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な、なんだ・・・これは。
俺の人生の中で初めての経験である。
今までの俺の人生にはなかった。
それに対して俺は、どう行動すべきか。
などと妙に冷静になっている自分がいた。
ってか、何この展開。
おかしくないか、だってさー、とか俺があれこれ考えて、要はパニックになっているのにカカシさんは全く俺の動揺には感知せずに物事を進めていく。
いつもは、あんなに察しがよいのにどうしたってんだ。
カカシさんが、いつものカカシさんじゃない。
「カ・・・」
カカシさんと名を呼ぼうにも声が出ないし。
俺も、いつもの俺じゃなくなっている。
・・・どーしよう、と思っていると天の助けが思い出したように怪我した部位が痛みを訴えてきた。
痛みが現実味を帯びてくると声が自然に出てくる、不思議だ。
「いたっ!痛い、腕が痛いです、カカシさん!」
俺の訴えを聞くとカカシさんは、ぱっと俺から体を離した。
抱きしめる腕は、そのままに俺を見る。
「だ、大丈夫ですか?」
カカシさんの顔は上気していて赤くなっていた。
カカシさんの方こそ、大丈夫なのだろうか?



「そういえば、イルカ先生怪我をしていましたね」
すみません、つい調子に乗りすぎました、とカカシさんは謝ってくる。
「いえ、そんな」
謝られても、どう返していいのやら・・・。
困る。
「腕も、そうですけどお腹も怪我していませんか」
「ええ、少しばかり」
「少し?」
顔を顰めたカカシさんは「ちょっと見せて」と有無を言わさず、俺は忍服のベストと黒いアンダーを脱がされた。
左腕と腹の辺りに、ぞんざいに包帯が巻かれている。
「これじゃあ、ダメじゃないですか」
誰が巻いたんですか、と問われて俺は目を泳がせた。
やったのは俺だ、急いでいたので適当に巻いた。
元より自分で自分の包帯を巻くのは得意ではない。 人のだったら綺麗に巻ける自信があるが自分のだと、まーこれでいいかとなるのだ。
「イルカ先生」
思っていたのが顔に出たのか、カカシさんが「こら」と怖い顔になった。
「自分のことも大切にしないとダメでしょ」
自分で包帯を巻いたのがバレて叱られてしまった。
「全く、イルカ先生ってば自分のことはいい加減なんだから。俺、心配しちゃいますよ」
口を尖らせ、それでも手早く傷口を消毒して包帯を巻いていく。
手際がよい。
「はい、終わり」
包帯を巻き終わると「おまじない」とか何とか言って、ちゅっと包帯の上から傷口にキスを落とした。
「もう、これ以上、怪我しないようにね」
「あ、ありがとうございます」
激しく動揺してしまった。
さっきから俺は動揺ばかりしている。
「いーえ、どういたしまして」
カカシさんの笑みに余裕を感じた。
・・・もしかして、これって経験値の差とか?
そんなことを思うと胸が、ちくりと痛む。
怪我とは違う痛みだ。



いやいやいや。
今、そんなこと考えている場合じゃないし。
俺は無理矢理、考えを終わらせた。
脱がされたアンダーとベストを急いで着込む。
すくっと立ち上がった。
「イルカ先生、どうしたの?」
カカシさんが俺を見上げてくる。
「今日は、もう遅いから泊まっていったら?」
一緒にベッドで寝ようよ、と魅力的なお誘いをされたのだが。
「いえいえいえ」
俺は首を横に振った。
「俺、もう帰ります!」
「どうして?」
「どうしてって」
「どうして?」
どうしてって、そんなの決まっているじゃないか、と心で叫んでみたがカカシさんには届かなかった。
しれっとして無邪気に訊いてくる。
「ねえ、どうして?なんで?」
カカシさんも立ち上がってしまって、お互いの距離も縮まって、包帯を巻きなおしてもらう前の状態に戻りつつある。
「イルカ先生、教えて。ねえ、どうしてなの?」
両手でカカシさんを防ぎながら俺は後退していくが、すぐに壁際に追い詰められてしまった。



「イルカせんせい」
俺を呼ぶカカシ先生の調子が、どっか違ってきている。
どこがどうとか言われると、上手く説明できないけど。
熱っぽいというか、熱に浮かされているというか。
「イルカせんせい」
声が甘く感じる。
この声を聞いていると体が痺れて動けないような感覚に陥っていく。
カカシさんの声が甘く聞こえたことは何度かあったけど、今回のこの声は感じが違う感じがする。
・・・こういうときはあれだ。
逃げの一手だ。
俺は玄関方向を見て距離を測った。
よし、これなら。
この距離なら全力を出せば、一秒くらいならカカシさんから逃れられる・・・はず。
おまけに俺、この後に任務が入っているし、このままカカシさんの家に泊まることはできない。
だから・・・。
壁を背にした俺に、カカシさんの顔は目前で。
俺は目を瞑って集中した。
玄関を目指して高く跳躍する。
天井に体がぶつからないように空中で体を捻って着地した地点は玄関だった。
「カカシさん」
俺は、じりじりと下がりながら下足を履く。
「俺、これから、また任務なんですよ。だから、カカシさんの家に泊まることはできません」
玄関の扉を後ろ手に開ける。
「だから、ごめんなさい。傷の手当て、ありがとうございました」
「もーう」
腕を組んで仁王立ちになったカカシさんが溜め息を吐く。
「そういうのは早く言ってよ、その気になりかけちゃったじゃないの」
その気って何!
溜め息混じりにカカシさんは微笑んだ。
「任務、頑張ってねイルカ先生。もう、怪我しないでね」
笑って任務に送り出してくれた。
「それから任務から帰ってきたら俺の家に、すぐ来てね!」
念を押された。
「すぐにですよ、すぐ。直行ね!」
「あ、ははは〜」
なんと言っていいか、戸惑って。
「じゃ、行って来ます!」
「あっ、ちょっと待ってイルカ先生!返事は?」
俺は逃げた。



今回は単独任務だった。
危険度は低い。
だけど任務に危険はつきもの。
そんなことは理解している。
いやってほど頭と体に叩き込まれている。
だけども単独だってのと危険度は低いってので俺は気が緩んでいたのは確かだ。
「うー、疲れた」
里に戻る途中、強烈な眠気に襲われた。
早く里に帰らなきゃいけないのに。
歩くことを体が拒否している。
「あー、もうー」
体が言うことを利かない。
こんなときに限って兵糧丸が切れていた。
「駄目じゃん、俺」
うっかり木の根に躓いて、どてっと転んでしまった。
冷たい地面が気持ちいい。
起き上がらないと眠ってしまうな、こりゃあ。
任務中なのに、里に帰らないといけないのに。
カカシさんが待っているから。
待っているのに、カカシさんが。
鉛か鉄のように重くなった体は動かず、これまた重くなった瞼が落ちてきて俺の目は閉じてしまった。



どのくらい、そうしていたのだろう。
俺の体を突付く者がいた。
突付きまわしている。
「おーい」
耳元で声がする。
「起きろー、イルカー」
起きれたら起きているっての。
誰だ、いったい。
薄っすらと瞼を上げると暗闇に、くっきりと映えるものがあった。
超不気味なもの。
それは・・・。
「あ!」
暗闇に浮かぶ肘から先だけ右手と顔。
それだけ。
右手は木の枝を持っている。
それで、俺を突付いていたのだろう。
でも、なんで?
え、どうして?
そこにいたのは顔見知りの悪魔、自称大魔王だった。




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