月夜の狼男 1
と、ある任務に出た時の話。
何人かで小隊を組んで出かけたんだけど。
その内の一人と、二人きりになって敵と遭遇して。
戦闘になった。
幸い、敵を蹴散らして事なきを得た。
だけどさ、二人でに闘ったから、当然俺の他に一人いるわけじゃん。
そいつが、俺のことを指差して。
「すまん、カカシ。」
とか言うわけよ。
「何が?」
敵はやっつけたし、何か問題でも?
そう聞くと、そいつは肩を竦めてこう言った。
「闘ったときに、俺の爪がお前の手に当たって引っかき傷ができただろ?」
「ああ、これ。」
手の甲に薄く傷がある。
偶々、グローブをしてなかったんだよね。
「大したことないよ、別に。」
こんなの直ぐに治る。
だいたい、態とじゃなくて不慮の事故だし。
「気にするな。」
そう言ったのだけど、そいつは頭を振った。
「いや気にするよ。だって、俺、狼男だから。」
「はあ?」
一拍、間を置いて俺は盛大に聞き返した。
こいつ、頭がおかしくなったんだろうか。
「信じられないのも無理はない。俺は満月の夜にだけ狼男に変身するのだから。」
満月の夜には気をつけて外出しなかったし、ばれないように細心の注意を払っていたからな。
そいつは説明する。
「狼男になってしまった時は人間に極力接触しないようにした。何しろ、うっかり俺が傷をつけると・・・。」
「傷をつけると?」
「狼男が移ってしまうんだ。」
移るって?
「つまり、俺の狼男としてのウイルスが、伝染してしまうんだ。」
「伝染するとどうなるの?」
「もちろん、狼男になる。」
「ふーん。」
「昔、一度、ウイルスを伝染させたことがあって。それ以後気をつけてはいたんだが。」
至極真面目に、そいつは話しているけど。
やっぱ、頭がおかしんじゃないの?
胡散憂さそうな目で見ると、そいつは懐から一枚の紙切れを取り出した。
火影さま直々の書状だ。
火影の印が押してあるから間違いない。
「俺、これから故郷に帰るんだ。」
そいつは嬉しそうに言う。
「木の葉の里に奉公する年季が明けてさ。」
書状は、火影さまの直筆で木の葉の里から出てもいいという許可状だった。
そいつは、いそいそと書状を懐にしまいこむ。
「俺、一緒に任務に来たけど、ここで離脱するよ。」
こっから、故郷に帰るんだ。
笑顔になった。
きっと家族に会えるのを夢見ているんだろう。
「じゃあな、カカシ。」
俺に手を振る。
「短い間だったけど世話になったな。元気でな。」
「あ、ああ。」
俺は何だか、のまれてしまって上手く返事が出来ない。
「満月の夜には気をつけろよ。」
それだけ言って、そいつは行ってしまった。
風のように、あっという間に姿を消した。
「気をつけろって・・・。」
だいたい、狼男なるものがどんなものかさっぱり分からない。
それに、あいつが狼男なのかも分からない。
木の葉の里に奉公する年季が明けたって?
どういうことなんだんだろうな。
木の葉の里は何気に謎が多い。
一つ確実なのは、あいつが正真正銘の火影の書状を持っていて、それには里から出る許可が記されていた。
それだけは本当だった。
「ま、どうにかなるでしょ。」
嘘か真か。
満月の夜になれば分かることだ。
どうせ、しょうもない作り話さ。
俺はそう思い、この一件は忘れることにした。
月夜の狼男 2
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