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若き忍の星7



どん、とイルカがカカシの胸を押してきた。
顔を見ると、むっとして口をへの字に曲げている。
カカシの手から水筒を奪い取ると、ぐびぐびと水を飲み、手の甲で口を拭った。
それから、きっとカカシを睨みつける。
「あのねえ、カカシさん」
「ん、なーに」
てっきり口付けたことを咎められるかと思っていたが違っていた。
「水くらい、一人で飲めますから。こんな時に冗談はよしてください」などと言われてしまった。
「え〜」
「何が『え〜』です」
じろっと怖い目で見つめられる。
「今、色々大変なんですから、俺的に」
「ふーん」
「いっぱいいっぱいなので気を散らしたくないんです」
「集中したいってこと?」
「そうです」
「敵に追われているから?」
「そうです」



言ってからイルカは、しまったとばかりに苦い顔をした。
カカシがした誘導とは言えない、誘導に簡単に引っかかってしまったからだ。
「イルカ、誘導尋問には気をつけなさいよ」
「・・・分かっています」
「それから冗談じゃない冗談にもね」
イルカはますます苦虫を噛み潰したような顔になる。
「さっきのは冗談じゃないからね」
こんな時になのにカカシは妙に楽しくなってきた。
なぜ、同性のイルカに口移しで水を飲ませたのか、自分でもだんだん分かってきたからだ。
自分で自分の気持ちが。
「はあ〜」
イルカは溜め息を吐き再び、目を閉じてしまった。
「いい大人が何、言ってんですか。ったく・・・」
脱力してしまったようだ。
「ねえねえ、イルカ」
チャンスとばかりにカカシはイルカに、にじり寄った。
「ところでイルカ、今、付き合っている人とかいるの?」
この場にそぐわない、全く関係ないこと話題を振ってきた。
「そんなこと聞いて、どうするんです?」
なんとなくイルカは嫌そう〜な顔をする。
「まあ、いいじゃない。話しをすると多少はリラックス出来るよ」
カカシは言葉巧みだ。
必要な情報を相手から引き出す術は一流かもしれない。



「・・・いませんけど」
不承不承にイルカは答えた。
「じゃあ、好きな人は?」
「・・・・・・いませんけど」
「告白されたことは?」
「・・・・・・・・・ないですけど」
「恋愛に興味はないの?」
「ないこともないですけど・・・」
「そっか」
イルカの答えを聞いてカカシは嬉しそうにしていた。
「そっか、そうなんだ〜」
にこにこしている。
それを横目で見つつイルカは悔しいのかカカシに全く同じことを訊いてみた。
「そういうカカシさんは付き合っている人はいるんですか?」
「これから出来る予定だ〜よ」
「好きな人がいるってことですよね?」
「まあ〜ね〜」
「・・・告白されたことはあるんですか?」
「あるよ」
「恋愛に興味は?」
「もちろん!お年頃だしね!」
「・・・そうですか」
聞き終わった時にはイルカは何だか疲れ切っていた。
ちょっとした逆襲のつもりで聞いたのが仇になって返ってきている。



「そうですか〜」
イルカは嫌味のつもりでカカシに言った。
「カカシさんはもてるんですね〜」
確かに素顔のカカシは見目良く、整った顔をしているから女性が関心を持つだろう。
「あ、もてるけどね」
カカシは訂正してきた。
「告白されても誰とも付き合ったことはないから。そこんとこは間違えないでね」
強調してくる。
「はいはいはい」
イルカは、おざなりに言うとカカシから、ぷいと顔を背ける。
ずるい!と思っていた。
カッコいいのはずるい!と。



「で、敵ってのは」
先ほどとは打って変わって聞こえていた真剣みを帯びたカカシの声にイルカは背けていた顔を戻した。
目の前にはカカシの真剣な顔があった。
冷静な瞳でイルカを見ているカカシが。
「あ、ええとですね」
実は、とイルカは隠れ家でカカシが寝ている間に町まで出かけていたことを話した。
「その時から後をつけられていたみたいで」
すみません、と小さな声が出る。
「つけられていたら撒くっていう基本中の基本も出来なくて」
情けないと思いながらも今更隠してもしょうがないとイルカは腹を括ってカカシに話した。
話しながら下を向いてしまう。
「俺が敵を連れてきたようなものなんです」
「そんなことないよ」
ふわっとした感触がして、あったかい手がイルカの頭を撫でた。
「その敵は元々俺のことを狙っていたやつだからさ、イルカが責任を感じることはないよ」
「でも」
顔を上げるとカカシが微笑んでいた。
「イルカは俺を助けてくれた」
ほっとするような笑顔だった。
「頼りにしているよ」
そう言われて、やっとイルカにも笑顔が戻る。
「そうですか」
とても嬉しかった。
「うん。でも、多分」とカカシは余計な一言を発してしまう。
「チャクラが戻れば足を怪我していても、闘いの時はイルカより俺の方が強いと思うし」
だから心配ないよ、と。
その言葉にイルカは「嫌味な人ですね」とだけ言ったのだった。





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