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幸せ星14



これで一件落着とイルカを抱きしめながらカカシは悦に浸っていた。
もう邪魔者はいない!
ほくほくとした気持ちになる。
イルカ先生の家にイルカ先生と二人きり。
イルカ先生の勘違いも、すっきり解消したし、これで俺たちとまで考えてカカシは、はたと思い出した。
自分の腕の中のイルカを見る。
イルカの朝帰りの件が、まだ終わっていない。
しかしイルカはカカシの腕の中で安心したような表情で幸せそうにしている。
この雰囲気を壊すは嫌だった。
できることなら、このままでいたい。
カカシは、そう思ったのだが朝帰りのイルカが腰を擦る姿を思い出すと、ふつふつと負の感情が涌き出てきてしまう。
これ即ち、嫉妬の感情だ。
一件落着はしたものの、カカシのこの感情を払拭しなければ本当の解決には至りそうになかった。



「ねえ、イルカ先生。俺、聞きたいことがあるんですが」
カカシは努めて優しい声を出しながら腕の中のイルカに慎重に尋ねた。
「なんでしょうか」
イルカの顔が間近にある。
大きな黒い瞳がカカシを見つめていた。
その黒い瞳はカカシに全幅の信頼を置いている。
・・・なんか、あれだなあ。
尋ねる前からカカシは敗北を感じていた。
もしも、もしもだけど。
心中、溜め息を吐く。
イルカ先生が他の誰かと朝までいたとしても俺・・・。
許してしまいそうだなあとカカシは思う。
それだけイルカのことが好きだから、しょうがないのだと。
離れることなんて出来やしないと本能が訴えていた。



とりあえず訊くだけ訊いてみた。
「今日ってか、さっきイルカ先生と道端で会ったでしょう?」
「ああ、そうですね」
「でね」
緊張してカカシは唇を舐める。
「イルカ先生って昨日の夜・・・」
ごくりと唾を飲む。
「どこに、いたの?」
どきどきしながらイルカの返答を待った。
こんなに緊張するのは久しぶりだ。
「昨日の夜、ですか」
「そうです」
こくこくとカカシは頷いた。
「あ!そういえばカカシさん、朝帰りがどうとか言っていましたよね」
「そう、その件です」
「だったら」
イルカが、こくりと首を縦に振った。
「俺、朝帰りしました」



そのイルカの答えにカカシは目の前が真っ暗になる。
「・・・そ、そそうなんですか」
がんと衝撃を受けた。
頭が、くらりとする。
やっぱりイルカは朝帰りしていたのだ。
・・・ショックだけど、でも。
でもイルカのことが好きだから、どうしようもない。
どうしようもないのだがショックで顔が引き攣ってしまった。
「カカシさん?」
イルカが不思議そうにしている。
「どうしたんですか」
「いえ、いや、その」
もっと詳しく真実を知りたいのだが訊きたくないという気持ちの方が勝り、これ以上、訊くことを自制してしまう。
腕の中のイルカはカカシの様子を見て、なにやら思うことがあったのか、こつんと自分の額とカカシの額にぶつけてきた。
「俺が朝帰りしたのは同僚とお酒を飲んで遅くなり、家に帰るのが面倒になって泊めてもらったからなんです」
やっぱりイルカは誰かの家に泊まってきたのだ。
「同僚って、あの・・・」
やっとカカシが、それだけ言うとイルカは、ああ、と頷く。
「カカシさんが二人きりになるなとか釘を刺した同僚のことです」
選りによって、そいつの家に泊まっただなんて!
カカシは再び、目の前が真っ暗になる。
もう駄目だ、と思った時、イルカがふわりと笑った。



「カカシさんが何を心配しているのか分かりませんが」
カカシの腕の中のイルカは、そっとカカシの背に腕を回してきた。
ぎゅうとカカシはイルカに抱きしめられた。
「イルカ先生」
それだけカカシは幸せな気持ちになってしまう。
カカシもイルカを抱きしめる。
イルカから思わぬ言葉も聞けた。
「俺もカカシさんが好きです、カカシさんだけが俺の恋人ですから」
その言葉に救われる。
二人は互いを抱きしめ合う。
本当に恋人になれた、とカカシは実感した。



存分に抱きしめ合うとイルカはカカシから体を離して、欠伸をした。
「安心したら眠くなってきました」
「そういえば、俺も」
カカシも釣られて欠伸をする。
そういえば昨夜は任務であったのだ。
「よかったら」
欠伸をしたイルカが自分の家のベッドを指差す。
「ここで寝ていきませんか?男二人で寝るには、うちのベッドは狭いですけど」
「いいんですか!」
カカシに幸運が転がってきた。
一緒に寝ることの意味についてイルカは特に深く考えてはいないようであった。
眠そうな顔をしてイルカは言う。
「はい。カカシさん、今から自分の家に帰るの億劫かなと思って」
それとも枕が変わると眠れませんか、とイルカの問いにカカシは首を、これでもかと横に振る。
「いいえ全然!枕も布団も変わっても寝れる性質です」
「よかった」
イルカがベッドに潜り込む。
空いた部分と、ぽんぽんと叩いてカカシを呼んだ。
「だったら一眠りしましょう。起きたらカカシさんが心配している朝帰りの件を説明しますから」
言った傍からイルカは眠そうで瞼が落ちそうになっている。
「だから、カカシさん、心配しないで・・・」
言い掛けてイルカの瞼は閉じられた。
そんなイルカの横にカカシは、するりと入り込む。
こんなに肌が触れ合うほどイルカの近くにいられる。
イルカがカカシに心を許してくれた証だ。
朝帰りの件は・・・。
そっとカカシも目を閉じる。
きっと、そんなに心配しなくてもいいんだ。
カカシはイルカを信じることにした。



カカシとイルカが一眠りして起きると外は薄暗く夕方になっていた。
「じゃ行きましょうか」
「どこに?」
ぱぱっと外出支度をするイルカに戸惑いながらもカカシも手早く支度を整える。
「腹も減りましたし夕飯を食べにと」
カカシを見てイルカが、にこりとする。
「朝帰りの件を説明しに」
説明しに?
イルカの発言を訝しく思いながらもカカシはイルカについて行った。



どこに行くのかと尋ねてもイルカは笑ってばかりで答えてくれない。
途中、どっさりと菓子を買っていた。
「そのお菓子、どうするんですか?」
「すぐに分かりますよ」
イルカに案内されのは、ある家だった。
家の玄関扉をノックしてイルカは開けた。
「こんばんはー」
カカシもイルカの後ろから家の中を覗き込む。
すると小さい子どもの声が多数したかと思うと、その子どもたちが玄関めがけて、正しくはカカシとイルカめがけて突進して来たのだ。
子どもたちは「いっらしゃいませ」やら「わーい、お客さんだ!」だと口々に言いながらカカシとイルカに よじ登ってきた。
その後から例のイルカの同僚が顔を出してきた。
エプロン姿が妙に似合う。
「よう、どうしたんだ?」
イルカを見て声を掛けてくる。
後ろにいたカカシには丁寧に会釈してきた。
「ああ、これ、泊めてもらった礼に持ってきた。弟や妹にあげてくれ」
買ってきた菓子を同僚に手渡している。
「そんなの良かったのに」と言いながらイルカの同僚は受け取っている。
イルカが大量に買った菓子は、この小さい子どもたちの為だったのだ。
その小さい子どもたちは今や、カカシの肩や頭に到達している。
何人かの子どもたちに登られると非常に重かった。
しかも容赦なく髪を掴んだり耳を引っ張りしてくる。
子ども相手に怒るのも大人気ないとカカシは我慢していた。
それを見た同僚は、くすっと笑ってからイルカから渡された菓子を高く上げた。
「お菓子欲しい人、こっちにおいで」
その声が聞こえると一瞬で子どもたちはカカシから降りて菓子の方へと行ってしまう。
カカシは、ほっと一息吐く。
同僚は、ちらとカカシを見てからイルカの耳に何事か囁いてイルカの肩を叩いていた。
それを見てもカカシは何も思わなかった。
単なる仲のいい友人に見える。
恋人になった余裕からだろうか。



それからイルカの同僚の家を辞し二人きりで夜道を歩く。
「俺が泊まったのは、あいつの家ですけど弟妹たちがたくさんいて賑やかなんですよ」
「よっく分かりました」
カカシは身を以って経験した。
「あいつと二人きりにはならなかったですし。朝、弟妹たちに寝起きを襲われて体の上でジャンプされたりしたんですよ」
「なるほど」
それでイルカは腰が痛かったのだ。
謎が解けた。
実に単純なことだったのだ。
朝帰りしたのは事実だったが、その他のことは所謂カカシの勘違いであった。
「よかったです」
カカシの素直な心の声だ。
何もかも解決した。
心配することは何もない。



カカシは隣を歩くイルカの手を握った。
「イルカ先生を好きでよかった」
「俺も」
微笑むイルカの顔は優しい。
「最初はカカシさんのことが好きという気持ちがあやふやだったんですけど」
ぎゅっとイルカもカカシの手を握り返してきた。
「今では、ちゃんと分かります。カカシさんのことが好きなんだって」
「そうですね。俺もです」
勘違いが色々あって大変だったけど、とイルカが呟く。
「でも、今となってはそれも良かったかなって」
「まあ、終わりよければ総て良しですね」
カカシとイルカは顔を見合わせて笑う。



「そういえば洞窟で何でキス、してきたんですか?」
不意に思いついたようにイルカはカカシに訊いてきた。
「ああ、あれはですね」
カカシは肩を竦める。
「イルカ先生が誰かにとられるような気がして。なんか焦っちゃって」
「カカシさんでも焦ることがあるんですね」
「俺も人間ですから」
苦笑いをするカカシ。
イルカは、もう一つ訊いてくる。
「小さい頃の話なんですけど、ファーストキス云々って何なんですか?」
小さい子どもの頃、森の中でカカシと会ったことがあるという。
イルカは覚えていないが話してもらえば思い出すかもしれない。
「それはですね」
カカシがイルカの腕を引っ張った。
「今度、ゆっくり話します。それより飯に行きましょう、俺、はらぺこです」
「そういや俺も」
イルカの腹の音が鳴る。
「ね、ご飯、食べに行きましょう」
「はい」
まずは空腹を満たさねば。



二人の時間はこれから、たくさんある。
少しずつ話して解りあって。
愛を育てていけばいい。
カカシも洞窟に閉じ込めれた時、そう言っていた。
二人でいれば大丈夫。
これから、また勘違いや誤解や起こっても。
その障害を二人で乗り越えていけばいいのだ。
幸せは、すぐ傍にある。
カカシとイルカの頭上には夜空が広がり無限の星が瞬いていた。
きらりと光った一つの星は、二人の前途を祝福するかのように 幸せそうに輝いていたのだった。



終わり




幸せ星13
幸せ星 馴れ初め




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