助けた人7
「そろそろ寝ましょうか」
イルカは明日も仕事がある。
余り遅くまで起きてはいられなかった。
「そうですねえ」
助けた人、ウサギちゃんも頷いた。
「あんまり眠くないけど俺は寝たほうがいいんですよねえ」
残念そうに言っている。
怪我の回復には睡眠はかかせないのは解っているらしい。
「じゃあ、おやすみなさい」
イルカはベッドにいるウサギちゃんに布団をかけて電気を消そうとした。
「イルカ先生」
「なんですか」
ウサギちゃんが眠そうな片目でイルカを見る。
「一緒に寝ないの?」
不思議そうに訊いてきた。
予想外の質問にイルカは面食らう。
「はい。怪我をしている人と一緒に寝るのは怪我の回復を遅らせると思いますし」
イルカは今夜もベッドの横、床の上で寝ようと思っていた。
「もう俺は大丈夫ですよ」
ウサギちゃんはベッドの場所を半分空けた。
「イルカ先生、俺を看病してくれている間、ずっと床で寝ていたんでしょ」
「ええ、まあ」
床は、ちょっと寝心地が悪いけれど寝れないことはない。
ましてや怪我をしている人がいて休養が必要ならばベッドを譲るのは当たり前だ。
「俺は本当に大丈夫ですからベッドで寝ましょう、一緒に」
邪気のない笑顔で誘われる。
「でも・・・」
イルカが躊躇っていると手首を掴まれてベッドに引き込まれた。
怪我人のはずなのに力は強い。
もしかしてイルカが思っているより、かなり回復しているのかもしれない。
強引に押し切られて結局、イルカはウサギちゃんと一緒にベッドで寝ることになってしまった。
「くっ付いて寝れば平気ですよ」
その言葉通り、ウサギちゃんは、ぴったりとイルカにくっ付いてきた。
体が触れ合うと、こそばゆい。
くすぐったくてイルカは、くすくすと笑ってしまった。
「ちょっと、あの・・・」
笑いが止まらないのはウサギちゃんの手がイルカの体を触っているからだ。
イルカは結構なくすっぐたがりやで、体中、弱い部分が多い。
弱い部分を触られると笑ってしまうのだ。
「く、くすぐらないでください・・・。あ、そこ、駄目ですってば」
「はいはい」と言いつつ、ウサギちゃんは手を止めない。
笑い声を上げながらイルカは懇願した。
「こ、降参です、降参しますから止めて。くすぐるの・・・」
やっとウサギちゃんの手が止まった。
イルカの体から手が名残惜しそうに離れていく。
ウサギちゃんは面白そうにイルカを見ている。
その目は興味津々だ。
かたやイルカは息を切らせて笑いの余韻に浸っていた。
久しぶりに声を出して思い切り笑ったので気分が爽快だった。
「悪戯好きな人なんですね」
やっと笑いが収まったイルカがウサギちゃんを見ると目を細めてイルカを見つめている。
「イルカ先生の思い切り笑った顔、初めて見ました」
にやっと笑っているウサギちゃんは確信犯なのだろう。
「まさか、体を触っただけであんなに笑うとは思いませんでしたけど」
「俺、くすぐったがりなんですよ」
「そうみたいですね」
ウサギちゃんの手がイルカの顔に伸びてきた。
そっとイルカの頬に触れる。
その手に胸の鼓動が、どきんと波打つ。
「可愛いらしいですね、イルカ先生」
そう言われて更に胸の鼓動が止まらなくなってしまう。
「や、やだなあ」
イルカは胸の鼓動を空笑いで誤魔化した。
「男に可愛いなんて。ましてや俺には全然、似合いませんよ」
「そうかなあ」
「そうですってば」
納得のいかないという顔のウサギちゃんを改めてイルカは見る。
灰銀の髪が、きらきらと光って綺麗だ。
その髪が柔らかくて手触りがいいのをイルカは知っている。
ウサギちゃんの方が、よっぽど可愛いのに。
たくさん笑ったことで気持ちが、すっきりして眠くなってきた。
「寝ましょうか」
イルカは電気を消した。
ウサギちゃんの隣で目を瞑る。
なんだか、よく眠れそうであった。
そして朝、起きるとウサギちゃんの手が、しっかりとイルカに巻きついていたのには少し驚いたのは内緒だ。
イルカ先生ってくすぐられるのに弱いのか・・・。
一緒にベッドに寝ようと誘ったところまでは良かったのだが、その後が不味かった。
イルカの手首を掴んで引き寄せ、誘惑に勝てずイルカに触ってみたら
思い切り笑っていた。
くすぐったい、と言って。
まあ、あんなイルカ先生を見たのは初めてだったから新鮮だったけれどねえ。
暗闇の中、隣で眠るイルカの髪にカカシは指を絡ませた。
イルカはカカシの隣で健やかは寝息を立てている。
ちっともカカシを警戒していない。
暗闇でも解るほど無邪気な寝顔だ。
「あー、もう安心して眠っちゃって」
イルカの体を引き寄せて腕を絡める。
「この体温、いいなあ」
イルカの体はあったかい。
ぎゅっと抱きしめるとイルカが無意識なのか、カカシに体を寄せてきた。
抱きしめられると安心感が得るらしい。
小さい声が聞こえる。
「ウサギ、ちゃん・・・」
寝言らしい。
ウサギちゃんて、何だろう。
そんなことを思いながらカカシも、また安らかな眠りに落ちていったのだった。
助けた人6
助けた人8
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