助けた人4
カカシが目を覚ましたのは、あたたかい空気と美味しそうな匂いが満ちた夕方だった。
ゆっくりと意識が浮上した。
体が、とても楽になっている。
睡眠を充分、取ったからからであろうか。
任務後はチャクラも体力も切れて眠ることが多いのだが今回は、とてもよく寝た気がする。
寝すぎて鈍った体をカカシは布団の中で伸びをして解し、ベッドの上に起き上がった。
部屋を見渡すとベッドは一つでベッドの横の床には一つの枕と一枚の毛布が置かれている。
誰か、ここで寝ていたのだろか・・・。
考えて、すぐカカシは思い出した。
ここがイルカの家であることを。
そうだ、自分はイルカ先生に拾ってもらったんだっけ。
カカシは記憶を辿る。
単独任務で疲れて帰って来て、もう駄目だと里の近くて倒れてしまい意識が遠のく時にイルカの顔が見えた。
それに安堵してカカシは意識を失ってしまったのだ。
そうだそうだ、そうだった。
カカシはベッドの上で腕を組んで一人で頷く。
イルカ先生になら自分を任せられると思ったんだよなあ。
なんたって、いい人だから。
それは自分が指導している下忍の子ども達から嫌というほど聞かされている。
そのお陰でイルカと左程、話したこともなかったけれどカカシには、とても親しい存在に思えていたのだ。
だから気を許してイルカに甘えた。
看病してくれるだろうと思って。
そういえば、あの時イルカ先生、びっくりしていたな・・・。
多分、カカシが意識を失って、でも無意識のうちに防衛本能が働いていた時。
カカシの髪を触っていたイルカの手を反射的に掴んでいたのだ。
イルカに拾われたのを忘れて敵かと体が思って動いた。
睨みつけるとイルカ先生が身を竦ませて怯えていたなあ。
その目を見て思い出した。
ああイルカ先生だ、俺は大丈夫なんだって。
そこで力が抜けて再び、寝てしまったのだ。
びっくりした顔のイルカ先生なんて初めて見たけど、あんな顔もするんだ。
カカシは思い出して微笑んだ。
普段は厳しくて優しくて温厚で教師の鑑みたいな人だけど。
びっくりした顔もいい、とカカシは思う。
ベッドに起き上がったカカシは台所と思われる方を見る。
イルカの気配が濃厚だ。
台所から、食欲をそそる匂いがしてくるということはイルカが料理をしているだろう。
イルカ先生、料理もするのか・・・。
感慨深い。
そういや、とカカシは思い出した。
自分が受け持っている下忍の一人に、やけにイルカに懐いている子どもがいる。
その子どもが言っていた。
イルカ先生は意外に料理が上手くて美味い、と。
何回か自宅に呼ばれて食事を共にしたらしい。
もう一人、同じく受け持っている下忍の子どもの比較的無口な子どもも言っていた。
イルカ先生の料理は美味しい、食べると元気になると。
なんとなくカカシはうきうきしてきた。
そのイルカ先生の料理を俺も食べれるのかと期待にわくわくしてしまう。
まだできないのかな〜と勝手にカカシはイルカの料理をうきうきとして待つ。
お腹が空いたから早く食べたいと思っていた。
だって意識がなくなってから摂ったものって水だけだもんね。
チャクラや体力、気力が切れて意識を失ったカカシは一度だけ目覚めた。
さすがに体が悲鳴を上げたのだ。
寝ているだけじゃ駄目だと、何か体に入れろと。
体の欲求に従って目を開けたカカシにイルカは、すぐに気がついて傍に来てくれた。
カカシを驚かないように小さな声で耳元で囁かれた。
具合を訊かれたのに、その時は目覚めたばかりで寝ぼけていたのかイルカのことを睨んでしまった。
あれは失敗だった、とカカシは反省する。
イルカは少しばかり怯んだものの、丁寧にカカシに欲しい物はないかと尋ねてきてくれたのに。
水を所望するとイルカはカカシに肩を貸してベッドの上に起き上がるのを助けてくれて、
水の入ったグラスを口元まで持ってきて飲ませてくれたのだ。
実は余り、人肌好きじゃないんだけど。
カカシはイルカの体の感触を思い出して思わず、にやっとしてしまった。
イルカ先生の体、体温はあったかくて心地よかったなあ。
指導している下忍の子どもがいつもイルカ先生の姿を見ると飛びついて抱きついて頭を撫でてもらっているが、
その気持ちがなんか解る、とカカシは思ってしまったのだ。
あれは癖になる。
あんなに安心感が得られるなら、ずっと触れていたい。
イルカ先生に触ってみたい、とカカシが有るまじき欲望を胸に抱いた時、声がしたイルカの。
「あ、起きられたんですね!」
料理をしていたからなのか、白いエプロンを付けたイルカがカカシの横に来た。
「調子はどうですか?」と訊いてくる。
「ええ、もう平気です」
カカシが答えるとイルカが、ほっとしたような笑顔を見せた。
「よかった」
それは心からの声だ。
「ずっと寝ていたので心配していました」
すっとカカシの額に手を当ててカカシの体調を診てくる。
「熱もないし、顔色もいいし」
イルカは、にこにこしていた。
カカシが回復したのが嬉しいらしい。
本当に人がいいんだなあ、とカカシはイルカの笑顔を見て痛感する。
損得関係無しに人を心配してくれるんだ。
ぽっとカカシの心の中に火が灯った。
何かの感情が芽生えたような、そんな気がした。
「すっかりお世話になりました」
自分の額に当てられたイルカの手を握ってカカシは礼を言う。
「本当にありがとうございました、イルカ先生」
「え?いえ、そんな・・・」
何故か赤くなったイルカは口の中で、ごにょごにょとお礼を言われるほどではありません、と
謙遜している。
「そんなことないですよ」
カカシは強くイルカの手を握った、離したくない。
「イルカ先生が助けてくれなかったら俺は危なかったです、イルカ先生は命の恩人です」
熱く語る。
「イルカ先生、感謝しています」
自らの心の内を素直に伝えるとイルカは照れたような顔になる。
可愛いなあ。
自然とカカシは、そんなことを思っていたのだった。
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