月夜の狼男 2
「わあ、カカシ先生。今晩は満月ですよ。」
愛しのイルカ先生と二人だけの帰り道。
愛しの、って言っても今のところ俺の一方通行な想いだけで、告白もしていない。
今日は二人で呑みに行って、その帰り道だ。
「綺麗ですね。お月さま。」
ほろ酔い加減のイルカ先生は天上の月を仰いでふらふらと歩いている。
最近、酒量が増えているようで心配だ。
「イルカ先生、気をつけて。」
よろけるイルカ先生に手を差し伸べると簡単に手の中に落ちてきた。
体の接触を嫌がられないくらいには好かれているのかな。
そんなことが頭を掠める。
そうだったらいいなあ。
「大丈夫ですって。」
イルカ先生が、あははは〜と笑いながら俺の頭をワシワシと触ってきた。
「カカシ先生の耳、かっわいー。」
耳?
イルカ先生の手の感触を頭に感じるけど、それはどこか変で。
慌てて片方の手で頭を触ると。
「な、なにー!」
動物の耳があった。
これは、もしかして。
もしかして!
「わー、ふかふかの耳だー。狐?狼?犬?」
狼だ。
イルカ先生の発言の中にピンときた。
狼の耳が俺の頭に生えている。
この前の、自称狼男が言ったことは嘘じゃなかったのだ。
ウイルスが伝染して狼男になるってのは。
でも耳だけ?
腕を見ても体を見ても、他に変化しているようなところもない。
尻尾もないし。
頭に生えた耳意外は人間の体みたいだ。
他に変化はない。
耳だけ狼男ってわけか?
でも耳だけなら狼男って言わないかもしれない。
だいたい耳だけじゃ、どの動物のものか分からないよね。
でも何で耳だけ?
俺が困惑しているのにも構わず、イルカ先生は俺の耳を触りまくる。
「すっごい可愛いですよ、カカシ先生。」
にこにこの笑顔は、無邪気で警戒心がまるっきりない。
俺、一応イルカ先生のことが好きなので余り触られると、ね。
「あ、あの。イルカ先生。」
俺はイルカ先生とさり気なく少し距離を取りながら、慌てて言い訳を考えた。
「あの、この耳はですねー。」
うーん、何と言えばいいのか。
何を言って、この場を乗り切ろう?
「あー、カカシ先生。もしかして困ってますか?」
「え?」
「耳が寝てますよー。」
耳が寝る?
そういえば、忍犬も困った時や怒られている時は耳を伏せてるな。
「大丈夫大丈夫。狼男さんから、感染しちゃったんでしょう?」
分かってますよ〜、とイルカ先生は頭を優しく撫でてくる。
主に耳だったが。
「そうなんですよ、よく知ってますね、イルカ先生・・・。」
って、すごい重要なことを今、イルカ先生言わなかった?
「狼男をイルカ先生知ってるの?」
「勿論ですよ。」
イルカ先生は大真面目で頷いた。
「狼男は俺の知り合いです。」
「知り合い?」
「そうでーす。」
陽気に答えるイルカ先生。
そういや、イルカ先生って少し酔っ払ってるんだっけ。
酔っ払った勢いで言ってるのかな?
こんな時は冗談半分くらいで聞いておこう。
「はいはい。じゃ、酔いが醒めたら詳しく教えてくださいね。」
一先ずこの場は置いて。
俺はイルカ先生を自宅に送ってから自分の家に帰ったのだった。
月夜の狼男 1
月夜の狼男 3
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