AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


3.飴玉





カカシは、いつになく緊張していた。
任務でも、こんなにも緊張することはない。
息を何度も吸って吐いてを繰り返して、気持ちを落ち着けようとしているが心臓が鼓動が煩い。
顔に出ていないのが、せめてもの救いだ。
これから、イルカに会う。
会って何がどうするわけでもないのだが、カカシは会うということを物凄く意識していた。
大丈夫、大丈夫、だってパックンも一緒じゃん。
それに、話が続かなくなった時のために、アレも持ってきてるし。
カカシは胸のポケットに入れてあるアレを服の上から押さえる。
これさえあれば何とかなるさ。
半ばカカシのお守りと化していたアレは、色取り取りの大粒の飴玉だった。




「あ、イルカが来たぞ。」
カカシの足元にいたパックンが言うと同時に尻尾を振って駆け出した。
イルカを迎えに行くパックン。
「あ、パックン。もう来てたの?待った?」
「いや、ちっとも待っておらんぞ。」
そんなことを言いながらパックンは既にイルカの腕の中にいる。
カカシは完全に出遅れた感じだ。
足を踏み出そうとしているのだが、なかなか言うことを利かない。
イルカとパックンは仲良さ気に話していてカカシも是非とも二人の間に入りたいのに。
動けないカカシの傍に、パックンを抱いたイルカが近づいてきた。
「こんにちは。」
イルカが挨拶をして頭を下げた。
「あの。名前を言うのを忘れていたけど、僕、海野イルカ。」
よろしくね、と瞳が揺らめいてイルカが笑ったのが分かった。
「え、えーと。俺は・・・。」
「こやつはカカシと云うんじゃよ。イルカ。」
パックンが助け舟のつもりか横から口を出す。
「そう。」
パックンに笑いかけてから、イルカはカカシの名を呼んだ。
「よろしくね、カカシくん。」




最初は緊張していたが、イルカに屈託無く話しかけられたり笑いかけられたりしているうちに次第にカカシはいつもの調子を取り戻してきた。
とはいえ、自分からイルカに話しかけることは成功していない。
パックンとイルカが話しているのを聞いている方が多い。
おまけにパックンは会ってから、ずっとイルカに抱きかかえられたままだ。
パックン下りろ、と念じてみたものの通じるわけがない。
カカシがそんな風に、一人でじたばたしているうちに時間は過ぎてしまった。
イルカがそっとパックンを置いて立ち上がる。
「僕、もう行かないと。」
「なんじゃ、今日はもう仕舞いか。」
「うん、ごめんね。」
イルカが寂しそうにパックンを見る。
そしてカカシには、どこか済まなそうな感じで言った。
「あの、付き合わせちゃってごめんね。」
頭を下げられた。
「え、えと。何で?」
「だって。」
言いにくそうに下を向くイルカ。
小さい声が聞こえた。
「・・・詰まらなさそうだったから。」
がーん、とカカシに衝撃が走った。
そんな風に見られていたなんて、とショックを受ける。
「イルカ、気にすることはない。いつもカカシはこうだからのう。」
パックンがイルカを慰めているが、いまいちフォローになっていなかった。
「じゃあ。」
イルカは言葉少なに手を振る。
またね、とは言わなかった。




「ま、待ってよ、イルカ。」
去ろうとするイルカの背にカカシは大声で呼びかけた。
今、言わないと後悔する。
何とか、イルカに自分の気持ちを欠片でもいいから伝えたい。
急いでイルカに駆け寄り、腕を掴んで立ち止まらせた。
「違うんだ、イルカ。」
イルカが振り返ってカカシを見る。
「詰まらなくなんてないんだ。もっと話したいんだけど・・・。」
言葉が続かずカカシの視線が、どんどん下に落ちる。
「上手く話せなくて。ごめん。」
イルカの視線が痛くて顔を上げられない。
どうにも居た堪れなかった。
「そうなんだ。良かった。」
ほっとしたような、その声で顔を上げた。
イルカは安心したように笑っていた。
もしかしてイルカも緊張していたのかもしれない。
笑顔につい見蕩れて、心臓が高鳴る。
それを抑えようと胸に手を当てて、カカシは思い出した。
飴があったじゃん!




話しが途切れたりした時のために持ってきたんだっけ。
胸のポケットから飴を取り出す。
「あの、良かったら食べない?」
色取り取りの飴を見てイルカの目がきらきらと輝く。
「わ、きれいな飴だね。いいの?」
確かめるようにカカシを見たので大きく頷いた。
「うん、いいよ。」
「じゃあね、この緑色のやつがいいな。」
嬉しそうに飴を指差す。
「あ、でも手が汚いんだっけ。」
イルカの手もだが、体全体が汚れていた。
「ここに来る前に少し修行していたから・・・。」
「ならば、カカシがイルカの口に飴を入れてやれば良いではないか。」
下からパックンの声がする。
何となく不安そうに事の成り行きを見守っていたのだが大丈夫そうなので声を掛けてきたらしい。
「そっか、パックン頭いい。」
イルカは素直にカカシに向かって口を開けた。
「緑の飴だよ。」
「う、うん。」
カカシは慎重に飴を掴み、イルカの口に持っていく。
ポトリ。
飴は無事にイルカの口に入った。
「おいしい、ありがと。」
にっこりと満足そうに笑っている。
「じゃあ、本当に行かなくちゃ。」
イルカが改めて手を振った。
「またね。」
今度はその言葉を聞けた。




カカシはイルカの姿が見えなくなるまで見送ってから、自分の指を見た。
先ほどイルカの口に飴を入れた指だ。
指を見つめるカカシは、みるみるうちに赤くなる。
「ど、どうしたのだ、カカシ?具合が悪いのか?」
カカシの急激な変わり様にパックンが慌てて声を掛けた。
「な、何でもないよ。」
カカシは、ふらっとした足取りで歩き始める。
指を見つめたままだ。




イルカの唇に触っちゃったよ。
口に飴を入れるときだけど。
ほんの少し指先が唇に触れて。
思い出してカカシはドキドキする。
偶々だよ、触ろうなんて思ってなかったんだから。
自分に言い訳しながらも、つくづく思う。
飴玉持ってきて良かった。
俺って偉いなー。
次はどんなお菓子を持っていこうかな。
カカシは浮かれている。
パックンは幸せに浸るカカシを後ろから不思議そうに見ていた。




2.指切り
4.梨と友達




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