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★人の死についての描写あり



俺が柄にもなく悩んでいる間に中忍試験は順調に進んでいった。
気に掛けている子供たちが一次試験を無事に合格した。
ものすごく嬉しかった。
本当に良かったと心から思って祝福した。
だけど、カカシ先生はちょっと不満だったらしい。
一次試験を合格したということでカカシ先生と二人でささやかに祝杯を挙げた時に言われた。
「イルカ先生、あの子たちのこと贔屓してませんか」
思いもよらぬことを指摘された。
「贔屓?」
そんなこと考えてもいなかったけど・・・。
他の人には、そんな風に見えていたのか。
「だって巻物に潜んでいて、最初にあの子たちに合格祝いを言ったでしょ」
「それはまあ・・・」
歯切れが悪くなる。
どうしたって、それはいい訳できないことだから。
合格するんだったら、あの子たちに一番に「おめでとう」を言いたかった気持ちは否定できない。
それをカカシ先生には見透かされていた。
・・・ずるいっちゃ、ずるいよな俺。
今はカカシ先生が担当しているんだから、きっとカカシ先生が一番最初に喜んで祝ってあげたかったに決っている。
カカシ先生と子供たちとの絆を踏みにじるようなことをしてしまったのかもしれない。
黙ってしまった俺の肩をカカシ先生は、ぽんぽんと叩いた。
「まあまあ、そんなに考え込まないでください」
「でも・・・」
「別に責めている訳じゃないですから」
じゃあ、なんで?
贔屓なんて言い出したんだろ。
カカシ先生の顔を見ると苦笑いをされた。
「まあ、あれです」
「あれって?」
「要するに嫉妬です」
「嫉妬?」
嫉妬って誰が誰に?
本当に分からなくて目を瞬かせているとカカシ先生が俺の肩を叩いた手を、そのままに俺の耳元で囁いた。
「俺のことも、もっと構ってほしいっていう意思表示です」
「構って・・・」
「そりゃあね、だって」
好きな人には、たくさん構われたいでしょって言った声は甘く聞こえた。



それから、またカカシ先生も俺も忙しかった。
とにかく忙しかった。
まだまだ中忍試験は続行されていたし。
俺も試験官の一人で拷問部隊に所属する部署は違うが拷問黒装束で強面の知り合いにくっ付いて中忍試験が始まる前の会場までは、いることができた。
簡単に言うと俺は中忍試験では裏方でサポート役で、中忍試験をしている一方で日常の業務もあるしで仕事が山積みだった。
中忍試験をしているからと言ってアカデミーは休みってわけじゃなし。
二次試験を受けている子供たちのことが気に掛かってはいたが・・・。
俺がいるよりも子供たちにはカカシ先生がいる方が何より心強いに決っている。
それは今は身に沁みた。
中忍試験での一次試験で巻物から出て子供たちに会ったとき思ったから。
この子たちの力を本当に分かっているのは俺ではなくカカシ先生だと。



中忍試験が進むに連れて不穏が動きが起きてきているのを肌で感じた。
俺が直接知ることはなかったけれど、様様な噂や憶測が耳に飛び込んできた。
背筋がぞっとするような、絶対に起きてほしくないようなことが現実に起きているだと痛感したのは動かなくなった仲間の体を目の当たりにした時だった。
目の前で横たわる仲間を見て俺は信じられなかった。
「・・・ハヤテ」
名前を呼んでみるが返事はない。
体に触れてみたら冷たい。
横にいた中忍試験の時にくっ付いていった強面の知り合いの人が簡潔に仲間の死について説明してくれたけど頭に入ってこなかった。
仲間は、ひっそりと死んでしまった。
一人で。
俺は仲間を埋葬するために召集されていた。
「ハヤテ」
もう一回、名を呼んでみたが返事はなかった。
「イルカ・・・」
横にいた強面の知り合いの人が俺の肩に手を置いた。
「ハヤテ」
諦め切れなくて、もう一回、呼んでみる。
階級は違えど、話をよくした仲だった。
「ハヤテ」
もう一回。
「ハヤテ」
もう一回。
「ハヤ・・・」
「もうやめろ、イルカ」
静かな声で遮られた。
「死んでいるんだ」
その声は落ち着いているが、ひどく悲しく聞こえた。
「もう、やつは戻ってこない。手厚く葬ってやろう」
現実的な答えだった。
「イビキさん・・・」
肩に手を置かれたまま、隣を見上げるといつもながらの無表情だったけれど。
やっぱり、その顔は悲しく見えた。



それから、立て続けに色々なことが起きて。
俺は大切な人を失った。
中忍試験は途中で中断されてしまったし。
胸の中に、ぽっかり穴が空いて埋まらない。
カカシ先生とも全く会っていなかった。
会うことができなかった。
ようやく会えたのは何もかも終わった後だった。
滅多に着る機会のない、着たいとも思わない喪服を着ている俺を見てカカシ先生は少しだけ笑った。
何も言わず笑っただけ。
二人きりになるとカカシ先生は俺を抱きしめてくれた。
黙ったまま、ただ抱きしめてくれて。
抱き合っているだけで何もかも伝わるような気がした。
気持ちが緩んでいたのか、砕けていたのか、よく分からないけれど。
その時に呼んでしまった、カカシ先生のことを・・・。
「カカシさん」って。
そう呼びたかくなったのか、自然と口から出ていて。
より自分との強い繋がりを求めていたかもしれない。
「カカシさん」
名を呼ぶと抱きしめてくれる腕に力が入った。
「カカシさん、カカシさん・・・」
他の言葉が出てこない。
壊れた玩具のように俺は呼び続けた、カカシさん、と。
ぎゅーっと俺を全身で抱きしめてくれたカカシさんは言った。
「俺はここにいますよ、どこにも行きません」
ずっとイルカ先生の傍にいます。
そう聞こえた。





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