AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


幸せ星12



「今日は会えるな〜、イルカ先生に」
気がつくとカカシは口から独り言を言っていた。
任務を終えて里への帰還中、イルカのことを考えるとうきうきしてくる。
「最近、忙しくて忙しくて、時間が出来ると邪魔されて」
カカシの顔は勝手に綻ぶ。
「イルカ先生とゆっくり会う時間がなかったけれど」
口調も、うきうきとしたものになってくる。
「今日は俺は任務明けで休みだし、イルカ先生も昨日任務から帰って来ていて今日は休みだよね」
綻んでいた顔が、にやにやとしてきた。
胸がわくわくしてくる。
イルカと二人きりの時間が過ごせるかと思うと。
そう思って任務も頑張って終わらせて、帰還が夕方になるところを午前中に里へと帰ってきた。
これからイルカ先生と二人きり!
邪魔者はいないし!
邪魔者とはカカシとイルカの逢瀬の時間を邪魔する、ある人物で任務で里には不在、早くても今夜にしか里には帰ってこないはず。
その間に!と、ぐっとカカシは拳を固めた。
イルカ先生と恋人同士の甘い時間を過ごすんだ。
そう決意した。


報告書と提出すると弾む足取りでイルカの家に向かった。
今の時間なら、きっとイルカ先生は家にいるよね。
イルカの家には行ったことないけれどカカシはイルカの家の場所は知っている。
カカシは自然と早足となった。
一刻も早くイルカに会いたい。
会いたい会いたい、会って抱きしめて、そして・・・。
その先を色々と想像してしまう。
イルカ先生とあんなことして、それから、もっとこう、あれであれであれだな〜。
想像してカカシは一人、ときめいていた。



イルカの家に向かっていると前方に人影が見えた。
頭の天辺で揺れている、結んだ髪の毛。
妙に見覚えがある。
近づくと、その人物は腰を擦りながら歩いていた。
その様子が悩ましげにカカシの目に映り、もやもやとしたものがカカシの胸の中に渦巻いてきた。
イルカ先生・・・。
カカシの前方を歩いていた人物はイルカであった。
どうして、ここに?
仕事帰りかとも思ったがイルカの服装は微妙に乱れている。
寝起きのような感じがした。
もしかして。
悪い予感がする。
イルカ先生は誰かの家に泊まって、その帰り?
まさか、と思いながらも、一度、そう思うと頭から消すことができない。
朝帰りっってこと・・・。
カカシは大きく息を吸うとイルカとの距離を一気に詰めて後ろから声を掛けた。
「朝帰りですか?」
口から出た声は自分でも驚くほど冷たかった。



カカシに声を掛けられたイルカは、びくりと肩を震わせて振り返った。
イルカを怒るつもりはなかったのに。
ただ、真相を問い質そうとするつもりだったのに。
カカシの胸の中で膨らんだ、もやもやとしたものが怒気として溢れ出てしまった。
それに慄くようにイルカが一歩、退く。
逃げられると追いかけてしまう。
カカシは一歩、イルカに近づいた。
抑えられなくて言葉が出てしまう、責めるような口調で。
冷静にと思えば思うほど冷静にはなれない。
イルカは弱くカカシの名を呼んだ。
呼んでから何を言おうとしたのだが、それよりも早くカカシが動いてしまった。
待っていられなくて。



イルカの目の前に移動して矢継ぎ早に質問してしまった。
止まらなかった。
イルカにだって言いたいことがあるのにと理性では分かっていながらも感情が追いつかない。
カカシの言うことを、じっと黙って聞いているイルカの黒い目がカカシを見つめている。
その目が寂しそうに見えた。
悲しげにカカシに何かを訴えている。
実際に涙が浮かんでいるわけではないのに、イルカの黒い目に涙が溢れそうなほど溜まって、 今にも零れ落ちそうな。
そんな感覚にカカシは陥った。
もしかして自分は大きな勘違いをしているのか・・・。
カカシが、そう思った時イルカの口から叫ぶように言葉が発せられた。
「カカシさんだって」
その後に言われたことにカカシは呆然としてしまった。



カカシはイルカではない別の人間が好きで。
イルカに告白したのは一時の気の迷いで。
本当に好きな人は別にいて、本当の恋人は別にいる・・・。
「あの人のことが好きで、あの人が恋人なんじゃないですか」
あの人が誰が分かった時、カカシは息が止まりそうなった。
いや、本当に止まった。
呼吸が出来ないほどに驚いて、ショックを受けてしまっていた。
イルカ先生の言う、あの人って、あいつ?
あの邪魔者が?
訳が分からない、何でそんなことにと混乱するカカシである。
冗談もほどほどに、とイルカに言おうとしたのだがイルカの強い目の光からは本当に真実、そう思っているのが窺えた。
カカシの恋人はイルカ、ただ一人なのに。
イルカだけが好きなのに。
どこから、そんな勘違いが・・・。



ともかく、と我に返ったカカシはイルカに言おうとした。
「イルカ先生、俺の話を聞いてください」
「嫌です、聞きたくありません」
イルカはカカシに掴まれている腕を渾身の力で振り解いて逃げようとしている。
「離してください!」
「駄目です、離しません。絶対に」
ここでイルカの腕を離したら、もう会えなくなるような気がした。
イルカは何とかカカシの腕から逃れようと苦戦していた。
「イルカ先生!」
不安に駆られたカカシは逆にイルカを引き寄せて腕の中に囲い込んだ。
上忍の力を遺憾なく発揮してイルカを抱きしめる。
強い力でイルカに痛い思いをさせないように微妙な力加減で。
「離して、家に帰りたいんです!」
「その前に俺の話を聞いてください」
「嫌です!」
押し問答になってきた。
しかも道端で。



「イルカ先生が言ったことは勘違いなんです」
「聞きたくないです」
結構、イルカも頑固だった。
「じゃああ」
カカシは低い声を出した、相手を威嚇するような。
「じゃあ、ここでイルカ先生にキスしますよ、この前のようなキスを」
本気だった。
イルカが言って分かってくれないならば行動で示そうと思ったのだ。
するとイルカは、ぴたりと暴れると止めた。
唇と噛み締めてカカシを見てくる。
あ、また・・・。
イルカの黒い目に涙が溜まっているように見えた。
俺、イルカ先生にひどいことしている?
罪悪感が襲ってくる。
思わずカカシが謝ろうとした時に朝の空気に相応しい爽やかな声がした。
「何をしているのかしら、そこで?」
すらりとした立ち姿が、そこにはあった。



「あ、ちょうどいいところに」
まさに天の助けとは、このことだ。
颯爽と現れた人物にカカシは助けを求めた。
「ちょっと言ってよ、イルカ先生に」
「イル・・・、うみの中忍に?何を?」
「俺とあんたが恋人でないと、はっきりくっきり明確に!」
「こいびと・・・」
その人物はカカシの言葉を聞いて絶句していた。
目が見開いて動きが止まっている。
もちろん、その人物とは今、カカシとイルカの言い争いの焦点になっている人物、件の女性、くのいちだった。
カカシと恋人と噂されていて、イルカが、そう思い込んでいる女性。
女性は数十秒後、激しく咳き込んだ。
「驚き過ぎて呼吸が止まっていたわ」
胸を上下させ息を吸って吐いてを繰り返している。



そしてイルカの方を見て、はっきりくっきり明確に言った。
「私とはたけは恋人ではありません、有り得ない」
うんうんと同意とばかりにカカシは頷いている。
「天と地が引っくり返って、また元に戻ってもないわ」
「そうそうそう」
「だって私は、はたけのこと好きじゃないもの。はたけも私のことが好きじゃない」
女性はイルカを優しく見つめた。
「勘違いさせてしまってごめんなさいね」
あたたかい言葉が女性から出る。
「私はね、イルカ君のことが好きなの。あ、好きって言っても恋愛的な意味じゃなくて家族的な意味でね」
だって、と女性は微笑んだ。
「私、昔ね、イルカ君のご両親にとてもお世話になったの。イルカ君のご両親は私の恩人。小さい頃のイルカ君も知っているのよ」
「俺の父ちゃんと母ちゃんの・・・」
予想もしなかった女性の言葉を聞いてカカシに抱きしめられていたイルカの体から力が抜けた。
目を閉じたイルカは静かに息を吐き出したのだった。





幸せ星11
幸せ星13




text top
top