずに常に一線を引くことを心がけながら。



「ねえ、イルカ先生」
ある日、休憩所でばったりカカシと会って一緒に缶コーヒーなんぞを飲んでいたイルカは真剣な声でカカシに話しかけられた。
「はい、なんでしょう?」
「俺ですね」
缶コーヒーを両手で包むように持ち、俯いたカカシは何事かを迷っているようだった。
「実は・・・」
カカシは躊躇いがちだ。
いつものカカシらしくない。
そんなカカシのことが心配になったのだが努めて穏やかな声でイルカは尋ねた。
「どうかしましたか」
「はい、あのですね・・・」
俯いていた顔をカカシは上げた。
真剣な面持ちだ。
イルカはカカシを見て頷いて見せる。
「明日から一ヶ月ほど任務で里を離れます」
「そうだったんですか」
「はい。で、ですね」
缶コーヒーを傍らに置くとカカシはイルカの缶コーヒーも、そっと取り上げて傍に置く。
それからイルカの両手を自分の両手で握った。
大切に包み込むように。



「里で、俺のことを待っていてくれますか?」
カカシは真面目だった。
真意が何なのかイルカには、いまいち分からなかったのだがカカシが真面目に言っていると いうことだけは分かる。
カカシは里で誰かに待っていてほしいのだろうか。
任務で里を出る時、誰でも郷愁の思いが出てしまう。
待っていてくれる人がいると思えば任務も頑張れる、生きて里に帰ろうと思うのだ。
多分、カカシもそうなのだろうとイルカは考えた。
「分かりました」
イルカも真面目に答えた。
「カカシさんのお帰りをお待ちしています」
心から言った。
カカシとは階級は違えど親しくさせてもらっている。
親しい人が無事に帰って来てほしいと思うことは当然のことだ。



「無事に帰って来てください」
「はい!」
カカシは、ほっとした笑みを浮かべて嬉しそうな声を出した。
「イルカ先生が俺のことを待っていてくれると思うだけで幸せです」
そんなカカシの言葉を嬉しく思いながらもイルカは照れ隠しに言う。
「そんな・・・。大げさですよ、俺が待っているくらいで」
「そんなことありません」
カカシは強く否定する。
「イルカ先生の存在は俺を強くします」
きっぱりとカカシは言い切った。
「はあ・・・」
カカシに思いがけないことを言われたが自分のことを、 そんな風に思ったことがないイルカは曖昧な返事になってしまう。



「だから、イルカ先生」
手を握ったままのカカシは、ぐぐっとイルカの方へと身を乗り出してきた。
「俺がいない間、あいつと仲良くしないでください」
お願いです、とこれまたカカシは真面目に言ってきた。
「あいつ?」
思い当たる相手がいない。
カカシは誰のことを言っているだろう?
「あいつって・・・」
首を傾げるイルカにカカシは焦れったそうに訴えた。
「ほら、あいつですよ。受付所で、やたらイルカ先生にべたべた触わってくるやつがいるでしょう」
「ああ・・・」
やっとイルカは理解した。
「あいつって、あいつのことですか」



カカシが言っている人物とはイルカの同僚で少々、 スキンシップが過剰なところがあり、そこが長所でもあり短所でもある。
基本的には良いやつだった。
そういえば、以前にもカカシさん、あいつのこと馴れ馴れしいとか図々しいとか言っていたような。
イルカは思い出した。
カカシはイルカに対しての過剰なスキンシップについて怒っていた。
そのことは、それきりになっていたのでイルカはカカシに訊くことはしなかったのだ。
あの時、どうしてカカシさんは怒っていたのだろう・・・。
イルカがカカシが怒っていた訳を考える間もなくカカシは続ける。
「俺がいない間、あいつには近づかないでください」
そう、要求してきた。
しかし、それはちょっと無理かもしれない。
同じ仕事をしている同僚なのだ。
それを言うとカカシは「じゃあ、せめて二人きりにならないで」と必死な様子でイルカの手を握ってくる。



二人きりにならないというのは、どうだろう?
可能かもしれないし不可能かもしれない。
イルカは、そう答えようとしたが任務前のカカシの要求に出来る範囲で応えたかった。
不安な気持ちにさせたくない。
「分かりました」と慎重に答えた。
「そうですか」
カカシは安心したように肩の力を抜く。
「嬉しいです」と、にっこり笑う。
イルカの言葉を信じている笑みだった。
「それからね、イルカ先生」
ふと耳元でカカシに囁かれた。
「俺、任務から帰ってきたらイルカ先生に言いたいことがあるんです」
「言いたい・・・こと?」
「はい、言いたいことっていうか伝えたいことです」
カカシは自分に何を言おうとしているのか、ちょっとどきどきする。
それ以上はカカシは何も言わず。
イルカに心を残したまま、任務に行ってしまったのだった。



そして一ヵ月が過ぎた。
カカシが任務で里にいない。
寂しいなあ。
イルカは思っていた。
カカシさんがいないと寂しい。
寂しいという気持ちは会いたいという気持ちに繋がる。
どうしているかな、カカシさん。
同じ空の下にいるカカシのことを思って空を見上げたりしてしまう。
「会いたいなあ、カカシさん」
思わず、口に出してしまう程、その気持ちは強くなっていた。
そんな時だ。
例の同僚から言われた。
カカシが厳重に釘を刺した相手だ、二人きりならないようにと。
・・・といってもカカシがいなくてもいても特に何もない。
同僚という関係だけだ。



「イルカ、任務だ。俺と一緒に」
「え、任務?」
「そう、資材運搬だって」
「資材って何だよ」
同僚は肩を竦めた。
「簡単に言えば荷物運びかな。任務で里外に出ていた上忍たちが里の近くまで帰って来ているんだが、 荷物が多いので運ぶの手伝ってほしいってさ」
今日中に帰ってこられるし今の時間帯、空いているのが俺とイルカだからさと同僚は気軽に言う。
「そっか、分かった」
イルカは頷いた。
カカシに会えるかも、と淡い期待を抱く。
二人だけになるなとカカシさんは言っていたけれど。
任務だからいいだろうとイルカは判断した。



里に程近い場所にイルカは同僚と向かう。
そこには上忍たちが数名が休憩しており、使っていたと思われる資材が詰まれていた。
あれとこれと、と上忍に運んでほしいものを指示される。
それに返事をしながらもイルカはカカシの姿を、それとなく探した。
カカシさん、いるかなあ。
目立つカカシの容姿は、すぐに発見できた。
カカシさん!
ふっとイルカの顔が緩む。
怪我もなく無事な姿だ。
任務で来たのでカカシに話しかけようとは思わなかったが イルカは元気そうなカカシの姿を見られただけで満足だった。
だけども。
イルカの心臓はカカシを見た途端、大きな音を立てた。



どきん、と心臓の音がイルカの体の中で鳴り響く。
その原因は即座に判明した。
カカシの隣には女性がいたのだ。
寄り添うように、ぴたりと横にいる。
女性は、くのいちだろう。
きつめな目元が印象的で、強気な感じの見目麗しい女性だった。
背も、すらりと高い。
カカシと並んで立っているのを見ると、お似合いという言葉が浮かんでくる。
イルカは何故だか・・・。
急に胸が苦しくなってきた。
理由は不明だ。
カカシは、ただ女性と一緒に並んで立っているだけなのに。
その光景はイルカに凄まじい衝撃を与えたのだった。




幸せ星1
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