AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


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カカシさんの家は所在は知っている。
行ったことがあるから。
行こうと思えば、すぐに行くことはできる。
できるけど・・・。
でも、と俺は躊躇ってしまった。
俺が行くのは変、じゃないだろうか。
カカシさんと知り合って日は浅いと周囲には思われているのに、カカシさんの見舞いなんて行ったら、おかしいと思われるよ、な・・・。
気ばかり焦る。
カカシさんに会いたい。
生きてるのを自分の目で確認したいのだ。
よもや、まさか、死ぬなんてことはないだろうが。
死ぬ。
考えて、ぞっとした。
カカシさんが、この世からいなくなってしまう。
そんなの考えられない。
額や背中に嫌な汗が滲み出る。
体が冷たくなって心臓が早くなって呼吸が不規則になってきた。
落ち着け、俺。
冷静になれ、俺。
すー、はー、と息を吸い吐く。
それを何回か繰り返す。
次第に落ち着いてきたような気がした。
今は祈ることしかできない。
カカシさん、元気になってください。
心から神様に祈った。



誰かがカカシさんの見舞いに行ったらしい、という噂を耳にした。
・・・誰だろう?
やっぱり上忍の誰かだよなあ。
カカシさんはどんな状態なんだろう。
どんな様子なんだろう。
誰が行ったのかは分からないけれど、カカシさんの具合がどんなだったのか聞いてみたい。
どうしたらいいだろ。
俺は考えた。
うーむ・・・。
火影さまに聞く手もあるけれど、カカシさんが里に戻ってくるときに色々とカカシさんのことを聞いたことがあるから何となく聞きにくい。
ちょうどタイミングよく、俺にある仕事が回ってきた。
「イルカー」
同僚が書類の束を、ぽんと俺に差し出してきた。
「これさ、上忍の控え室に行ってきて配ってきてくれない?」
何かのお知らせの紙だった。
「ああ、いいよ」
渡りに舟だ。
これで、堂々と上忍の控え室に行ける。
そんでもって、何とかしてカカシさんの見舞いに行った上忍を突き止めてカカシさんのことを聞き出す。
俺は意気揚々と上忍の控え室に向かったのだった。



上手い具合に知り合いの上忍の人がいた。
俺のアカデミーでの元教え子を指導している上忍師の二人だった。
アスマ先生と紅先生。
俺は意図的に、この二人に書類を渡すようにした。
アスマ先生と紅先生ならカカシさんと同じ上忍師で親しかったみたいだし、カカシさんのお見舞いに行ったかもしれないと踏んだのだ。
「これ、どうぞ」
書類を渡すと二人は礼を言って受け取った。
「あら、ありがと」
「いつもすまんな」
「いえ、これくらい・・・」
微笑んで、二人を見る。
見てから思った。
・・・そういえば、どう訊けばいいんだろう。
いきなり脈絡もなくカカシさんの名前を出したら、俺、ただの不審者っぽくないか?
「えーと、あの・・・」
言いあぐねていると紅先生が察したのか助け舟を出してくれた。
「もしかして、カカシのこと?」
「あ、はい!はい、そうです」
ぶんぶんと首を縦に振る。
勢いよく振りすぎて、首が痛くなった。
そんな俺を見て紅先生は、くすっと笑う。
・・・・・・美人だ。
こんなに間近で見たことがなかったけど、すっごい美人。
余りにも見つめていた為か、紅先生が肩を竦ませた。
「やだ、そんなに見つめられると照れちゃうわ」
「あ、すみません」
「それにカカシに怒られちゃう」
「え・・・」
今、なんて?



「カカシのことだろ?」
アスマ先生がカッコよくタバコを吸いながら言った。
近くの窓を細く開けているので煙が、そこから外に流れ出ている。
紫煙が漂っていく様を目で追っていたらアスマ先生が話してくれた。
「あいつは術を喰らって睡眠中だ。何日か起きれねえし、起きても動けないだろうよ」
「そんなにひどいんですか・・・」
すっと顔から血の気が引いていくのが分かった。
「大丈夫よ」
俺の顔色を見て紅先生が元気付けるように俺の手を軽く叩いた。
「そんなに心配しないでカカシは、それほど柔じゃないから」
「そうだ」
隣でアスマ先生も大きく頷いた。
「あれでも一流の忍者だ。術は喰らったが回復は早ええだろうよ」
「そうそう」
紅先生も笑顔で頷く。
「でも・・・」
カカシさん・・・。
何度目か分からないけれど、カカシさんが心配で心配で指先が冷たくなっていく。
動機が早くなる。
落ち着こうと自分を宥めてみたが上手くいかなくて。
俺は、ぎゅっと唇と噛みしめた。
早く、早くこの場から去らないとと思うのだが足が動かない。
そうこうしているとアスマ先生と紅先生は二人で顔を見合わせてから、俺に視線を投げかけた。
「そんなに心配なら直接、カカシの家に行って来たらどうだ」
「どうせ寝ていると思うけどね」
「カカシの家は知っているんだろう?」
辛うじて頷く。
「そうよ、それがいいわ」
紅先生が音もなく、すっと立ち上がり俺の前に立つ。
背は俺より低かったが視線は俺を捕らえている。
「こんな泣きそうな顔をして」
途中まで伸ばしていた手を引っ込めて首を傾げて俺を見る。
大人の女性の瞳だった。
「以前にカカシの言っていたことが、やっと解ったわ」
「え、カカシさんの言っていたって?」
「謎が解けたってことよ」
何だろう、と考える前に紅先生に背中を押された。
「ほら、早くお行きなさいな、カカシのところへ」
それから・・・。
それから俺は仕事が終わってから、すぐにカカシさんの家に向かったのだった。




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