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はたけ上忍が来なくなって三日が過ぎた。
三日・・・。
日にちを数えてしまうのは、それだけ、はたけ上忍の存在が大きかったからだろうか・・・。
正直、寂しいという気持ちもある。
でも、それ以上にこれでいいんだと強く思うっているから、別にいい。
実は昨日、三代目火影さまがいらっしゃった。
火影さまとは木の葉の里の里長を勤められている偉大な人だ。
だいぶお年を召しているが優しくて包容力のある人。
俺の尊敬する人の一人。
大好きだ。
俺の見舞いも兼ねていらしゃった火影さまは怪我の直りが順調なことを喜んでくださった。
その上で、こう仰られた。
「実はな、イルカ」
「はい。なんでしょうか、火影さま」
声もだいぶ戻ってきた。
スムーズに話が出来ている。
「お前が怪我をしたことは公には伏せてある」
「はい・・・」
火影さまは渋い顔をした。
「あの時、カカシは秘密裏に任務に出ていておってな」
表に出ない任務もたくさんある。
その一つをはたけ上忍は受けていたらしい。
「怪我をしたイルカをカカシが見つけたというのは黙っていてほしいのじゃ」
「はい」
怪我をした、はたけ上忍を俺が見つけたってのが真実だけど、それは誰にも言えない。
「誰にも公言しないでほしい。関わった他の者にも、既に口止め済みじゃ」
「はい」
「今もカカシは任務に行っており里を留守にしておる」
「・・・はい」
だから、はたけ上忍は、ここに来ないのか。
ほんと、忙しい人だなあ。
といっても任務から里に帰って来たとしても、ここに来るとは限らない。
「イルカは表向き、今は任務に出ていることになっておる」
表向きは任務、実は怪我して入院になっているのか俺。
「不自由をかけるが、そういうことにしておいてほしい」
火影さまから強く頼まれた。
頼まれたってか、命令だよな。
俺は神妙な顔をして頷いた。
「畏まりました。絶対に誰にも話しません」
「うむ」
火影さまは大きく頷いた。



それから、やっぱり忙しいはずの火影さまは俺と少し雑談をしていった。
「カカシは治療の邪魔をしてやせんか?」
「いいえ、ちっとも」
治療の邪魔というより手助けしてもらっている。
「はたけ上忍は、とても良くして頂いています」
「なら、よいが」
「お忙しい方なのに頻繁に見舞いに来てくださって申し訳ないです」
「そんなことあるまいよ」
火影さまは、かかか、と笑った。
「カカシが自分から言い出したことじゃ。好きにさせるがよい」
「しかし、上忍の方ですから」
俺を見舞うより他にすることがあるんじゃないかな。
それが気がかりだ。
俺が、はたけ上忍の任務の妨げになっていたら嫌だ。
「はたけ上忍は俺に構わず、ご自分のことを優先するように仰ってくださいませんか」
火影さまに言われたら従わざるを得ないだろうし。
・・・まあ、他力本願なのは自分で自分に目を瞑る。
「そうさのう」
面白そうに火影さまは俺を見た。
「一応、伝えておくが。期待するな」
そう言って「余計なことを考えずに体を治すことを一番にな」と俺を労わって帰って行った。



それが昨日の出来事だ。
俺のが入院しているのは伏せられているので事と次第を知っている、はたけ上忍だけが俺の病室を訪れる。
個室なのも頷ける。
医者や看護師も同じ人ばかりだし。
別に、それに文句はない。
最低限の範囲で最良のことをしてもらっているからなあ。
それにしても・・・。
俺は病室の天井を見上げた。
暇だ・・・。
やることがなかった。
ここで出来ることと言えば寝ること、食べることと薬を飲むことくらい。
話し相手もいないし、本もまだ駄目だって止められている。
手の力が、いまいち戻っていないので物を持つのに不自由している。
食事は、なんとか自力で出来るようになってきているが。
足で立つのは、もう少し先かもしれない。
早く怪我が治らないかなあ〜。
こんな時、はたけ上忍がいたら話をたくさん聞けるのに。
はたけ上忍の話は面白かった。
俺の知らない興味深い話をしてくれて。
もしくは本を読んでくれて、それを聞きながら寝入ってしまったりしていたなあ。
こう考えると、結構、俺、はたけ上忍に頼っていたな。
もっと自分で何とかしないと・・・。
甘えてちゃ駄目だ!
俺は自分に気合を入れて回復に向けて、いっそう頑張ろうと決めた。
目標は早く怪我を治して早く退院。
そんでもって仕事をする。
通常はアカデミー勤務の俺なので子供たちのことも気に掛かる。
特に気に掛かる子供もいるので、その子はどうしているんだろう。
泣いてなきゃいいが。
とても案じられた。



なんか、あれだな・・・。
食事中だった俺は胸を押さえた。
なんか、痛い・・・ような気がする。
順調に治っているはずなのに体調が悪い・・・ような気がした。
気がするだけで、きっと気のせい。
病は気から、って言うしな。
ははは、と空元気を出して笑うと頭が割れそうに痛かった。
息も上手く出来ないし。
どうしたんだろ、俺。
ちゃんと薬も飲んで安静にしていたのになあ。
一日も早く治りたいのに。
ベッドの上にテーブルを持ってきてもらって一人で食事をしていたのだが手元が覚束なくなってきた。
なんで、こんなに調子が悪いんだろ。
呼吸が乱れてきた。
頭も痛いけど体も痛くなってきた。
・・・・・・困った。
看護師さんを呼んだ方がいい、かな。
それとも目の前の食事を食べた方がいい?
食べないと治らないぞ、と両親が生きていた頃、言われたっけなあ。
頑張って食べなさいと。
病気の時は俺の好物ばかり食べさせてくれた両親。
思えば大切に優しくされていたんだな。
両親のことを思い出したら急に懐かしくなってきてしまった。
会いたい。
すごく会いたい。
会って話がしたい。
しかし、それは叶わぬ夢だった。
何故って両親は、もういないから。
二度と会えないからだ。



「はあ・・・」
溜め息が出た。
病気の時って、どうして感傷的になるんだろう。
気が弱くなる。
情けない。
この間、早く良くなって早く退院するって決めたばかりだというのに。
俺は、ゆっくりと手にスプーンを持つと食事を食べなければと皿の中身を掬おうとしたのだが。
手が震えてしまって持っていられなかった。
カラーン。
俺しかいない病室にスプーンが落ちた音が響く。
力が入らなくて手に持っていられず、スプーンが床に落ちてしまった。
しまった!
「ああ、もう。何やってんだ!」
自分に文句を言うと俺は、これまた、ゆっくりと上半身を傾けた。
ベッドの下に落ちたスプーンを拾おうとしたのだ。
手を伸ばしてスプーンの落ちた辺りを手で探るが見つからない。
もう少し、と身を乗り出してみる。
ベッドの下に下りる許可が、まだ出ていないので、こうやって探すしかない。
「あれ、ないなあ・・・」
スプーンが見つからない。
思い通りに動かない自分の体に、いらいらしながら探していると、ぐらっと揺れた。
バランスを崩してしまったのだ。
このままじゃ確実に床に落ちて体を打ちつけてしまう。
考える間もなく俺はベッドから落ちていた。
衝撃が来ると思って目を閉じたのだが・・・。



それは、一向に来る気配がなかった。
どちらかというと、なんか温かい。
閉じていた目を開けると声がした。
「危ないじゃないですか!」
聞き覚えのある、この声は・・・。
「落ちそうになってましたよ」
俺は、はたけ上忍の腕に、がっしりと支えられていた。
力強い腕に支えられて、はたけ上忍の胸の中にいる。
「寝てないと駄目ですよ」
ベッドに戻された。
俺の体を気遣いながら、ゆっくりと横たえられてから、はたけ上忍は手にして手袋を脱いで俺の額に手を当てた。
「熱もあるじゃないですか」
少し咎めるような口調だ。
「イルカさん」
額を撫でられた。
「しばらく来れなくてごめんね」
その声を聞きながら俺は目を閉じた。
急速に眠りに落ちていく。
来なくていいと思っていたのに、はたけ上忍が来て。
何故だか分からないけれど、とても安心してしまったのだった。



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