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その次の日か、次の次の日か忘れたけれど俺は外で、はたけ上忍に会った。
初対面という形で。
ちょうど七班の任務中に俺が通りかかったのだ。
七班というのは、はたけ上忍が指導しているスリーマンセルを指す。
俺は火影さまのお遣いの途中だった。
三人は、はたけ上忍の指揮下で黙々と任務をこなしている。
・・・アカデミーを卒業して立派になったなあと俺は目頭が熱くなった。
三人とも立派な下忍、将来はきっと里を背負って立つ忍になってくれるだろう。
成長した三人の姿が目に浮ぶ。
そんなことを考えながら立ち止まって、ずっと子供たちの姿を見ていたのが悪かったのか見つけられてしまった。
「あ、イルカ先生だってば〜」
俺を見つけた子供が一番に駆け寄ってきた。
駆け寄ってきて俺の腰に、がっちり抱きつく。
「あ、こら!」
俺は慌てる。
「今、任務中だろーが!離れなさい」
あんまり、くっ付いていると、はたけ上忍が不愉快に思うだろう。
先日、そんなようなこと言っていたし。
子供を離そうと必死になっていると女の子も抱きついてきた。
「イルカ先生ー!どうしたの?」
何やら、とっても嬉しそうに。
そんな嬉しそうな顔をされたら、無理に引き剥がせなくなる。
「会えてうれしー!」
って俺も、とっても嬉しいよ・・・。
いつもは無口で気難しい子も寄ってきて俺の傍に立つ。
抱きつくようなことはしてこないから黙って頭を撫でると嫌がらないで、されるがまま。
あ、なんか可愛いなあ。
ほくほくとした、あったかい気持ちになってしまう。
子供たちはアカデミーを卒業して久しぶりに俺に会ったことで嬉しかったようだった。
そりゃあ会えて、俺もとってもとっても嬉しいけど。
でも、今は。
「こらこら、任務中だろ。はたけ上忍に怒られるぞ」
そう、俺の所為で子供たちが怒られたら申し訳ない。
せっかく頑張っている子供たちなのに。
「ほら、早く任務に戻りなさい」
例え、任務のランクが低くても任務は任務。
ちゃんと遂行しないと。
俺が子供たちの言い聞かせていると、はたけ上忍がいつの間にか俺の前にいた。
ずばり真正面。
ポケットの手を入れて片目を細めて俺を見ている。
検分しているような目つき。
かなり威圧的だ。
・・・俺が知っている、はたけ上忍じゃない。
無表情の、はたけ上忍は迫力があった。
はっきり言って怖い。
はたけ上忍の迫力に押されたのか、子供たちは俺から自主的に離れた。
これが上忍の威厳なのかなあ。
俺は、はたけ上忍に頭を下げた。
「お騒がせして申し訳ありません」
まずは詫びた。
「任務の邪魔をしてしまってすみません」
それから、こういう場合は俺の方から名乗らないといけないよなあ。
「あの、オ・・・」
俺、と言いかけて言い直した。
「私は、うみのイルカと申します。アカデミーで、この子たちの担任をしておりました」
はたけ上忍は何も言わない。
怒っている、のかな?
おそるおそる、ちょっとだけ頭を上げるとはたけ上忍が俺を見下ろしていた。
う・・・。
怖い顔だ。
やばいぞ、これは、と思っていたら、はたけ上忍は相好を崩した。
「あなたがイルカ先生ですか」
思ったよりも柔らかい声で、緊張していた力んでいた肩の力が抜けた。
完全に頭を上げると、はたけ上忍が微笑んで俺を見ていた。
よかった、怒ってないみたい。
「任務なら、ちょうど休憩にしようと思っていたので気にしないください」
優しい言葉も掛けてくれた。
「イルカ先生のお噂はかねがね伺っていますよ、子供たちから」
「そ、そうですか・・・」
子供たちは何を、はたけ上忍に言っているんだろう。
今度は、そっちが心配になった。
「俺は、はたけカカシです」
よろしく、と、はたけ上忍が手を出してきた。
上忍から手を出されたのでは拒否できない。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
差し出された手に、そっと重ねるように手を置くと力強く握られた。
「あ、それから。どうぞ、俺のことは『カカシ先生』と呼んでください」
「いえ、それは・・・」
この前も駄目だって言ったじゃないか。
「子供たちも『カカシ先生』と呼んでくれているので。イルカ先生も、そう呼んでくれたら嬉しいなあ」
「・・・しかし」
「いいでしょう?」
よくない。
「ね、イルカ先生。カカシ先生って呼んでくださいよ」
押しが強い。
子供たちがいるのに、みっともなく駄目とか嫌だとか言うのは気が引けた。
断りきれない俺は、はたけ上忍のことを『カカシ先生』と呼ぶことになってしまった。
「俺たち、仲良くなれそうですね」
子供たちの手前、建前で言ったのかと思ったら、はたけ上忍の目は本気だった。
上忍と中忍が仲良くなんてなれるのかな・・・。
仲良くなれても友人にはなれないと俺は思っているんだけど。
それから七班と別れて俺はお遣いに戻った。
火影さまの元へ報告が終わったら、受付の任務が待っている。
今日は午前はアカデミー、午後から火影さまのお手伝い、夕方は受付所。
実に、バタバタしている一日だ。
受付をしていると、はたけ上忍が現れた。
俺に報告書を提出してくる。
報告書に目を通すと任務は無事に終わったらしい。
ほっと一安心。
「お疲れ様でした、はたけ上忍」
そう言うと、はたけ上忍が首を振った。
「そこは『カカシ先生』ですよ、イルカ先生」
訂正を入れられる。
しかも。
「イルカ先生、受付もしているんですか。忙しい人なんですね」
呆れたように聞こえるのは気のせいか・・・。
「アカデミーの先生じゃなかったの?」
「あー、えーと、アカデミーの先生ですけど受付もやっているんです」
「そうなの?」
「そうなんです」
はたけ上忍は眉根を寄せて、納得してない顔。
「働きすぎじゃないですか?」
「働きすぎじゃありません」
そこは否定しておいた。
俺より働いている人は他にも数え切れないほどいるし。
その筆頭が火影さまだ。
火影さまが里のために働いているんだから俺だって少しでも、お助けしたい。
分不相応な願いかもしれないが。
それに、はたけ上忍だって俺以上に任務して働いているじゃないか。
仕事に文句を言ったら、罰が当たるってもんだ。
はたけ上忍は「ふーっ」と息を吐いた。
「里も大変なんですね」
そう言われては返す言葉がなかった。
・・・そうだよなあ、もっともっと頑張らないと駄目だよなあ。
気合を入れて仕事をしないと。
俺は、はたけ上忍に言われたことを心に刻み、今以上に仕事に勤しむことを心に誓った。
その後、仕事が終わった後。
懇親会と称した飲み会に、はたけ上忍に誘われた。
メンバーは、はたけ上忍にアスマ先生、紅先生。
アスマ先生と紅先生とは多少面識があり、二人ははたけ上忍と同じく上忍師だ。
上忍三人と中忍一人の飲み会。
・・・どうなるんだろう。
余りないシチュエーションに断りたくても断れないと慄く俺であった。
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