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それから・・・。
それから別に、どうということもなく。
って、あれだ。
口づけをして、我に返ったらカカシさんの顔が見れなくなってしまっていた。
なんたって恥かしいの一言に尽きる。
カカシさんと口づけ、キスをしてしまった。
ドキドキする胸が収まらない。
ドキドキしっぱなしだ。
これはいかん!と思うが顔が上げられない。
口づけを交わした後、カカシさんの肩口に顔を押し付けたままだ。
ど、どうしよう。
キスした後って、どうしたらいいんだ・・・。
俺がドツボに嵌っているとカカシの肩が少し揺らめいた。
くっくっくっ、と声が聞こえる。
どうやら笑っているようだった。
「イルカ先生って」
見上げるとカカシさんが出ている片目に涙を薄っすらと溜めている。
すっごいおかしーって感じで。
「イルカ先生って、ほんとっうにかわいいですね」
「なんですか、それ」
少しだけ、むっとして答えるとカカシさんは、ますます笑う。
笑いが止まらないという風に。
男に向って、かわいいはないだろ、かわいいは。
抗議するとカカシさんは俺を腕の中に、ぎゅーと抱きしめながら嬉しそうに「かわいい、かわいい」を繰り返していた。
俺は、なんていうか・・・。
かわいくないとは自分では分かっているんだけれどもカカシさんに何度も言われると、だんだん、こう、ふわふわっとしてきて変な気持ちになっていったのだった。
ともかく、カカシさんに元気付けられたのは確かだ。
失ってしまったものは多いけど、残されているものも多い。
忘れるわけじゃないけれど、残った者は生きていかなければならない。
里を建て直すために色々と俺は奔走した。
奔走していたのは俺だけではなく、里の忍はもちろん、里の人も頑張っていた。
全力で皆、木の葉の里を復興させようと思っていたんだ。
かつての木の葉の里は戻ってこないにしても、新しい木の葉の里を作っていることはできるから。
志半ばで木の葉の里から去らざるを得ない人たちも、そう思っているはずだ。
それが生きている者の務めだと思う。
生きている者のエゴかもしれないが。
俺もアカデミーの授業の傍ら、受付はもちろんのこと任務に出たり、何やかやと暇さえあれば動いていた。
中忍の俺では出来ることが少ないのは分かっていたが里のために何かしたかった。
小さなことでも何か役に立てたらと。
それが亡くなった三代目の意志でもあっただろうから。
三代目・・・。
亡くなってから、数ヶ月たち、ようやく俺は、その名を心の中で呟いた。
久しぶりに受付所の仕事だった。
昨日まで任務で帰ってきて、すぐに受付に入って明日の朝まで勤務。
正直、欠伸が止まらない。
受け付けに人が切れると、すぐに欠伸が出てしまう。
くわーっと欠伸をして、伸びをすると隣の同僚も同じ事をしていたので笑ってしまった。
「お疲れ〜」
「うん、お疲れ〜」
目と目で通じ合う。
で、苦笑した。
「目の下、隈が出来ているぞ、イルカ」
「そんなのお互い様だろ」
同僚の顔も疲労の色が濃い。
「もう帰れよ。夜は俺だけで充分だ」
「そっか?」
「そうそう、休める時に休んでおけって」
帰るように促すと同僚は、ふらっと立ち上がった。
「じゃ、悪いけど帰って寝るわ」
「そうしろ」
「ああ」
瞼が半分、閉じているので家に着いたら、そのままベッドに倒れこんで寝そうだな。
俺も最近は、そんな感じだけどね・・・。
家に帰ったら寝るだけ。
忙しいから仕方がない。
一人になると急激に眠気が襲ってきた。
「ふわーあ」と欠伸が止まらない。
あーあ、誰か来ないかな。
喋らないと眠ってしまいそうだ・・・。
受付で人が来ない間、溜まった事務処理等の仕事をしていて書類に目を通してペンを走らせた。
でも、眠くて眠くて集中力が切れ気味だ。
眠い眠い眠い眠い。
さっき、あんなにコーヒーを何杯も飲んだのに。
カフェインが、ちっとも効かない。
元々、忍者は毒に対して耐性を作っているからカフェインくらいじゃ駄目か。
早く交代の時間にならないかと時計を何回も見てしまう。
なんか今日に限って、特にゆっくり進んでいるように見えるなあ。
こんな時に限って誰も来やしない。
まー、誰も来ないのはいいことなんだけど。
疲れている人は家に帰って休んでいてほしい。
少しでも疲れがとれればいい。
俺も受付の仕事が終わったら即効、帰って寝よう・・・。
だから今は頑張ろう。
なんとか、かんとか気持ちを奮い立たせて仕事をしていたのだけれど夜明け前の、ほんの一時。
書類に字を書こうとしてペンを持ったまま、俺は目を閉じてしまった。
瞬きのつもりだったんだけど、目を閉じたら開けられなかった。
意識が、ほんの一瞬、飛んでしまっていた。
「イルカ先生」
耳元で優しい声がする。
「大丈夫ですか?」
心配そうな声。
「起きてください」
聞き覚えがある。
肩を、ゆっくりと揺すられて、はっとして目を開けた。
やばい、眠ってしまっていた・・・。
俺の意思に逆らって、また閉じようとする瞼を必死に開けると、カカシさんがいた。
すっごい近い位置に。
「カカシ、さん・・・」
「イルカ先生、疲れていますね」
気遣われてしまった。
「いえいえ、大丈夫です。平気です」
空元気を発揮して、慌ててカカシさんから報告書を受け取ってチェックする。
目を通して問題ない事を確認してチェック完了。
俺は眠っていたのを誤魔化すように、ははは、と笑った。
「すみません、つい、その、あの〜」
みんな疲れているのに、俺だけ疲れていたからなんていい訳にならないよなあ。
目の前のカカシさんだって、顔が疲れている。
服だって汚れていて、きっと過酷な任務だったに違いない。
カカシさんは、じっと俺を見たまま動かない。
怖い顔して俺を見ている。
・・・これは怒っている、のか?
すると、ちょうど、そこへ受付の交代の者が来た。
「イルカー、お疲れー。交代だー」
その声を聞くや否や、カカシさんは、がっと俺の腕を掴んだ。
「帰りましょう!」
「ええっ」
「帰って寝ないと俺もイルカ先生も!」
そりゃあ、そうだけど。
帰って寝たいよ、今すぐにでも。
受付の仕事の引継ぎも、そこそこに俺はカカシさんの家に連れ帰られてしまった。
俺の家はカカシさんの家じゃないのに〜。
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