AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


over100−32



「俺は枕が代わると寝れない性質なんです」
カカシさんの家に連れてこられて、なんでかカカシさんちのベッドに腰掛けて俺は訴えた。
眠い目を擦りながら。
「眠るんなら自分の家の布団で寝たいです」
ベッドに腰掛けているだけで眠さが怒涛のように襲ってくる。
その眠気と戦うのに俺は必死だった。
一瞬でも気を抜くと目が閉じてしまう。
そんでもって目の前の、明らかにフカフカで寝心地良さそうなベッドの上に倒れこみそうになるのを我慢していた。
「なに言っているんです」
薄く開けた目の前でカカシさんが腰に手を当てて仁王立ちになって俺を見下ろしている。
「今すぐにでも眠りそうなのに」
「だって枕が・・・」
ベッドに腰掛けた体が、ふらっと揺れる。
・・・・・・・・・いかんいかん。
俺は頭を、ぶんぶんと横に振った。
意識がなくなる、このままじゃあ・・・。
「枕なんて俺の家のでもいいでしょ」
カカシさんが枕をこれ見よがしに、ぽんぽんと叩いた。
うわ、柔らかそう。
あの上に頭を乗せて寝たら、気持ちよく寝れそうな気がする・・・・・・。
気が遠くなりそうな感覚に陥りながら枕を眺める。
まくら、まくら、まくら・・・。
意識が朦朧としてきた。
その隙を狙ってか、カカシさんは俺からベストを剥ぎ、額宛をとり、体から装備を外して、実に寝やすい身軽な服装にしてくれていた。
「いいじゃないの、俺んちで寝なさいよ」
カカシさんの優しい穏やかな声に、くらくらした。
子守唄みたいに聞こえる。
眠りに引き込まれる。
「俺んちの枕でだって気持ちよく寝られるよ〜。だいたい、イルカ先生、入院していたときは病院の枕で寝ていたじゃないの」
・・・・・・そう言われれば、そうかも。
眠くて判断力が鈍ってきている。
カカシさんの言うことが総て正しいような気がしてきた。
「うちのベッドはシングルより大きいから男二人が寝ても狭くはないだろうし、起きたら俺んちの風呂に入って、あったまったらいいよ」
うまい飯も作ってあげるなんて、甘美な誘惑をしてくる。
ああ、いいなあ、そういうの。
誰かが自分のために色々とやってくれるの。
「ね、だから」
あったかいものが俺の体に触れた。
カカシさんが俺の体に腕を回してきたのだ。
「ここで寝ていきなさい。イルカ先生、疲れすぎですよ」
・・・・・・そんなことはない、俺以上に疲れている人はたくさんいる。
カカシさんだって、その一人。
里のために俺も、もっと頑張らないと。
もっともっと俺にだって出来ることがあるはずだ。
「イルカ先生は頑張っていますよ、限界以上に」
俺も、けっこう体に来ていますけどイルカ先生と寝ると元気になると思うんです、とカカシさんの声。
何かが軽く頬を掠めた、ついで唇にも。
その正体を見極める前に俺の瞼は既に閉じてしまっていた。
首が、がくんとなる。
それからカカシさんに、そっと体を押されるがままベッドに倒れこんで、その後の記憶はない。
それくらい深い眠りに落ちていた。



ぱちっと目を開けると辺りが暗かった。
ぼんやりと見回すと見慣れない光景が目に入る。
見慣れない本棚に見慣れない天井とか。
・・・ここって?
瞬きをする。
・・・俺の家じゃない?
だんだんと記憶が戻ってきた。
そうだ、ここは!
思い出した。
カカシさんの家だった。
俺、カカシさんの家に連れて来られて眠っちゃったんだ。
熟睡したのか、頭はすっきりしている。
ゆっくりとベッドから起き上がった。
どんくらい寝たんだろ。
時間と日にちが分からない。
辺りが暗いってことは・・・。
俺は眠る前のことを思い出していた。
ここに、カカシさんの家に来たのは夕方くらいだったような気がする。
それから辺りが暗いってことは夜だから眠ったのは数時間くらいかな。
きょろっと部屋を見回す。
電気は点いていないし、それに部屋の持ち主の姿がない。
「カカシさん?」
呼んでみた。
すると微かに返事があった。
「はーい、ちょっと待っててねー」
ぱたぱたと音がして、どこかの扉が開く音がして部屋の電気が点灯した。
眩しくて目を細めているとカカシさんが現れた。
ほかほかと体から湯気が上っている。
「ごめんね、お風呂に入っていたから」
カカシさんからは、石鹸のいい匂いがした。



「お風呂、お借りしました」
あと着替えも、と俺は付け足した。
俺の体からは、ほかほかと湯気が立ち上り体からはカカシさんと同じ石鹸の匂いがしている。
着ていた服はカカシさんに洗われて、今はカカシさんの服を借りていた。
・・・しかも、なぜかパジャマを。
妙に可愛らしい淡い色合いのパジャマを。
自分で言うのも難だけど、似合わねー。
「あのー、カカシさん」
気恥ずかしくなって俺は言った。
「服を貸してくれるのは有り難いんですが」
いかんせん、カカシさんが忍服なのに、なんで俺はパジャマ?
「普通の服をお借りしたいです」
「普通の服?」
カカシさんが小首を傾げる。
「その」
俺はカカシさんを指差した。
「カカシさんと同じ服を」
忍服がいい、俺も。
するとカカシさんは「ああ!」と頷いた。
分かってくれたみたい。
ほっとしているとカカシさんが、いそいそとタンスから服を取り出していた。
てっきり忍服かと思ったら、カカシさんが着替えを始めた。
「じゃーん!」
着替えてから俺に見せびらかすように服を披露してくれた。
「イルカ先生とお揃いのパジャマです!ほら、同じでしょ」 ・・・・・・・・・なんと言っていいのか。
それは俺が求める『同じ服』と違う、かなり。
それと疑問。
何ゆえ、カカシさんの家にお揃いのパジャマがあるのか?
可愛いパジャマもカカシさんが着ると似合うから不思議だ。
「この日のために買っておいた甲斐がありました」
とっても嬉しそう。
「きっとイルカ先生が俺の家に泊まりに来てくれると思っていましたから」
まー・・・、いいか。
考えることを止めた俺は、その後、カカシさんの作ってくれた飯を平らげた。
カカシさんて、料理が上手くてびっくり。
そして、更にびっくり。
「イルカ先生、丸一日以上寝てましたよ〜」
「は?」
「昨日の夕方から今日の夜まで爆睡」
そりゃあ、もう、ぐっすりと、と聞かされる。
「あ、アカデミーやら受付所には俺から連絡しておきましたから」
安心してくださいね、って言われて「はあ」と頷き、お礼を述べた。
だけど・・・。
一日以上も寝ていたなんて。
寝すぎだろ、俺!
自分にちょっと、がっくりときてしまった。





over100−31
over100−33





text top
top