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花の咲く色 8



キスが終わったときには息切れをしていた。
「キスって・・・」
はあはあはあ〜。
「結構、体力要りますね・・・」
映画や何かで長いキスをしている二人は体を鍛えているのだろうか。
あんな長いキスが出来るなんて、すごい。
「あの、イルカ先生」
カカシさんが訝しげに訊いてきた。
「キスに体力要るって、どういうことです?」
眉を潜めている。
「だってですねえ」
何ていうか、あれだ。
「キスのときの息継ぎの仕方が分からなくて」
「・・・・・・は?」
「キスしているときって、いつ、息をすればいいのかと」
だから、ずっと息を止めていた。
俺が息を止めるのは、せいぜい五分弱だ。
カカシさんは、もっと肺活量ありそうだな。
「あのねえ、イルカ先生〜」
力尽きたようにカカシさんがベッドの上に両手をつく。
肩が落ちていた。
「そんなの、ちょっと考えれば分かることでしょうに」
「そうですか?」
「そうですよ〜」
「口で息をしなければいいんです」
「あ・・・」
そう言われれば、そうだ。
「いつもしているように呼吸しながらキスをすればいいんです」
「そうですけど・・・」
うーん。
俺は腕を組んで首を傾げた。
そうなんだけど、そうなんだけど、でもさ〜。
「こらこら」
つんつんとカカシさんが首を傾げている俺の額を突付いた。
「何を考えているんですか?簡単でしょ、キスなんて」
そう言うけどなあ〜。
ついつい、難しい顔になってしまう。
「まあ、言ってみなさいな、俺に」
カカシさんは解決する気、満々だ。
「俺に言えば、どんな悩みも解決してみせますから」
「言っても笑いませんか?」
「笑いません」
「呆れませんか?」
「大丈夫です」
「じゃあ、言いますけど」
・・・しかし考えてみれば、今から俺が言うことって、絶対にくだらないことだよなあ〜。
言わない方がいいかな、やっぱり。
やめようかな。
「やめるのは駄目ですよ」
びくっ。
言い当てられて、肩が揺れてしまった。
カカシさんが俺が何を考えているか、高確率で解るから怖い。
「・・・キスしているときって、お互いの顔が近づきますよね」
「まあ、そうですね」
「顔が近づいたときに、その〜」
カカシさんの顔色を伺ってしまう。
言ったときに、どんな顔をするのか・・・。
「上目遣いはストレートで心臓にくるので止めてください」
心臓の辺りを押さえながら、カカシさんが眉間に皺を寄せている。
「これでも我慢しているですから」
我慢って、何の我慢だ?
とりあえず、カカシさんに我慢させないように俺は言った。
「キスしているとき呼吸したら、近づいている相手の顔に息がかからないかな〜って思っちゃって」
ほんと、くだらないよなあ・・・。
一度、考え始めると気になっちゃって、キスのときに俺は息が止めていたのだ。
そういうのって、みんな、考えたりしないのかな。



「なんだ、そんなことですか」
拍子抜けしたみたいにカカシさんは、ほっと息をする。
「俺は別のことで悩んでいるのかと思いました」
よかった〜とか言っている。
「そんなことって言いますけどね」
「平気ですよ」
カカシさんは笑う。
「経験を重ねれば、コツを取得しますから。要は慣れですよ、慣れ」
「慣れ・・・」
「そ。これから、どんどんじゃんじゃんばんばん、愛のあるキスしていきましょう」
「はあ」
「俺は、やっとイルカ先生とキス出来て感無量です」
うっとりとした表情でカカシさんは胸の前で手を祈るように合わせた。
「いつ、キスが出来るかと気が気じゃなかったです。キスをしたいと雰囲気造りをしているとイルカ先生、いっつも図ったように明後日の方向に行っちゃうから」
俺、心配で心配で。

「無理強いして嫌われたくなかったし。成り行きに任せていたら、こんなに時間が経っているし」
つ、とカカシさんは俺を見つめる。
「俺たち、付き合ってから、どのくらい経ちますか」
「えっと」
俺は指を折る。
「春からのお付き合いですから」
彼これ、半年は経過している。
「その前からの俺の片思いの期間を入れると、優に一年は過ぎていますよ」
・・・一年て、いつからの一年?
「ああ、念願叶って、イルカ先生とキスが出来てこんなに嬉しいことはありません」
本当にカカシさんは嬉しそうにしている。
キスって。
さっき、カカシさんとキスした俺の唇を指でなぞる。
カカシさんとのキスを思い出して、頬が熱くなってきた。
そうだ、キスって。
人を幸せにする。
キスすると、好きな人とキスすると。
とても幸せになるんだ。



「ま、俺はキスの他にも色々したいんですけどねえ」
心の内を明かしたカカシさんは俺の前に座って、きりりとした顔になる。
「いいですか?イルカ先生、心の準備は」
「はあ、まあ、その」
恋人同士だもの、キスの他にも色々ある・・・よなあ。
男に生まれたからには、それは夢なんだろう。
したいことなんだろう。
その気持ちは俺にも痛いほど解る。
解りすぎる。
俺も一時は夢見ていたから。
人生に、そんなときが訪れるだろうなあって。
「解ってくれますか」
切実な声でカカシさんが俺の両手を掬い、自分の両手で包む。
「俺が何をしたいのか・・・」
切羽詰ったカカシさんの声がする。
「わ、解ってます」
俺は、こくっと頷いた。
頷くことしかできない。
キスするにしても、カカシさんが俺のことを思い遣ってくれて、タイミングを待っていたくれたのには、いたく感動した。
本当に本当にカカシさんは優しい。
好きになる前も優しい人だなあと思っていたけれど、付き合うようになって、その優しさは身に沁みている。
ここは・・・。
ここは俺が言わなくちゃ!
カカシさんの口から言い難いのなら、俺が言葉に出して言わなくちゃ。
強烈な使命感に駆られる。
一世一代の大舞台だ。
観客はカカシさん一人なのだけど、えらく緊張する。
俺の顔は今、真っ赤っ赤だ。
「解っています、カカシさんの言いたいことは」
ちゃんと目を見て、話さないと。
顔を上げて、カカシさんの目を真っ直ぐに見ると。
カカシさんも俺の緊張が移ったのか、握る手に力が入った。
ごくり、と唾を飲み俺を凝視している。
目が、きらきらっていうか、ぎらぎらしているのは何でだろ・・・。
高まる緊張に押し潰されそうになったけど、俺は頑張った。



「・・・け、結婚式は無理かもしれませんけど」
男同士での結婚式は出来るのか不明なので。
「・・・し、新婚旅行は二人の休みを合わせて行きましょうか」
どこか近場でもいいから、二人でゆっくり出来るところに。
「・・・こ、婚姻届けは役所に提出は出来ませんが書くだけなら」
記念に書いて保存しておくのもいい。
言った。
言い切った!
俺は赤い顔のまま、にこにこになる。
よかった〜、言えた〜。
なのに、カカシさんは俺を凝視したまま、動かない。
ぴくりともしない。
動く気配がない。
口を半開きにして固まっている。
まるで、魂がどこか遠くに行ってしまったように。
「カカシさん?」
俺、何か変なこと言っただろうか?
結婚って男の人に、とっても夢だよね。
結婚したいなって、人生で一度は思うよね。
「あ、あの」
余りにカカシさんが動かないので、心配になってきた。
「え・・・。あ、イルカ先生」
漸く、カカシさんが口を開いた。
「すみません。一瞬、気が遠くなって」
燃え尽きて真っ白な灰になりそうでした、って。
真っ白な灰って、何を燃やしたら、そうなるのか。
どうしたんだろ、カカシさん。
きらきらしていた目も心なしか、力を失っていた。
だけど〜。
こんなときにもカカシさんは格好良く見える。
いい男って、お得だ。
何をしてもおかしくない。
惜しげもなく色気を、ふんだんに撒き散らして、セクシーを具現したような人だな、カカシさん。
「いえね」
何を思ったのか、カカシさんは突然、言い出した。
俺、悟りを啓いたような気分です。
「これは人生の試練なのかもしれません。俺は試練に立派に耐えてみせます」
どっかに話が飛んでいる。
「それにね」
カカシさんの目が細まった。
細めた目で俺を見る、柔らかく穏やかに。
俺は、この目が好きだ。
とっても。
「イルカ先生が俺を、すっごく好きでいてくれて大切に思ってくれていることが、よく解りました」
カカシさんは微笑む。
「余りにも予想外で意表を突かれましたが、イルカ先生らしくていいかな〜と」
俺らしい、か。
「イルカ先生らしい、イルカ先生が好きです、俺」
ちゅっと可愛い音がして。
カカシさんは俺の額にキスをしたのだった。






花の咲く色 7
花の咲く色 9




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