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人には、それぞれ考えがある。
人の数だけ、様々な意見が。
それを解っていながら激高して、カカシ先生と口論してしまった。
つい、かーっとなってしまったんだ。
カカシ先生が、あんなこと言うから・・・。
頭に残って消えない、あの言葉。
『今は私の部下です』って。
衝撃がきた。
頭を殴られたような、そんな感じ。
完全に打ちのめされた。
今現在、子供たちを指導し、身近で見ているのはカカシ先生で。
俺はアカデミーでの元担任で、あの子たちは元教え子で。
それが真実。
俺のは、ただのエゴだ。
俺こそ子供みたいな我が侭を言っている。
俺が子供たちの可能性を潰そうとしているのか。
溜め息が出た。
すごく惨めだった。
そして悲しくて寂しくなった。
カカシ先生と顔を会わせなって一週間。
幸いにもカカシ先生の任務と俺の受付の時間帯とずれているのか、顔を会わせることはなかった。
ほっとする俺。
会っても気まずいだけだしな・・・。
会っても何を話していいか分からないし・・・。
会ってもカカシ先生、きっと怒っていると思うし・・・。
会っても、とそこまで考えて、はっとして。
俺、もしかしてカカシ先生も会いたいのか。
いやいやいやいや!
俺は頭を、ぶるぶると振った。
あんな口論しておいて、会いたいなんて虫が良すぎる。
だいたいにして、まだ謝ってもいない。
謝る・・・。
といっても俺は悪いことをしたとは思っていない。
意見は意見だし、あの時はあれが最良だと思ったのは確かだ。
もっと冷静に言えば良かったと後悔しているが。
カカシ先生は、どう思っているだろ。
考えると、途端に不安になった。
やっぱり怒っているだろうなあ。
仕事の合い間に考えてしまう。
好きって言ってくれたけど、もう俺のことなんて、どーでもよくなっていたりして・・・。
後ろ向きな考えしか出てこない。
そして後ろ向きなことを考えれば考えるほど、胸が苦しくなっていく。
カカシ先生、どうしているんだろ。
会いたいのか、会いたくないのか。
自分でも自分の気持ちが判断できない。
ああ、そっか。
不意に分かった。
カカシ先生の会うのが怖いんだ、俺。
正確に言うとカカシ先生に会って拒絶されるのが怖い。
俺って臆病だなあ。
乾いた笑いが出た。
てくてくと俺は夜道を歩いていた。
仕事が終わって家に帰っている途中・・・。
悶々とマイナス思考で考えていたんだけど。
結論が出た。
カカシ先生に会ってみよう。
方向を自分の家からカカシ先生の家に変えた。
カカシ先生の家に向って、てくてくと歩いているが足が重い。
カカシ先生に会うのは怖いけど、このままじゃ嫌だった。
俺が嫌だった。
怒っているのなら、それでもいいし。
嫌われたのなら、それでもいい。
はっきりさせたい。
カカシ先生に引導を渡してもらいたいのだ。
そしたら自分の気持ちに区切りが付くだろうし、元々、カカシ先生とは関わりあってはいけないと思っていたんだから、ちょうどいい。
離れる切っ掛けになる。
だから今、一度カカシ先生に会いたかった。
何もかも終わらせるためにも。
カカシ先生の家には、あっさりと着いた。
来たことあるから。
最近も来たよな、ここ。
カカシ先生の玄関の前で俺は、ぼんやりと思った。
疲れた俺を連れてきて飯を食べさせてくれたり風呂に入れてくれたりして世話を焼かれた。
でも、それはとても俺を癒してくれた。
いい思い出だ。
さて、と俺はカカシ先生の玄関の前に立つと俺は大きく息を吸い込んだ。
すーはー。
心臓がドキドキとして喉が渇いていく。
緊張している時の症状だ。
手に汗も出てきた。
手を握り、グーの形にする。
そしてカカシ先生の家の玄関の扉をノックしようとした時だった。
バタン!
玄関の扉が勢いよく開いて伸びてきた手に俺は中に引きずり込まれた。
「遅いじゃないですか、イルカ先生」
俺を引きずり込んだのはカカシ先生だった。
・・・まあ、カカシ先生の家なのでカカシ先生がいて当たり前なんだけどね。
カカシ先生は不機嫌そうに俺を見ている。
やっぱり怒っているだ・・・。
暗い気もちが押し寄せてきた。
怒っていて当然だよなあ。
自然、俺は俯いてしまった。
「すみません」
謝る声は小さくなる。
謝らないと決めていたはずなのに。
本人を目の前にすると口から出てしまった。
「ごめんなさい」
カカシ先生を直視はできなかった。
「ま、いいですけどね」
軽い調子で言ったカカシ先生は意外なことに俺を、ぎゅっと抱きしめてきた。
「イルカ先生を待ちくたびれて、しょうがなかったですよ」
抱きしめながら俺に頬擦りをしてくるので、くすぐったい。
「イルカ先生、ぜんぜん来てくれないから俺から出向こうと思っていたところでした」
・・・・・・・・・ん?
「でも俺からイルカ先生に接触したりイルカ先生の家に出向くと目立つかな〜って。だからイルカ先生が来るまで我慢していたんです」
なんか、あれだ。
カカシ先生の言っていることは俺も思っていたのとは違うような気がする。
「もー、俺、寂しくて寂しくて寂しくて」
「怒ってないんですか?」
不可解なカカシ先生の態度に思わず言葉が出ていた。
「え、なんで?」
逆にカカシ先生に問われる。
「なんでって、それはその・・・」
口篭ってしまう。
口論したから怒っているんじゃないかと思って、とごにょごにょと口の中で呟くとカカシ先生が「ああ、そのことですか」と事も無げに言った。
「別に何とも思っていませんよ。だって俺とイルカ先生とじゃ、あいつらと接してきた時間が違うし意見が同じだったら、その方がおかしいでしょ」
「それは、まあ」
俺は苦い顔をする。
対して、カカシ先生は笑顔だった。
「イルカ先生と意見を戦わせることが出来て俺は良かったと思っていますよ」
その一言で、どっと肩の力が抜けた。
ふーっと大きな息が漏れる。
どっと安心してしまったと同時に体の力が抜けたのでカカシ先生に凭れかかってしまった。
俺が凭れかかってもカカシ先生は、びくともしない。
「イルカ先生」
呼ばれて顔を上げるとカカシ先生の顔が、すぐ近くに。
カカシ先生は、やけに優しい表情だった。
そのままカカシ先生の顔が近づいてきて、何かが俺の唇に触れる。
感触は柔らかい。
数秒か、数分か触れ合って。
それがキスだと気がついたのは随分、後になってからだった。
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