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花の咲く色 5



カカシさん、いつ帰ってくるんだろ。
そういえば、カカシさんは任務の帰還日を言っていかなかった。
・・・大変な任務なんだろうな。
俺に出来ることはカカシさんの無事を祈ることだけだ。
怪我をしないで帰ってきてほしい。
俺のところへ。
ちゃんと。
それにカカシさんがいないと、どうも何ていうか、ぽっかりと心に穴があいた感じがする。
心に空白の部分があるというか。
食事をしても一人だし、家でも一人で話相手もいない。
つまらないのだ。
カカシさんと付き合う前は一人だったけど、俺、何をしていたんだろう。
全く思い出せない。
きっと今の生活が楽しすぎるからだろうなあ。
カカシさんといることが。
カカシさんと一緒にいることが当たり前になってしまっていたのだ。



それから何日か過ぎて。
俺は休日を、どう過ごすか悩んでいた。
カカシさんは、まだ帰ってこなくて俺、一人。
うーん、何をしよう。
時間を持て余していた。
一人の休日は妙に目が早く覚めて、目が覚めれば二度寝は出来ず、しょうがないから家のことを色々していた。
洗濯も掃除も一人なので、すぐに終わり。
朝食は食べても一人なので簡単。
十時前くらいには、全部終わって、やることのない俺は部屋でぼーっとしている。
こんなときに限って、仕事の持ち帰りもない。
何もすることがない。
・・・俺って無趣味、なのかな。
休日にカカシさんがいれば、あれこれ話しながら色々やって、終わるとカカシさんと出掛けたり、本を読んでいるカカシさんの背中にべったりと張り付いていたりする。
俺ってカカシさんが中心なんだな・・・。
カカシさんに頼り過ぎかも。
よし!と俺は立ち上がった。
一人で出掛けてみよう。
買い物にでも。
出掛ければ何か買う物あるだろ。
買う物・・・。
ぴーんときた俺は通勤カバンを中を急いで漁った。
「あった!」
前に見た男性向けのファッション雑誌。
読んだとき、カカシさんに似合いそうな服をチェックしておいたのだ。
いそいそとページを捲り、俺は服の色や売っている店をメモした。
カカシさんの服を買いに行けばいいじゃないか!
ぱああっと目の前が開けたような気がした。
カカシさんの服を買うなんて俺も楽しいし、カカシさんにプレゼントしたらびっくりして喜んでくれるだろう。
この服をカカシさんが着たら、きっと似合うと思うし。
俄然、うきうきしてきた俺は急いで外出する準備をした。



両手に大荷物。
たくさん、買っちゃった・・・。
買い物が想像以上に楽しくて、あれこれ買ってしまった。
全部、カカシさんのものばかり。
サイズは知っているので、大丈夫。
カカシさん、早く帰ってこないかな〜。
早く、買った服を見せたい。
そんでもって着てみてほしい。
服を着たカカシさんと早く見たい!
買い物に満足して、意気揚々と帰ろうとしたところで知人に会った。
同僚だ。
「イルカじゃないか、買い物か?」
「うん」
両手に持った袋を掲げる。
「また、大量に買ったなあ」
「へへへ」と俺は照れ笑い。
「実は俺も服を買いに来たんだよね」
「ふーん、一人で?」
「一人で」
ちょっと付き合えよ、と服を売っている店に連れて行かれた。
「なあ、こっちとこっち、どっちがいいと思う?」
連れて行かれた店で服を選ばされた。
「え・・・、うーん」
そんなこと言われてもなあ。
俺は悩む。
「うーん、どっちかなあ」
どっちかなあっていうか、どっちもどっちなんだよねえ。
同僚の服のセンスは、どうなっているんだ・・・。
どっちがいいと言われた服の色は、真紫とショッキングピンク。
今日、着ている服だって蛍光色の黄色だ。
「あのさ」
選べなくて俺は言った。
「忍者なんだから、も少し忍んだ方がいんじゃない?」
この色は目立ちすぎる、派手だ。
遠くからでも一発で分かる色彩だ。
「いやだ」
同僚は、きっぱりと言い切った。
「俺はプライベートでは忍ばない主義なんだ」
・・・忍ばない主義。
「仕事では忍んでいるんだからプライベートでは開放的になりたい」
相当、ストレスが溜まっているようで。
結局、どっちの服も買っていた。
いったい、いつ、どこで着るのだろうか?



買い物が一段落して、同僚は俺を誘ってきた。
「お茶でも飲まないか?」
お茶ねえ。
「独り身同士だろ」
独り身のよしみでさ〜と言われたが。
俺は正確には独り身じゃないし、内緒にしているから言わないけど。
それに。
「いや、いいよ」
俺は両手の荷物を持ち直す。
「荷物があるから、このまま、家に帰る」
もしかして、カカシさんが帰って来ているかもしれないし。
「そっか」
「ごめん」
寂しそうな顔になった同僚に罪悪感を覚えたが、俺はその場を後にした。
そして、急いで帰ったのだが家には誰もいなかった。
買ったものは、とりあえず押し入れに入れといた。



それから何日かして。
俺は淡々と受付所で仕事をしていると、不意によく知っている気配が受付所に入ってきた。
ぱっと顔を上げると目に入るのは白銀の頭。
カカシさん!
カカシさんが帰ってきた!
疲れた顔をしているが怪我はないみたい。
よかった〜。
仕事をしながら、ちらちらとカカシさんと見る。
見るってか、つい見てしまう。
カカシさんと一緒にアスマ先生も受付所に入ってきて、疲れた顔をしているから多分、二人で任務に行っていたんじゃないかと推測した。
アスマ先生が報告書を提出するため、俺の前に来た。
カカシさんは受付所の備え付けの椅子に、どっかりと座っている、無表情で。
「これ、頼むぜ」
報告書を出されて受け取る。
「お疲れさまでした」
「ああ、マジで疲れた」
アスマ先生の声には疲労が滲んでいる。
「大変な任務だったんですね」
「任務が大変っつか」
はあ、とアスマ先生は肩を落とす。
「カカシが大変だった」
カカシさんが?
怪我はなさそうに見えるけど、どこか怪我でもしたのかな。
一瞬だけ、カカシさんに視線が行く。
勘のいいアスマ先生は俺の気持ちを察したみたいで。
「いや、誰も怪我はしてねえよ」
俺もカカシも。
「大変ってのはカカシの、その何ていうかなあ」
言い難そう。
「カカシがイライラしていてよ」
イライラ?
「途中から、ピリピリも加わって雰囲気が最悪だった」
任務は滞りなく終わったんだが、と苦い顔。
「そうですか」
何かあったのかな、心配だ。
しかし、それは口から出ていたらしい。
アスマ先生に指摘された。
「本当に何があったんだかな」
伺うように俺を見た。
「カカシが任務に行って、不在の間に何があったのやら」
意味深な発言だ。
もっと聞きたい。
「任務の最初からカカシはイライラしていたが、任務中に里から来た伝令の忍が余計なことをカカシに言ったらしく、それを聞いたカカシがピリピリし始めてよう」
・・・よく分からん。
「何でも自分がいない間に、その何だ。他の誰かと買い物に行って楽しそうにしていたり、二人で茶を飲んだりしているとか何とかで」
最後の方は、よく聞き取れなかった。
「というわけだ、じゃあな」
座っていたカカシさんが遠くからアスマ先生を睨んでいるのに気がついて、アスマ先生は話を切り上げた。
「とにかく頼む」
頼むって、何が?何を?
呆気に取られている俺を残して、カカシさんとアスマ先生は受付所を出て行ってしまった。



受け付け所の仕事が終わって俺は迷った。
カカシさん、もう家に帰ったかな?
それとも、まだ上忍の控え室とかにいるかなあ。
迷った末に控え室に行ってみることにした。
帰る約束はしていないが、行き違いになったら嫌だし。
カカシさんが里に帰ってきたのなら、少しでも一緒にいたい。
帰っていたら、それはそれでいい。
控え室に行くと中から人の気配がした。
カカシさんの気配もある。
よかった、まだいた!
俺は控えめに控え室の扉を叩き、そうっと扉を開けた。
カカシさんがいるのを見つけて、顔が緩む。
カカシさん、俺を待っていてくれたんだ、嬉しいなあって。
本を読んでいたカカシさんは顔を上げると俺を手招きした。
ちょいちょいと。
「失礼します」と俺は断ってから入室した。
「カカシさん、お帰りなさい!」
にこにこしながら言うとカカシさんも微笑んだ。
「ただいま、イルカ先生」
と思ったら、すぐに渋面になる。
それから、きりりと凛々しい顔になった。
「イルカ先生、突然ですが、お聞きしたいことあるんです」
「はい」
凛々しい顔のカカシさんに見蕩れていた俺は、ぽーっとなってしまう。
こんなときだけど、こんなときなのに。
疲労感が漂っているのにカカシさんはカッコよくて、そんでもってセクシーだ。
男の人って感じがする。
「あの、イルカ先生」
凛々しかったカカシさんが何故か怯んだように慌てた。
「そんな顔しても駄目ですよ、俺は聞きたいことがあるんですから」
カカシさんの出ている目元が少し赤い。
「二人きりの場所で聞くと返答によっちゃ、俺は暴走しそうなんで敢えて、ここで聞きます」
人がいる場所で、と。
控え室にはカカシさんの他にアスマ先生を含めて何人か人がいた。



「では、聞きますけど」
こほん、とカカシさんは咳払い。
「俺がいないとき、休みの日に買い物に出掛けましたか?」
「あ、はい」
カカシさんの服を買いに。
「やっぱり〜、そうなんだ〜」
がくっとカカシさんは肩を落とした。
なんだなんだ、どうしたんだ、カカシさん。
「イルカ先生」
がしっとカカシさんに両肩を掴まれた。
「もしも、もしもですけど」
カカシさんは真剣な顔。
「もしも俺がイルカ先生以外の他の誰かと買い物行って楽しそうにしていたら、どう思いますか?」
「どうって・・・。何か欲しいものがあったのかな〜って」
無言のカカシさん。
「じゃあ、もしもイルカ先生以外の他の誰かと飲みに行ったりしたら、どうします?」
「飲みに行きたかったのかな〜って」
なんか・・・、変なこと聞くな、カカシさん。
任務で疲れているのかな?
「もう、イルカ先生は〜」
盛大に気落ちしている。
「俺がイルカ先生以外と」
以外と、に力を込めている。
「買い物に行ったり、飲みに行ったりしても焼きもち妬かないの?」
「え、どうしてですか」
質問の意味が、よく解らないままに俺は答えてしまった。
「だってカカシさん、さっき『楽しそうにしていたら』って言ってましたよね?ってことは楽しいってことですよね?」
「え?まあ」
「だったら、別にいいです。好きな人が悲しんだり辛そうなのは嫌ですけど、楽しかったらそれでいいです」
俺以外の他の誰かといても、カカシさんが楽しいのならそれでいい。
悲しかったり、辛かったりしていなければそれでいい。
好きな人が笑っているなら、それでいい。
少しは妬くかもしれないけれど。
一気に、そう言ってから俺は自分の失態に気がついた。
好きな人って言っちゃったよ・・・。
どうしよう、俺の好きな人がカカシさんってバレちゃったかな?
カカシさんに、言わないでって頼んであったのに。
一人、頭の中で慌てていると俺の肩を掴んでいたカカシさんの手が俺の背に回って。
ぎゅっ。
力いっぱい、抱きしめられた。
人前なのに。





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