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医師の説明を聞き終わった、はたけカカシは俺に言った。
「だそうですよ、よかったですね!」
にこにこしている。
だ、け、ど!
俺は言いたかった。
あんた、関係ないだろう!
どうして親族みたいな顔して、ここにいるんだ?
言いたかったけど声が出ないので目で睨んだだけに留まったけど。
「頑張って早く体を治しましょうね。俺も手伝いますから」
母親みたいなことを言っている。
そりゃあ、頑張るけど手伝いってなんだ?
何を手伝うつもりなんだろ。
そんで、もっと驚愕したのが次の言葉。
「ね?イルカさん」
とっても親しげに俺の名前を呼んだのだ。
なんで俺の名前を?
どうして知っているんだ!
しかも下の名前で、さん付けって・・・。
一瞬、パニックに陥った俺だけど考えてみたら、この病室は個室でしかも入り口に病人の名前が書いてあるんだっけ。
だったら、はたけカカシが俺の名前を知ることは容易だ。
なんの不思議もない。
不思議はないのだが、なんで下の名前をわざわざ呼んでだろ。
親しくないんだから呼ぶんだったら名字じゃないのかなあ。
素朴な疑問が俺の頭に浮ぶ。
イルカさん、なんて呼ばれると、はたけカカシと俺の距離が一気に縮んだような気がする。
昔からの知り合いみたい。
・・・あくまで、気がするってだけ、なんだけどね。
次の日。
点滴はしている俺だったが徐々に口から食べ物を摂取してよいとのことで、その訓練ってかリハビリみたいなものが始まった。
喉に怪我しているので固形物は駄目だけど液体はいいんだって。
で、ずっと点滴して食べていなかったので胃を慣らすために、まずは白湯から。
簡単に言えば、白湯って湯ってことだ。
次は薄い重湯になるらしい。
早く米の飯とかラーメンとか食べたいなあと思ったけど無理と焦りは禁物で。
動けない俺はベッドを上げてもらって、それに寄り掛かりながら看護師さんに食事の介助をしてもらって白湯を口にしていた。
ベッドは脇の方にハンドルが付いていて、ぐるぐる回すと頭の方が上がったり下がったりする優れもの。
便利なベッドだった。
で、看護師さんがスプーンで掬ったくれた白湯を少量ずつ、ゆっくりと俺の口に入れてくれる。
白湯を一匙、飲み終わったところに、はたけカカシが訪れた。
「あ、起き上がれるようになったんですね!」
すっごく嬉しそう。
看護師さんも、はたけカカシに対して打ち解けたように「そうなんです、今日から少しずつ慣らしていくんですよ」とか話している。
いつの間に・・・。
ちなみに看護師さんは女性で小柄で可愛い人。
こんな人に『あーん』して食べさせてもらえるなんて不謹慎だが、こんな時じゃないと俺の人生で、もうないと思う。
ちょっと嬉しかった。
なのに、はたけカカシは結果的に、それをぶち壊した。
「もしよければ俺がイルカさんに食べさせましょうか?」
余計なことを言ってくれる。
すると看護師さんは食べ方っていうか飲ませ方を簡単に説明して「お友達の方がいいですよね」なんて言って行ってしまった。
ああ・・・。
看護師さん、カムバックー!と俺は心の中で叫んでみたが届くことはない。
それに、はたけカカシと俺は友達でもなんでもないんです、と誤解も解きたかった。
「さてと」
はたけカカシは当然のように看護師さんが座っていた場所に座って、スプーンを取り上げた。
皿の中には白湯。
だいぶ冷めて温くなっていたけど。
「続きをしましょうか」
慎重にスプーンに白湯を掬って俺の口元に持ってきた。
「はい、イルカさん。あーん、して」
あーん、と言われても・・・。
はっきり言って男に『あーん』されるのなんて嫌だった。
さっきの可愛い看護師さんがいい。
というよりも女の人がいい・・・。
俺が口を閉じて抵抗していると、はたけカカシが「もう、いらないの?」と顔を覗き込んできた。
額に手を当てられたりする。
その時、間近で見て分かったんだけど、はたけカカシはだいぶ格好いい人間だった。
なんというか美形ってやつ?
額宛は、そのままに顔の覆面を下ろしていただけで顔の造りが秀でていると、よーく分かる。
羨ましい。
しかしだ、いくら美形でも男に『あーん』してもらうのは、すごく嫌なのに変わりはない。
といっても俺は自力で体が動かせないしなあ。
無理も焦りも禁物だけど、我が侭も厳禁だ。
俺は渋々、口を開けた。
「はい、どうぞ」
嬉しそうに、はたけカカシは俺の口元にスプーンを持ってきて、口の中に白湯を流し込んできた。
ゆっくり少しずつではなく、一気に大量に。
なんで?
ってか看護師さんの説明を聞いていなかったのか!
「げほっ、ごほっごほっ」
俺は咽て吐いた、白湯を。
大量に口に入った白湯は喉を通らず、体も受け付けなかった。
「げほ・・・」
口から逆流した白湯は、盛大に寝間着を濡らした。
「ああっ、イルカさん!」
はたけカカシは、すごく慌てていた。
「すみません、ごめんなさい。ちょっと緊張しちゃって」
傍にあったタオルで口元や喉元を拭いてくる。
濡れた寝間着もタオルで、ぽんぽんと叩きながら水分を取っていく。
「苦しい?イルカさん、ごめんね」
本当に済まなさそうに、はたけカカシは謝ってきた。
「ああ、パジャマが濡れちゃいましたね。すみません・・・」
有名な上忍が子どもみたいに途方にくれている。
「どうしよう、パジャマ・・・」
寝れた寝間着は冷たくなってきている。
「着替えないと風邪を引きますよね」
怪我して抵抗力も落ちているのに風邪を引いたら、しゃれにならない。
俺は視線で着替えのある棚を、はたけカカシに教えた。
声は出ないので口を動かす。
あそこに着替えがあるって。
「ああ、これですね」
病院から支給されているので、総て同じデザインの寝間着だった。
はたけカカシは寝間着の上だけ取り出して俺の元へ来る。
「じゃあ、着替えましょうか」
・・・え?
はたけカカシは俺の意思に構わずに寝間着のボタンを外し始めた。
・・・・・・ちょっと。
着替えは病院の人に任せるべきじゃないのか?
俺も包帯だらけの体を人に見せたくないし。
動けない体で男に服を脱がされる・・・。
医療行為の一環と頭では理解していても理性が拒否がした。
意識のある状態で男に服を脱がされるなんて俺の人生で初めての経験だった。
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