AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


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その日は仕事を早めに終わらせるつもりが、すっかり遅くなってしまった。
早く終わらせなきゃと思えば思うほど、ミスが多くなって空回りばかりで。
それでも自分の仕事だから、なんとか自分で終わらせた。
夜道を小走りになりながら思った。
全然、早くないじゃん、これじゃあ。
カカシさんちへの道は知っていたから問題ない。
走りながら、ふと気がついた。
「これって、お見舞いだよなあ」
お見舞いなら手ぶらで行くのは駄目じゃないか?
カカシさんは寝ているらしいけど、だからと言っても何を持っていかないのは、ちょっとあれだ。
大人としての常識でお見舞いには何か持って行かなくてはならない。
気が利いたものは思いつかないが。
俺は財布の中身を確認してから、くるりと身を翻らせた。
どっか、近い店を探して何か買おう。
夜でもやっている店、どこかにないかなあ。
今度は俺は店を探しながら走り出した。



やっと発見した店はカカシさんの家から、割と遠かった。
店に入った俺は店内を、ウロウロ。
ええっと・・・。
見舞いって何を持っていったらいいんだ?
定番のフルーツ籠かなあ。
さんざ迷って結局、無難に飲み物にした。
前にカカシさんちで飲ませてもらったのと同じ飲料水があったから。
それを数本購入。
支払いを終えて店を出たところで俺は意外な人物にあった。
夜の闇に溶け込むような髪の色をした、かつての教え子だった。
「サスケ」
ポケットに手を突っ込んで歩いていた教え子は俺の呼びかけに降り向いた。
「・・・・・・イルカ先生」
なんとなく、なんとなくだが顔が憔悴しているような感じがした。
焦っているよう感じもする。
「どうした、こんな夜中に」
歩み寄ると教え子は少しだけ身構えた。
「子供は、もう寝る時間だろ」
まあ、忍者に子供も大人もないけどね。
教え子は顔に不機嫌さを表した。
「いいだろ、放っておいてくれ」
苛立った口調だ。
・・・何かあったんだな。
それが何かは分からないが。
一刻も早くカカシさんのところへ行きたかったが、こんな時間に外にいる可愛い教え子を放っておくことはできない。



拒否する雰囲気を感じ取ったが俺は構わず、教え子の髪をかき混ぜた。
わしゃわしゃと頭を撫で回す。
「放っておけるはずないだろ」
ぽんと肩に手を置く。
「ほら、送ってやるから家へ帰るぞ」
「・・・いやだ」
「夕飯は食べたのか?」
「・・・食べた」
「しっかり眠らないと大きくなれないぞ」
な?と顔を覗き込むと教え子は俺のしつこさに根負けしたようだった。
「・・・分かった」
渋々と頷く。
だけども可愛くないことを言った。
「一人で帰れるからいい」
「何、言ってんだ」
ふっと俺は笑うと手を差し出した。
「帰ろう、サスケ」
俺を見た教え子の目の中に一瞬だけ、寂しさとか悲しさとか、それらが入り混じったものが見えた。
・・・・・・・・・それは俺も経験があるから、よく分かる感情だった。
教え子は黙って俺の手を取る。
俺たちは夜道を歩き出した。



教え子の家に着くと、教え子は頭を下げた。
「・・・ありがとうございました」
ちゃんとお礼が言えるいい子だ。
「いいんだ、あったかくして寝ろよ」
「・・・はい」
そのまま、教え子は家に中に入ろうとしたのだが足を止めて俺を見た。
「イルカ先生、どうして、あんなとこにいたんだ?」
「え、えっと、それは・・・」
なんて説明したらいいだろう。
教え子は俺が片手に持っていた物に目を向けた。
「それを買いに?」
「あ、あのだな、これはカカシさ、先生に」
咄嗟にカカシさんの名が出てしまった。
「カカシ?」
教え子は眉を寄せると「ああ」と頷いた。
こういう仕草は大人っぽい。
「あいつ、術を受けてダウンしていたぜ」
「え?」
「部屋に行ったらベッドに寝ていた」
「あ・・・。ああ、そう・・・なんだ」
言葉じりが窄まる。
教え子が俺をじっと見つめる。
「イルカ先生、カカシの見舞いに行くのか?そんなにあいつと仲が良かったのか?」
多分・・・。
おそらく、その質問は何の気なしにされたものだと思う。
だけど、その質問は俺の心臓を直撃した。
「いや、仲は普通、かな・・・」
答えながら妙に悲しくなってきてしまったが表面には出さなかった。
「それよりも」
俺は教師の顔になった。
「早く寝なさい。風邪を引かないようにな、お休み」
「・・・ああ」
教え子は軽く手を上げてから家に入っていった。



その後、俺は、とぼとぼと道を歩いていた。
暗がりを一人で。
一人でっていうよりも独りで。
さっきの教え子の発言が衝撃的で。
「あいつ、カカシさんのとこにお見舞いに行っていたんだ・・・」
そりゃあ、そうだろ。
カカシさんが上忍師で、特訓も受けていたと聞いているし。
しかもカカシさんとの仲を聞かれて、俺は咄嗟に返事ができなかった。
カカシさんと俺の関係って何だろ。
ただの知り合い?上忍と中忍?
どれも間違いじゃない。
はあっと大きく息が漏れた。
その夜、カカシさんの家の前まで行ったものの会うことはしなかった。
だって、もう遅い時間だったし、来訪には迷惑だと思ったし。
俺は随分、長いことカカシさんの家の前に立っていた。
扉一枚を隔ててカカシさんがいるのは分かったけれど、その扉を開く勇気がなかったのだ。
なんで来たの?とか言われたら、どうしようとか。
自分にあれこれと、いい訳していた。
拒否されることの恐怖が先立った。
情けないけれども、しょうがなかった。
俺は持参したものをカカシさんの家の玄関のドアノブに掛けると、そのまま立ち去ったのだった。




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