AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


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死ぬはずだったって。
覚えていたのか、はたけカカシじゃなくて、はたけ上忍。
なんで今まで言い出さなかったんだろ。
早く訊けばよかったのに・・・。
とはいえ、でもさ。
なんで怪我して死に掛けていたと訊かれても答えようがない。
あなたを助けたのは大魔王の悪魔です、とか言ったら正気を疑われること間違いなしだ。
頭がおかしいと思われても、しょうがない。
悪魔が助けたなんて与太話、誰が信じる?
誰も信じないに決まっている。
良くても理由があって嘘をついていると思われるとか。
何にしろ、言っても証拠も何もないし。
黙っているしかない。
どうしょうもないだろ、こればっかりは。



何も言えずに黙っていたら、はたけ上忍が頭を撫でてきた。
「ちょっとイルカさん、黙らないでくださいよ」
いや、黙らないでって言われても話すことができないから。
「聞いていました?今言ったのは俺がイルカさんの傍にいる理由の一つなんですよ」
「あー・・・。はい」
「それに知りたいけど今すぐって訳じゃなくて。イルカさんが話したくなったら俺に話してほしいんですよ」
「あー・・・。はい」
「投げやりな返事ですねえ」
はたけ上忍は頭を撫でながら、小さく溜め息を吐いていた。
「なんで解ってくれないんですか、俺の気持ちを」
解るって何を?
俺たちの間には大きな壁があるのは事実で、それは越えられない。
事実を粛々と受け止めるだけだ。
それに俺の気持ちって、真実を追究する気持ち?
興味?
好奇心?
そんなの俺が満たせるはずがない。
まあ、限りない探究心があるからこその上忍なのか・・・。
俺には足りない物をはたけ上忍は持っている。



なんだか急に胸が苦しくなった。
痛さとかじゃなくて締め付けられるような感じで。
押しつぶされそうな・・・。
はたけ上忍は敏感に、それを察知した。
「イルカさん?」
俺の胸を摩る。
どうして苦しい場所が分かるんだろう。
はたけ上忍に摩られて苦しさが軽減した。
「大丈夫ですか。苦しいの?医者を呼びますか?」
俺は寝たまま、首を振った。
どっちかっていうと、はたけ上忍に胸を摩っていてほしかった。
「そう・・・」
はたけ上忍は訝しげな顔をしながらも、そのまま胸を摩ってくれる。
だんだん・・・。
だんだん、苦しさがなくなっていった。



苦しくなくなると現金なもので食欲がわいてきた。
「はたけ上忍」
「カカシでいいですよ」
華麗にスルーする。
「あの、大変恐縮なんですが」
「なんでしょう」
「さきほど買われてきた・・・」
はたけ上忍の顔が嬉しそうな様子に変わる。
「何食べる?」
先に聞かれてしまった。
冷たいものがいい。
「アイスがいいです」
「了解〜」
はたけ上忍はベッドを起こすと座り心地のいいように俺を座らせて、いそいそと冷蔵庫にアイスを取りに行く。
戻ってきた、はたけ上忍の手にはアイスと銀色のスプーン。
「すみません」
軽く頭を下げてアイスを受け取ろうとすると、アイスが手の中をすり抜けていった。
「駄目です」
楽しそうなはたけ上忍。
「熱が出たばっかで疲れているでしょ。俺が食べさせますから」
そう言って、うきうきとアイスのカップの蓋を取るをスプーンでアイスを掬って俺の口元に持ってきた。
「はい、どうそ」
一瞬だけ躊躇って俺は口を開けた。
開けた口に冷たいアイスが入ってくる。
冷たいと思ったのも束の間、今度は甘さがやってきた。
ほんのりと甘いイチゴの味。
「おいしい」
本当、アイスは美味しかった。
冷たくて甘くて、なんていうか初恋の味?
・・・・・・・・・なんてジョーク言っている俺は近々治って退院できそうな予感がする。
「美味しい?よかったあ」
はたけ上忍は俺の食べる速度に合わせて、アイスを口に中に入れてくれた。
「はい、とっても美味しいです」
俺は、わざわざ任務明けにイスを買ってきてくれたはたけ上忍へ感謝の気持ちを込めて言った。
「そんなの美味しいの?」
「格別です」
そう言うと、またアイスが口の中に入ってきた。
やっぱり美味しい。
俺を見て、はたけ上忍が目を細めた。
目を細めた、はたけ上忍は本当に優しい顔になる。
この人、目を細めるのが癖なのかな?
頭をがしがしの次に発見した、はたけ上忍の癖かもしれない。



「そ。俺も格別です」
「え」
「イルカさんが笑ったから」
「・・・え」
「イルカさんって笑わない人なのかなあと思っていたので笑った顔が見れて嬉しい」
「・・・・・・え」
「笑うと、ますます可愛いねえ」
およそ、成人男子に言う言葉ではない言葉を言うと、はたけカカシはアイスを掬って自分の口に入れた。
「あ、ほんと美味しいですね」
呆然と見ていると、にやっとする。
「間接キスなんて照れますね!」
・・・あの。
間接キスって?
俺が、その言葉の意味を理解するのに数分を要した。
この人は俺が食べたアイスのスプーンで、自分もアイスを食べたから間接キスだと言ったのか。
任務で疲れているのかなあ、はたけ上忍。
男同士で間接キスも何もないだろ。
あるのは同じスプーンでアイスを食べたって。
それだけだ。



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