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花の咲く色 10



連れて行かれたお店はカカシさんとも来たことのあるお店だった。
「奥の座敷を貸切にしているですよ〜」
座敷なんてあったのか、いつもテーブル席だったから知らなかった。
テーブルの席の間を通り、奥の座敷に案内される。
途中、テーブル席で知っている人たちが飲んでいた。
「あ、ども」
「よう!」
「こんばんは、げほ・・・」
ゲンマさんにライドウさん、それにハヤテだ。
「こんばんは〜」
カカシさんは愛想よく挨拶している。
「今日はさ、ちょっと上忍の飲み会でさ〜」
「へえ〜」と言いつつ、みんなの視線が俺に集まった。
だって、俺、中忍だからなあ。
「あー、イルカ先生はね」
取り成すようにカカシさんはフォローしてくれた。
「忙しいところ、俺がお願いして来てもらったの、無理やりね」
俺が、と強調している。
・・・しかし、俺が上忍の飲み会に出席する理由になってない。
俺には理由があるけれど。
だけど、皆、カカシさんの言い分で納得したようで。
何も追求されなかった。



奥の座敷に連れられて行くと、そこは結構、広くて何人かの上忍が既に来ていた。
受付所で仕事をしているので知っている人も、ちらほらと。
上忍の集まりの飲み会だとカカシさんは言っていたけど、二、三人、中忍の姿が見えた。
割とラフな飲み会なのかもしれない。
そして・・・。
真ん中ら辺に見慣れない上忍が座っているのが目に入った。
後ろ姿だけだけど。
多分、あれが件の長期任務から帰ってきた上忍の人なんだろうなあ。
女性陣が言っていた、セクシーで色気があって格好いい上忍。
どんな顔立ちなのだろうか。
見てみたい。
「イルカ先生」
つんつん、とカカシさんに肩を突付かれた。
「俺たちも座りましょ」
「あ、はい」
でも、どこに座ったら・・・。
「こっち、こっち」
ひょいひょいと手招きされて座った場所は、なんと。
なんと、件の上忍の真ん前だった。



正しくはカカシさんが真ん前で、俺はそのカカシさんの隣。
その人を見たとき、俺は・・・。
びびっときた。
直感的に思った。
この人は苦手だ、苦手なタイプだと。
こういうときの直感は大事にしている。
任務や戦闘時において、直感はよく当たるもので。
日常生活では余りないんだけれど、この時は頭の隅で警戒信号が点滅していた。
危険、近寄るなって。
カカシさんは、その人と親しげ風な言葉を交わして、近況報告なんてしている。
・・・カカシさん、この人と親しいのかな?
別にカカシさんの交友関係に口を出す気は全くないし、カカシさんが誰と仲良くしようとも構わない。
俺が駄目ってだけで。
「あ、この人はね」
話の矛先が俺に向いていた。
「アカデミーの先生をしている、海野中忍。受付所の仕事もしているんだ〜よ」
俺のことを紹介していた。
「受付所で会うこともあるだろうと思ってね」
そうか、それでカカシさんは俺を連れて来てくれたのか。
受付業務を円滑に、こなせるように。
知らない人より知っている人であれば、より受付はスムーズにいくし。
カカシさん、俺のために色々と考えてくれているんだなあ。
それに海野中忍なんて初めて呼ばれて、ちょっとドキドキ。
ドキドキしながら、流れに則って俺は自己紹介した。
「初めまして。ただ今、ご紹介に預かりました、海野と申します」
・・・なんか、披露宴のスピーチみたいだなあ。
よろしくお願いします、と頭を下げると「こちらこそ」と返された。
案外、気さくでいい人なのかもしれないなあ。
苦手とか思って悪かったかも。
それから、カカシさんとその上忍の人が話しているのを俺は黙って横で聞いていた。
飲み会は勝手に始まったみたいで、座敷は賑やかになってきている。 共通の話題もなかったし、久しぶりに会った人たちの会話に口を挟むようなこともしたくない。
カカシさんが頼んでくれたお酒を、ちびちびと飲みながら俺は話している例の上忍を、こっそりと見る。
じっくりと観察できた。



全然、セクシーとは思わなかった。
色気も感じない。
格好いいは・・・、俺よりは顔の造作は整っているだろう。
カカシさんよりは格好いいとは思わないけれど。
うーん、女性と男性の感性は大きく違うんだなあ。
女性が思うように俺は思えない。
飲み会に参加させてもらってアレだけど、何か期待外れだった。
俺がセクシーだと思うのはカカシさんで。
色気があると思うのもカカシさん。
格好いいのもカカシさん。
・・・カカシさん尽くめだな、俺。
こっそりと一人で苦笑しているとカカシさんに名を呼ばれた。
「イルカ先生」
「は、はい」
急に呼ばれて、びっくりする俺。
「何でしょうか」
「うん、あのね。ここに居ても退屈かな〜って。知らない人ばっかりでしょ」
「はい・・・」
「ここは、もういいからゲンマたちと飲んでらっしゃい」
「いいんですか」
途中退席しても?
「構いませんよ。また、後でね」とカカシさんは素っ気無い。
素っ気無いというか、話の忙しいみたいで例の上忍の顔を凝視している、睨むみたいに。
「解りました」
俺はカカシさんに言われた通りにゲンマさんたちのところに行こうとした。
三人で四人掛けのテーブル席に座っていたから、俺も混ぜてもらおう。
ここにいるよりは気が楽そうだし。
「ふーん」
立ち上がったとき、低い呟き声が耳に入った。
「海野中忍は『イルカ』という名前なのかい」
声のする方に顔を向けると、例の上忍の人が俺を、じっと見詰めていた。
その視線に言いも言われぬ不気味さを感じて、立ち竦んでしまう。
蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。
「ちっ」とカカシさんの舌打ちが聞こえたような気がする。
「さ、行ってください」と背中を押されて俺は座敷を後にした。


座敷から抜け出るとゲンマさんたちのところへ直行した。
「すみません、混ぜてもらっていいですか」
「おー、待っていたぜ」
「もちろん、いいぜ〜」
「どうぞ、こちらへ」
空いていた席に腰を下す。
知っている人に囲まれて、ふーっと息を吐くと脱力してしまった。
思いの外、肩に力が入っていたらしい。
自分でも気づかぬうちに緊張していたんだな・・・。
「まあ、飲め飲め」
酒を注いでくれるゲンマさんは既に酔っている。
ライドウさんも酔っているし、ハヤテは・・・普通だった。
「それにしてもなあ」
ゲンマさんは隣のライドウさんに陽気に話しかけている。
「カカシさん、先制攻撃ってやつかあ?人の恋路に入ってくるなっていう牽制的な」
「は、何言ってんの?」
「そうですね、宣戦布告でしょうかね。手を出したら承知しないぞと」
ハヤテも何やら言っているが、さっぱり解らん。
ライドウさんも「え?え?なになに?」と首を傾げていた。
ゲンマさんとハヤテが何やら知っている雰囲気で・・・。
「いったい、どういうことなんですか?」
聞くと、あっさりと教えてくれた。
「今日の上忍の飲み会で来ている人、俺、知っているんだよね〜」
「あ、私もです。以前に任務で一緒になりました」
「長期任務から帰ってきた人だろ?」
ゲンマさんは、にやりとする。
「あの人なあ、実はさ〜、クラッシャーと恐れられている人でさ〜」
クラッシャー?
「ああ、破壊を得意とする人です。任務においても戦闘においても、忍の生業総てにおいて」
へー、すごい人なんだなあ。
「でもって、別名があんの。恋愛クラッシャーって」
恋愛クラッシャー・・・。
「そうそう、好きでもないくせに人の恋人を横取りしたり、人様の恋愛事情に横入りして引っ掻き回したり、最終的に恋人を別れさせたり」
「要するに」
ハヤテが、ごほんと咳をした。
「人の幸せ、仲のいい恋人同士、順調な恋愛をぶっ壊すのが好きなんですね、あの人は」
趣味が悪いんです、とハヤテは締めくくった。
「そうなんだ・・・」
人は見かけに、よらないものだな。
ふと疑問に思う。
カカシさん、何でわざわざ俺を連れてきたんだろう。
俺は下心があって来たんだけど。
それにカカシさんと例の上忍との会話を思い出して、よくよく考えてみると。
決して、仲が良い者同士の会話ではなかったような。
むしろ、にこやかに険悪なムードだったような。
・・・気がする、気がつくのが遅いけど。
それから暫くしてカカシさんがやって来て、飲み会が終わったというので一緒に帰った。
俺の家に。






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