AIで普通の動画を3D動画に変換する


青春時代 3



体に力が入らない。
「あ、あれ?」
戸惑っているとカカシの静かな声がした。
「イルカ。」
しんとした空間に静かな声が響く。
「熱が上がってきているんだよ。水なら、今、持ってくるから。」
カカシは起き上がろうとした俺を、布団に戻すと台所に行ってしまう。
「はい、飲んで。」
カカシが俺の背を支えて、布団の上で体を起こしてくれた。
冷たい水が俺の喉を潤す。
水分を摂った体が、ほっとするのが分かった。
もう一杯、と水を飲まされた、鎮痛剤と共に。
枕も冷却剤の入ったものに変えられた。
ひんやりしていて気持ちがいい。
自然と瞼が落ちた。


ぽんぽんとカカシが俺の胸の上の布団を軽く叩く。
「傍にいるから安心していいよ。」
暗闇で聞くカカシの声は普段より落ち着いて暖かくて。
本当に安心して。
朝まで俺は眠ってしまった。




朝、目が覚めると既にカカシは起きていた。
薄っすらと目を開けるとカカシが覗き込んでくる。
「あ、イルカ。起きたの?」
ぼんやりしたまま頷いた。
「喉乾いた?何か飲む?」
また、ぼんやりしたまま頷いた。
なんだか考えが上手く纏まらない。
カカシは昨夜と同じように、俺の背を支えて水を飲ませてくれた。
申し訳ないな、と思いながら「ありがとう。」と言おうとしたけど。
声が出なかった。
喉がすごく痛くて。
「あー、なんかね。イルカ、風邪気味みたいだよ。」
風邪気味・・・。
「ほら、いろいろ頑張って無理してたから体が弱ったところに、疲れがどっときたんだよ。」
そうなのか・・・。
「あ、任務は休むって連絡しておいたからね。俺も今日は休みだから看病するよ。」
カカシは本当によく気が付く。
偉いなあ。


食欲が無かったので。
薬と水だけ飲んで。
俺は再び眠りについた。


次に起きた時は昼を過ぎていた。
何だか、よく眠ったような気がする。
俺の寝ている横でカカシが洗濯物を畳んでいた。
「洗濯しておいたよ。もう乾いたから。」
洗濯する音なんて、全然気づかなかった。
熟睡していたんだな。
「よく寝ていたからね。」
カカシは笑って「喉渇いたよね?」と再び薬と水を飲ませてくれる。
「何か食べる?」
無言で首を振る。
「うーん。何か食べないとねえ。食べたいものはないの?」
食べたいもの?
冷たくて甘いものが食べたいなあ。
冷たくて甘いものって云えば。
あ、あれがいい。
頑張って声を出すと掠れた声が喉から出た。
「アイス食べたい。」
「アイス?」
「うん、ほら、初めて会った時に食べた店のやつ。」
「ああ。」
カカシが思い出したかのように、ぽんと手を打った。
「じゃあ、買ってくるよ。でも。」
心配そうに俺を見る。
「一人で大丈夫?分身残していこうか?」
分身て・・・。
そんな子供じゃないから大丈夫だよ。
どこまで子供扱いすんだよ。
軽く笑って断った。




カカシがいなくなると家の中がしんと静まり返る。
人が一人いなくなるだけで家の中が、こんなに静かになるなんて。
温度も下がったように感じた。
静まり返った家の中にいると。
一人取り残された気分になった。


世界には俺独りだけ。
他には誰もいないんだ。
俺だけしかいなくて。
俺だけ独り。
急に寂しい気持ちが押し寄せてきて危うく涙が出そうになった。
やばいやばい。


俺は思考を切り替えることにした。
何か楽しいことを思い出せばいいんだ。
楽しいこと楽しいこと。


そういえばアイス。
カカシと出会う切っ掛けとなったのはアイスだった。




ある日の任務が終わった夕方。
俺は夕飯の買い物をしながら商店街をブラブラとしていた。
商店街の一角に新しくオープンした綺麗な店があって。
試しに覗いてみると。
アイスクリーム屋さんだったのだ。


ショーケースに並ぶ色とりどりの綺麗な色のアイスの数々。
果物を使ったものや牛乳を使ったもの。
珍しいものでは野菜を材料にしたものもあった。
そういえば久しくアイスなんて食べてない。
生活費だけで、いっぱいいっぱいで余裕もないし。
「食べたいなあ。」
思わず口から出てしまっていた。
「うまそ〜。」
くっと笑う声がして横を向くと、そこには。
銀の頭に覆面の忍者。
カカシだった。


「なんだよ、笑うことないだろ。」
俺は気恥ずかしさから食って掛かるように言った。
「失礼なやつだな。」
ちょっとムカっときたし。
「ごめんごめん。いやさ、ショーケースに貼り付いているからさ〜。」
ショーケースの中のアイスに見蕩れていたのは本当だった。
うっと口篭る。
「い、いいじゃん。」
悔し紛れに言い返すとカカシは笑って。
「お詫びにアイス奢るからさ。機嫌直して。」
と言って俺にアイスを奢ってくれたのだ。
なんとトリプル、三段重ねの。
「すげー。」
トリプルのアイスに目をキラキラさせた俺と同じアイスをカカシは頼んで。
二人で「甘い、冷たい、美味しい。」と騒ぎながら食べたのだ。




それが俺とカカシの出会い。
それから、夕飯がまだだというカカシを誘って俺んちで夕飯をご馳走した。
アイスの礼も兼ねて。
そこから、友達付き合いが始まって。
今は、そこそこ仲が良くなった。
カカシは、ああ見えて面倒見がいいし。
俺が寂しい気分の時は、それとなく察してくれたりする。
まあ。
そんなところだ。


でも。
俺ってカカシに迷惑かけてるかな。
自分で何でも出来るつもりでいるだけで本当は何にも出来なかったりして。
全部独り善がりだったら、どうしよう。
今だって、病気や怪我を理由に何もしていない。
何も出来てない。
今度は不安が押し寄せてくる。
どうしようどうしよう。
頭の中でぐるぐる考えて。
終着点に辿り着かない。



そこへ「ただいまー。」とカカシの声がした。
帰ってきたのだ。
「イルカー、ただいま。」
俺に声をかけながら、真っ直ぐ俺の寝てる場所まで来た。
「アイス買って来たよ。」
アイスの袋を持って、にこにこしている。
「混んでいてさ、ちょっと遅くなちゃった。」
俺は、はあと息を吐いた。

認めたくないけどカカシが帰ってきたことで。
安らいで満たされたのだ。
心が。



「イルカ?具合が悪くなった?」
力なく首を振ると。
「アイス、食べれる?」
「食べる。」
答えるとカカシが背を支えてくれて、寒くないように肩に長袖の服をかけてくれた。
俺は力なくカカシに寄りかかって。
カカシの腕の中で。
すごく安心した。
安心すると共に急激な眠気が襲ってくる。
「イルカ、寝ちゃったの?」
カカシの声が遠くなる。
「しょうがないなあ。」
最後にカカシの苦笑したような声が聞こえた。




青春時代 2
青春時代 4



text top
top