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気に掛けていた子供たちから下忍と認められた旨を告げられた。
三人とも嬉しそうで、俺も嬉しかった。
喜んでいる子供たちを見ると胸が熱くなる。
こんな時、先生をやっていてよかったなあと本当に思う。
「で、上忍の先生はカカシ先生って言うんだってば!」
「片目を隠して変な本を読んでいるのよ、カカシ先生って」
「見た目は怪しいやつだぜ」
上忍師である、はたけ上忍のことも言ってくる。
そっか、はたけ上忍はカカシ先生って呼ばれているのか。
もう先生だから当たり前か。
あの人が先生、ちょっと面白い。
「ねえ、イルカ先生はカカシ先生を知っているの?」
女の子に聞かれた。
「え、カ・・・」
釣られて、カカシ先生と言い掛けてやめた。
「はたけ上忍か?さあ、話したことないから知らないなあ」
「そうなの」
女の子は残念そう。
俺から、はたけ上忍の情報でも聞きたかったのかな?
「ああ。人から聞いたことくらいしか知らないよ」
「ふーん」
女の子は考え事をするように腕を組んだ。
この子は、ずば抜けて頭がいいから何か思惑でもあるのかもしれない。
まあ、いいかと俺は思って。
子供たちを順番に抱きしめた。
「下忍合格、おめでとう!」
ぎゅーっと。
有りっ丈の思いを込めて腕に抱きしめる。
三人とも、とても照れくさそうにしていた。
その晩。
はたけ上忍が俺の家を訪れた。
玄関の鍵を開ける音がして扉が、がちゃりと開いた。
「お邪魔しまーす」
はたけ上忍が当たり前のように部屋に入ってくる。
そんで、定位置になりつつある場所に腰を下ろした。
・・・・・・この人、ここに何しに来たんだ?
そう思いながら一応、茶なんぞ淹れてテーブルに置くと「あ、ども」なんて言いながら飲んでいた。
覆面を取って完全に寛ぎの体勢をとっている。
俺の背中の怪我は、もうすぐ治りそうで看病は不要になっていた。
何度か怪我の看病で俺の家に来てもらっているうちに、俺の家に来るのが普通になったのかな・・・。
でも、もう元気だし。
「あの、はたけ上忍」
「はい、何でしょう?」
「背中の怪我のことではお世話になりました」
正座して、ぺこっと頭を下げて礼を言った。
「重ね重ね、ご迷惑をお掛けしてしまって本当に申し訳ありません」
「いえいえ、どうってことないですよ」
お互い、顔を合わせて、にこにこにこにこ。
にこにこ・・・がずっと続くはずがなく、俺は用件を切り出した。
「ついては俺は怪我もほとんど治りましたので鍵を返してください」
渡した合鍵の返却を求めた。
「え、鍵?」
だけど、はたけ上忍はすっとぼけた。
「鍵って何の?」
人の良さそうな笑みを浮かべて首を傾げている。
可愛いつもりかな・・・。
どっちかっていうと、カッコ可愛い感じだが。
じゃなくて、今はそんなことよりも。
「俺の家の鍵を返してもらえますか?」
「なんで?」
「なんでって・・・」
俺は言葉を失った。
なんでって俺の家の鍵だからだ!
はたけ上忍に鍵を渡したのは怪我をして動けない俺を見舞ってくれたからで。
必要なくなったら返すのが普通じゃないか。
それを言うと、はたけ上忍は明後日方向を向いた。
「あー、そうかもしれませんねえ」
そうかもじゃないって。
はっきり言った。
「俺の家の鍵、返してください」
「はーい」
素直に返事をした、はたけ上忍だったが。
ズボンのポケットやベストの内ポケットをがさごそして探していたが困ったように俺を見た。
「すみません、鍵を失くしちゃったみたいで」
「ええっ」
「ごめんなさい」
謝ってきたけど。
「たった今、俺の家の鍵で玄関開けて入ってきたでしょーが!」
この短時間で、どうやって鍵を失くすっていうんだ?
「どこにやったんですか?」
「さあ」
「あるはずですよ」
「ないものはないですもん」
「探してください」
「探したけど、なかったじゃないですか〜」
のらりくらりと交わされる。
むかっとしていると、はたけ上忍がベストのチャックをじーっと開けて前を開放した。
ついでも両手も広げる。
「だったらイルカ先生が俺の体を隅から隅まで調べて探したらいいでしょ」
ね?と捨て身の攻撃に出てきた。
「イルカ先生が俺を身体検査して鍵を見つけたら?」って・・・。
そんなことできるはずがないだろう。
中忍の俺が上忍のはたけ上忍を調べるって。
別に、はたけ上忍は俺の鍵を失くしただけで罪を犯した訳じゃないし。
「できません」
俺は鍵の返却を諦めた。
「見つかったら返してくれれば、それでいいです」
人生、諦めが肝心だ。
「そうですか〜」
ふにゃっとした感じで笑った、はたけ上忍は案外、曲者なのかもしれない。
当面は鍵の返却は諦めるとして。
「さっき、俺のことイルカ先生って呼びませんでしたか?」
「はい、呼びました。昼間、子供たちがイルカさんのことをそう呼んでいたので」
俺も真似しちゃいましたって嬉しそうな顔をする。
あ、この顔、子供たちの嬉しそうな顔と似ているな。
・・・子供たちのことを下忍として認めてくれて、これから指導してくれる人なんだよなあ、この人は。
感慨深く、はたけ上忍を見つめる。
とぼけたような雰囲気を醸し出しているけど目の前にいる、この人は上忍で・・・。
思いに浸っていると目の前の上忍が、それをぶち壊した。
「だから俺のことも、はたけ上忍じゃなくて『カカシ先生』って呼んでくださいよ」
要求された。
「は?」
「俺がイルカさんのこと『イルカ先生』って呼ぶんだから、イルカさんも俺のこと『カカシ先生』って呼んでくれないと嫌です」
変な駄々を捏ねている。
そう言われても、まだ正式には会ってはないし、ここでは普通に話しているけど外で会ったら初対面の相手だ。
いきなり『カカシ先生』は馴れ馴れしい。
最初は、やっぱり『はたけ上忍』と呼ぶしかないだろう。
「それは駄目です」
「どうして?」
「はたけ上忍が上忍だからです」
きっぱり言うと、はたけ上忍は不機嫌そうに黙り込んだ。
黙り込んで責めるように俺を見る。
・・・・・・なんか、俺が悪いみたいになっているんだけど何故?
俺は悪くない、よな・・・。
「そういえば」
はたけ上忍が不機嫌続行のまま俺に言う。
「昼間、子供たちを抱きしめていましたね」
「え?ああ、はい」
「あんなに嬉しそうな顔して抱きしめちゃって」
今度は悔しそうにしている。
「・・・見ていたんですか?」
「見えちゃったんです!」
力説している。
「イルカ先生ことを見に行ったら見えたんです、抱き合っているところが」
抱き合っているって・・・。
表現、おかしくないかな?
単に子供を抱きしめていただけで、そこに不純な意図はない。
ないってか、あったら駄目だろ、子供相手に。
でも、はたけ上忍は子供に、そういう行為をするのはNGな人なのか。
覚えておこう・・・。
それでもって、これからは出来るだけ控えることにしよう。
「これからは気をつけます」
俺が殊勝に述べると、はたけ上忍は鷹揚に頷いた。
「解ってくれればいいんです」
俺には、たくさんスキンシップをしてくれたけれど、子供相手のスキンシップには厳しい人なんだな、はたけ上忍って。
はたけ上忍の意外な一面を垣間見て、驚かされた俺であった。
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