AIで普通の動画を3D動画に変換する


恋愛場面 中



「あのっさー、聞いてよ〜」
明らかに、でれっとした顔になりながらカカシは隣の女性にうきうきとした声で話しかけた。
隣の女性は上忍で単なる顔見知り、上忍専用の控え室に行くと言うので偶然、ご一緒しただけだった。
「なによ、気持ち悪いわね」
いつもクールなカカシの豹変振りに警戒しながら女性は少しカカシと距離を取る。
そんなことにはカカシは、めげないらしく話を続けた。
「俺さー、最近、お付き合いを始めた人がいてね〜」
「ふーん」
「とっても可愛い人でさー、とっても可愛いんだよね〜、性格も顔も体も全部」
主語も述語も目茶苦茶だ。
でれっとした顔が、やに下がる。
「この前、お付き合いを申し込んでオッケーしてもらえたんだよねえ。ものすごく真面目なタイプだから申し込むタイミングに苦労してさー、あんまり真剣さを前面に押し出しても逃げられそうだったし、かといって軽すぎても引かれるだろうしって普通の会話の中でさり気なく言って観たら、それが項を為したんだよねえ」
もはや惚気に近い。
どうやらカカシは、お付き合いしている人にめろめろらしい、というより、めろめろだった。
「一緒にいるのが楽しくてしょうがなくて、ずーっと一生一緒にいたいと思った人はあの人が初めてで・・・」
「へえ、そうなの」
聞いている女性は他人の恋路に興味がないらしく相槌も、あっさりだ。
「そうそう。すっごい好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで・・・」
「好きで?その後は?」
「うん、何となく気になって気が合うなあって一緒にいるようになったら、いつの間にか好きになっていてさ。これって運命だよね〜」
傍らの女性を忘れたようにカカシは、うっとりと自己陶酔している。
「まだ好きって告白してないから、どう告白しようかと思案中というか悩み中で。この前も恋愛映画を一緒に観てさ、どんな反応してくれるかと、どきどきわくわく期待に胸を膨らませていたら特に何もなかったんだ、これが」
残念、と言うカカシ。
聞いていた女性は、これまた、あっさりと言った。
「馬鹿じゃないの」



「え?」
「好きで付き合っといて、肝心要の好きだっていう気持ちを伝えてないなんて馬鹿だって言ったのよ」
「そ、そう?」
「当ったり前よ、大馬鹿よ。相手の付き合っている人、今頃、悩んでいるじゃないの?何でカカシと付き合っているんだろうって」
「そうかな・・・」
「そうよ、相手の人、可哀想」
う、とカカシは言葉に詰まった。
まさか、こんな指摘をされるなんて。
告白は、もっと二人の間の雰囲気を作ってからしようと計画していたのだ。
それが裏目に出るとは・・・。
「順番が間違っているわ」
ぴしりと言われた。
「さっさと相手の人に好きだって言わないと他の人に告白されて奪い取られてしまうかもよ」
「・・・それは困る」
本気で困る、そんなことになったら。
今までの苦労が水の泡だ。
失恋確実だ。
「わかった、今日にでも言うよ。好きだって」
カカシは項垂れた。
意気消沈している。
珍しいこともあるもんだと、同僚の女性は目を細めた。
同時に思った、相手のことが本当に好きなんだと。
だが項垂れたカカシの視線は女性の背を見ていた。
女性はカカシより背が低い。
「あ」とカカシが言葉を漏らす。
「背中に糸くずが」と手を伸ばして引っ込める。
あははは〜と照れ笑いをした。
「糸くずかと思ったら見間違いだったよ、失敬失敬」
そして、とんでもない事を言った。
「カラフルな色の毛虫だった〜よ」 それから女性から悲鳴が上がりカカシに早く取れと迫って「えー」とごねたカカシが最終的に毛虫を取って女性にお礼を言われると同時に「糸くずと毛虫を見間違うな」と理不尽な肘鉄を喰らってしまって、よろめいた。
そんな一部始終をイルカは遠くから見ていたのだがカカシは知る由もなかった。



その後。
任務を急いで終わらせて受付所に行ったのだが、既に夕方になっていた。
もっと早く任務を終わらせてイルカに会いたかったのだが。
夕方ならイルカは受付にいる時間だ。
イルカ先生・・・。
とにかくイルカに会って今夜、会う約束を取り付けなければ、とカカシは焦っていた。
受付所に行くとイルカはいた。
遠目から見ただけなのだが元気がないように思えた。
どうしたんだろうか?
胸に不安が沸きあがる。
イルカに報告書を提出しても様子がいつもと違う。
カカシと目を合わせてもくれないし素っ気ない。
敢えて報告書だけを見ているイルカから僅かな緊張が伝わってくる。
机の上に置かれた手は強く握り締められて唇を軽く噛んでいた。
目は伏せられていて、その色は見えなかった。
悲しそうにはしていないのに悲しそうに見えるのは何でだろう?
名を呼ぶと弾かれたように顔を上げた。
イルカの顔を、やっと見ることができた。
でも、その顔は・・・。
イルカから視線を逸らさずにカカシは顔を近づけた。
鼻先がぶつかりそうだ。
「イルカ先生、どうかしたの?何かあった?」
黒い瞳が揺れていて切なげなイルカの顔を見てカカシは尋ねずには、いられなかった。



「あ、いえ、何もないです」
言葉少なにイルカは答えて、また顔を伏せてしまった。
「まだ、受付の仕事がありますので先に」
暗にカカシに帰ってほしいと言っている。
いつもは、どちらかが遅くても待って一緒に帰っているというのに。
「いえ、待っていますから。もう少しで終わりますよね?」
カカシは退かなかった。
ここは譲れない。
こんなイルカを残して一人で帰りたくはない。
「イルカ先生の仕事が終わるのを待っていますから一緒に帰りましょう」
顔を近づけたまま囁くように言えば周囲を気にしたのかイルカは慌てたように頷いた。
受付所の隅の椅子に座って本を読む振りをしてカカシはイルカを。こっそり見ていた。
元気がないっていうか落ち込んでいるような気がするんだけど・・・。
原因が解らない。
俺を避けていた。
見ようとしなかった。
何かが、ぱっとカカシの頭に閃いた。
もしかして・・・。
行き着いた考えに、どきりとする。
俺のことが嫌いになったとか。
恐ろしい考えだった。
いやいやいや、とカカシは首を横に振る。
そんなことないって、そんなことないない。
だって俺とイルカ先生、仲良しなはず。
好きだとは言っていないものの、仲は良いと確信している。
もしもイルカ先生が俺のこと嫌いって言っても俺が、やっぱりイルカ先生のことは好きなことに変わりはないけれど。
今夜中に好きだとイルカ先生に伝えよう。
カカシは決心を固めた。
雰囲気も何も形振り構ってはいられない。
一番大事で一番好き人はイルカなのだから。




恋愛場面 前
恋愛場面 後


text top
top