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花の咲く色 16



「おはよう、イルカ先生」
今日も俺より早く起きたカカシさんは俺の額にキスをしてくれた。
「かわいい〜、イルカ先生」
今度は頬にキス。
「ほんっと大好き、イルカ先生」
鼻先にキス。
・・・今日のカカシさんは、たくさんキスをしてくれる。
朝から機嫌が最高潮のようだ。
「最高にセクシーです、イルカ先生」
そんなことを言って、顔を赤らめた後、唇にキスを落としてきた。
何なんだ、どうしたんだ、カカシさん。
「んん〜」
伸びをしたカカシさんは上半身裸。
綺麗な裸体が惜しげもなく晒される。
「今日も一日、頑張りますか」
何か、やる気になっていた。



何日かして厄日の日の怪我も治り、俺は上忍の控え室に顔を出していた。
遊びにじゃなくて、仕事で。
書類を持って、控え室にいる上忍の方々に配っている。
「これ、どうぞ」とか「よろしくお願いします」とか言って。
その日は、カカシさんは何かの用事で控え室にはいなかった。
「よ、イルカ」
千本を銜えたゲンマさんが手を上げる。
俺はゲンマさんにも書類を一部渡した。
「どうぞ、目を通しておいてください」
「オッケー、了解〜」
・・・と俺はゲンマさんの見ていた雑誌が目に入った。
華やかな表紙の派手派手しい雑誌。
女の人がいっぱいの。
「あ、これ?」
ゲンマさんが俺の視線に気がついた。
「イルカも見るか?」
差し出してきた。
「えーっと何ですか、これ?」
「女の子のグラビア特集。暇つぶしに見ていたんだけどな」
「はあ」
「興味ないのか?」
ゲンマさんが不思議そうに俺を見る。
「セクシーな女の子が見れるぞ」って言う。
セクシー・・・。
セクシーな?
俺はゲンマさんに質問した。
「ゲンマさんは、この雑誌の写真の女の人がセクシーだと思うんですか?」
「そうだけど」
ゲンマさんの方が不思議顔。
「だって、俺、女の子が好きだから」
好き・・・。
好きだからセクシー。
ぴーん。
頭の中で、何かが閃いた。
これは、これって、つまり、これ・・・。
ごちゃごちゃした考えが纏まりそうな気配。
「見ないのか?」
ゲンマさんが勧めてくれたけど俺は断った。
早く一人になって頭の中を整理したい。
「すみません、いいです」
「そっか」
ちょっと残念そうなゲンマさんの声。
「ま、こんなのイルカに貸したらカカシさんに怒られそうだしな」という声が聞こえたような気がしたけど。
「それじゃあ、失礼します」
書類を配り終わった俺は早々に控え室を後にした。



ずんずんと廊下を歩きながら考える。
やっと出口が見えたような気がした。
求めていた答えが見えてきたような。
なぜ、俺がカカシさんをセクシーだと思うのかっていう。
カカシさんだけがセクシーに見えてしまうのかっていう。
それは・・・。
「あ、イルカ」
回答が出そうになったとき、呼び止められた。
ハヤテだった。
「ハヤテ、どうかしたのか」
「いえ、ちょっと」
げほん、と咳をしたハヤテは俺の横に並んだ。
「単にイルカの姿を見かけたので、そこまで行くなら一緒にと思いまして」
「うん、いいよ」
歩きながらハヤテと世間話をする。
ハヤテは同じ中忍なので、気負わず話ができる。
その話の中でハヤテが言った。
「そうそう、この前、イルカに話した例の上忍の方が、また里外の長期任務に赴きましたよ」
「例の上忍って?」
「ほら、覚えていませんか?恋愛クラッシャーの呼び名が高い上忍がいたでしょう」
「ああ・・・」
それなら覚えがあった。
あの晩以来、会ってなかったけど里外の任務に行っちゃったんだ。
「その恋愛クラッシャー上忍が長期任務に行く前に言っていたそうですよ」
「なんて?」
「人の恋愛を壊すのも程々にすると」
「へええ」
何があったんだろうなあ〜。
俺が暢気に考えているとハヤテが俺を肘で突付いた。
「いったい、何があったのか後で教えてくださいね」
「え、何を?」
「とぼけるのは無しですよ」
「だから、何が?」
さっぱり解らない。
「イルカが一枚噛んでいると専らの噂ですよ」
目の下に隈があるのに、ハヤテの目が好奇心できらきらと輝いている様はギャップがあり過ぎた。
こんなハヤテは珍しい。
「それに」とハヤテは口に人差し指を立てて、そっと俺に耳打ちしてきた。
「あの晩、上忍の飲み会があった店でゲンマさんと俺が飲んでいて、そこにカカシさんとイルカが来ましたよね」
「うん」
かなり前のことだけど覚えている。
「実は、それは偶然じゃないんですよ」
「え」
ふふふ、と笑ったハヤテは、ごほごほと咳をする。
「いかにカカシさんがイルカを大事に思っているか、ってことですよね」
「どういうことだよ」
首を傾げていると「詳しいことはカカシさんに聞くといいですよ」とハヤテは行ってしまった。



「何だろ・・・」
ゲンマさんといい、ハヤテといい。
カカシさんと俺の仲を知っているようなことを匂わせてくる。
まさか、ね。
まさか・・・。
カカシさんには言わないでって約束しているし、カカシさんはちゃんと約束を守ってくれているはず。
それよりも俺には大事なことが。
「あ!」
そうだ、思い出した!
セクシーとは何ぞや?という研究中で、その答えが見えた気がしたのだ。
カカシさんも研究成果が出たら教えてねって言っていた。
約束は守らねばならない。
発表するのは少し恥ずかしいけれどね・・・。
そんなことを考えながら仕事をしていると、気がつくと夕方になっていた。
窓の外は暗い。
星が輝いて見えた。
今日は終日、アカデミー勤務で受付所での仕事はない。
仕事が一段落した俺が職員室の自分の机の上の書類やらを整理していると、ひょっこりカカシさんが顔を覗かせた。
「イルカ先生〜、お仕事終わりました?」
「あ、はい。ちょうど今です」
「よかった〜」
カカシさんの目が嬉しそうに細められた。
「グッドタイミングでしたね」
「帰りましょうか」
職員室に残っている他の同僚の先生方に挨拶して俺は職員室を出た。
「お腹、空きましたね」
「今日は何を食べますか?」
いつもの会話。
それが出来る幸せ。
カカシさんが隣にいる幸せ。
外に出ると月が出ていた。
「綺麗ですね、満月かな」
「明るいですね」
何となく指先が触れ合った、自然と手を繋ぐ。
何気ない日常の出来事を話しながらカカシさんと帰る。
「そういえば」
俺は疑問に思っていたことをカカシさんに訊いた。
「あの、カカシさん」
「はいはい、なーに?イルカ先生。今日の夕飯は俺が作りますよ、何が食べたいですか」
「え、ありがとうございます。それじゃですね」
・・・って違う。
俺は掻い摘んで言った。
ゲンマさんとハヤテのことを。
「あの二人、カカシさんと俺の仲を知っているみたいなんですけど」
そうそう、ハヤテがカカシさんに訊けって言ったこともあったっけ。
「カカシさん、誰にも俺たちのこと言ってないですよね?」
「もちろん」
カカシさんは大仰に頷いた。
「誰にも何も言ってませんよ。口に出したことはありません」
「そうですか」
ほっと一安心。
俺が疑心暗鬼になっていただけか・・・。
「言ってないけど」
カカシさんが握っている俺の手を自分の口元まで持ち上げた。
いつの間にか覆面を下ろしていて、顔が露になっている。
「こんなことをしていれば、みーんな、俺たちがどういう関係なのか気がついていると思うけど」
にやっと笑ったカカシさんは俺の手の甲に唇を押し付けた。
次いで、その唇を耳朶に押し付けてくる。
そして囁かれた。
「ま、ここまでしなくてもバレていますけどね〜」
バッ・・・。
バレていたのか、カカシさんと俺のこと。
硬直した俺をカカシさんは面白そうに見ている。
俺は面映い、赤面ものだ。
「そりゃそうでしょ。毎朝、一緒に出勤して、毎日、一緒に帰って。二人だけで食事に行ったり、外で手を繋いじゃったりして」
言わなきゃバレないってもんでもないでしょ、見てれば解りますよと。
「だいたい、イルカ先生の家から朝、二人で一緒に出てくるところを多数、目撃されているのに今更ですよ」
夜はイルカ先生の家に一緒に帰っているし。
そ、そうだったのか、知らなかった・・・。
周りは皆、俺たちのことを知っていて、知られてないと思っていたのは俺だけだったのか。
だって。
だって、恋人ならいつも一緒にいるのが普通で、手を繋いだりするのも普通で。
それがいいと思ってたんだもーん。
俺は心の中で目一杯、言い訳して。
じたばたしていた。






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