AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


4.梨と友達





「カカシ、梨が欲しい。」
パックンが突然言った。
「二つほど買ってくれんか。」
「え、梨って果物の?」
「そうじゃ。」
パックンは頷いて、「できれば、瑞々しいものが好い。」と注文まで付けてきた。
「別にいいけど。」
今までパックンが何かを買って欲しいなんて言ってきたことはない。
変だなと思いつつも注文通り、今時期にしては高級品の梨を買ってやった。
「はい、どうぞ。」
パックンは「すまんな。」と頭を下げてから、口に梨の入った袋を銜えるとドロンと消えた。
「おかしいな。」
あのパックンが自分に頭を下げるなんて。
どうしたんだろう。
理由が知りたくなったカカシはパックンの後を追いかけて同じようにドロンと消えた。




パックンの後を付けると、一軒の民家に辿り着いた。
平屋の古い造りの家だ。
パックンは玄関と思しき場所から、何の躊躇いもなく入って行く。
どうやら何回も来ているらしく慣れているようだった。
誰の家?
もしかして、パックンは自分以外の人間とも忍犬の契約を交わしているのか。
カカシの胸の中に疑念が芽生えてくる。
俺って、そんなに頼りないのかな。
そりゃ、まだまだ未熟なのは認めるけど、でも。
なんとなく、むしゃくしゃしてきてカカシはパックンの後に続き家の中に入ることにした。
現場を押さえてやる。
意気込んでいたが、きちんと玄関で靴を脱いで揃えた。
そういえば、パックンは足を拭いてから上がったのかな?
玄関に濡れた布があったので、それで足は拭いたらしい。
ついさっきまで怒っていたのに、一安心してカカシは家の中のパックンの気配を探った。
すぐに居場所は分かったが、もう一人誰かの気配がする。
「これって。」
この気配は分かる。
何回か会ったことがある人間。
イルカの気配だ。
そのイルカの気配は、かなり弱っていた。




「イルカ。」
イルカとパックンの気配がある部屋に大急ぎで向かい、勢いよく襖を開けた。
「なんじゃ、カカシ。来たのか、静かにせい。」
パックンが振り向いて小さな声で注意する。
座っているパックンの傍らにはイルカがいた。
布団に横になり目を閉じている。
顔が赤く息も荒い。
苦しそうな様子で眠っていた。
「どうしたの?イルカ。」
「風邪じゃ。三日前から調子を崩していてな。」
話しながら、パックンは口で布団を挟みイルカの肩まで引っ張り上げた。
「昨日、医者に診てもらい薬も飲んでいるんじゃが、熱が下がらん。」
パックンは心配そうにイルカの顔を見やった。
「食事も食べれずに、ずっと苦しそうにしておって。」
「だから、さっき梨を買ってって言ったの?」
「うむ。前にイルカが好きだと言っておった。」
好きなものは食べれるかもしれない、とパックンは言う。
「まあ、そうだけど。」
でも誰が梨を剥いて、イルカに食べさせてやるんだよ?
カカシは疑問に思う、それに。
「昨日、姿が見えないと思ったら、イルカに付き添って病院に行っていたんだ?」
「すまん。」
パックンは再び頭を下げるが、そうじゃなくて。
「何で、俺に言ってくれないのさ。」
少し悔しさが胸にこみ上げくる。
「この前、またね、って言っていたのに。」
「カカシの気持ちは分かるが、イルカが誰にも迷惑を掛けたくないと言ってな。」
「でも。」
「イルカは親を亡くしてから、何でも一人でやろうとしておるから上手く人に頼れぬのだと思う。」
パックンに、そう言われるとカカシは黙ってしまった。
それは自分にも、存在する感情だからだ。
親がいない、だから誰にも迷惑を掛けられないし掛けたくない。
その気持ちは痛いほど分かる。
小さいイルカが頑張ろうとするのは分かるけど。




目の前で苦しそうにするイルカを放っておくことはできない。
「パックン、俺も一緒に看病するから。」
「いいのか。」
「うん。」
カカシは力強く言った。
「だって友達でしょ。」
「そうか。」
パックンは、ほっとしたようだった。
「カカシが看てくれるのはありがたい。犬の体では何かと不便でな。」
イルカが起きたら梨でも剥いてくれ、と頼んできた。
「任せてよ。」
目が覚めたイルカはカカシがいることに驚くだろう。
看病を断られるかも知れないけどイルカが治るまでは帰らないから。
決意を固めカカシがイルカの世話を始めるとパックンが何気に聞いてきた。




「ところでイルカとは、いつの間に友達になったんじゃ?」
「え。」
「まだ、三回程しか会ってないのではないか。」
「そうだけど。」
「禄に話してもいないはずじゃが。」
「う、うん。」
パックンが妙に追求してくる。
「それなのに、もう友達なのか?」
「い、いいじゃん。」
「うむ。まあ、いいがな。」
そっぽを向いたパックンの表情に思い当たることが有って、カカシは言ってみた。
「パックン、もしかして嫉妬?」
にやっと笑うと、パックンが慌てて否定してくる。
「嫉妬なんてしておらん。イルカとカカシが友達になっても嫉妬なんてするはずがない。」
否定すればするほど、肯定しているようなもので。
「ふっふっふっ。パックン妬いてるんだ。でも俺、近い将来イルカと親友になる予定だから。」
「イルカの親友はわしじゃ!」
カカシとパックンの口喧嘩はイルカを起こさないように呟き声で続けられた。
イルカは一人と一匹の看病によって数日後風邪は完治した。
元気になったイルカに、カカシはとりあえず「俺とイルカは友達だよね。」と念を押しておいた。




3.飴玉
5.灯かり




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