若き忍の星3
少し会話しただけで疲れたを感じたカカシは気がつくと目を閉じていた。
あたたかい場所にいた所為かもしれない。
いつの間にか眠っていた。
ぼやけた意識がだんだんと鮮明になってきて薄っすらと目を開けるとイルカが囲炉裏端で何かをしていた。
数種類の粉末を調合して、味見をしている。
味見をしたイルカは眉を顰めていた。
「げー、にっがー」
小声で、そんなことを言っているのが聞こえてカカシの顔に自然と微笑が浮かぶ。
「そんなに苦いの?」
声を掛けてしまった。
「あ、カカシさん」
声を掛けられたイルカは、すぐさまカカシの傍に寄ってくる。
「具合はどうですか?」
「うん。だいぶ、いいよ」
「よかった」
にこっとしたイルカは先ほど苦いと称してした粉末を差し出してきた。
「これ、滋養強壮剤です」
「あ、そうなの」
「はい。薬品を扱う友達に教えてもらった強力で超効くやつです」
「へえー」
カカシとイルカは見詰め合ったまま、しばし沈黙した。
さきに沈黙を破ったのはカカシだ。
「それ、苦いんだよね?」
「そこそこってか、かなり」
無邪気に笑ったイルカが水を片手に迫ってくる。
苦いから飲みたくないと顔に、でかでかと書いてあるカカシに。
「苦いけど、それだけです。変な物は入っていませんから」
イルカは調合した粉末の原材料を幾つかあげた。
それはカカシも知っている薬草の名前である。
効能も滋養強壮だ。
イルカの作った滋養強壮剤に問題はなさそうであった。
「さ、どうぞ」
口元に持ってこられてはどうしようもない。
動けないカカシには逃げようがないのだ。
とほほ、と思いながら飲んだ、その薬はやっぱり、ひどく苦かった。
「に、にっが〜。水〜」
「はい、水です」
口元に持ってきてもらった水をカカシは、ごくごくと飲み干した。
「何か食べますか?」
薬を飲み終わるとイルカは、そう尋ねてきたのだがカカシは「否」と答えた。
「何もいらないよ」
食べることより眠ることを体が欲していた。
「少し眠らせてもらえれば」
「分かりました」
イルカの声が遠くなっていく。
カカシは、また眠りに落ちていく。
「安心して眠っていてください」
意識がとろとろと溶けて瞼が閉じていく。
「守りは俺に任して・・・」
眠る直前、イルカの声はそう聞こえた。
「眠っちゃった」
完全にカカシの瞼が閉じられて静かな寝息が聞こえ出した。
目は固く閉じられている。
眠りは深いようだった。
「チャクラ切れって大変なんだなあ」
しみじみ言ってイルカは腕を組んだ。
「きっと、すごい任務で疲れているんだな。何しろ暗部だもんな」
うんうんと頷いてイルカは囲炉裏に薪をくべた。
火が一段と燃え上がる。
当分、これが室内はあったかい。
換気は充分してあるので大丈夫だ。
「さてと」
イルカは音を立てないようにして立ち上がった。
「ちょっと俺は食料の調達にでも行ってこようかな」
実はイルカはほとんど食べる物を携帯していなかったのだ。
食べ物といえば、必要最低限の非常用の小さな固形の食料と水と薬だけを持っていた。
「これじゃあ、あれだしなあ」
手の中の固形の食料を見る。
それは固くて美味しくない。
なにより体の弱っているカカシには食べずらいものだろう。
「なにか柔らかくて食べやすくて栄養になるものがいいよな」
チャクラ切れの忍には何がいいのか分からないけれど。
「そこは、まー適当に」
柔軟な対応で、とイルカは結論づけた。
それから隠れ家を抜け出し結界を張り直し、誰にも姿を見られぬように用心に用心を重ねる。
すっと森の中にとけ込むように姿を消した。
その姿は忍の姿ではなく、単なる一般大衆の格好をしていたのだった。
「はーっ、やっと帰ってきた」
隠れ家近くに帰ってきたイルカは息を切らせていた。
「こっから町、遠い〜」
手の中には包みを抱えている。
何かを買ってきたらしい。
「なんか心臓が、ばくばくする」
胸に手を当てると、いつになく心臓の鼓動が早い。
息が整うのも遅い。
「これって薬の副作用かな」
少し心配になる。
「効果は一週間とか言っていたからなあ」
里を出てから今日で五日目だ。
「ほんとは行って帰ってで三日、遅くても四日の予定だったから」
指折り、日にちを数えているイルカの顔は曇っている。
「里に帰ったら仕込んだ薬を抜くとか何とか言っていたっけ・・・」
痛いのかな、とイルカは違う方面を心配していた。
苦いのと痛いのは嫌だなあ、と思った、その時だ。
びくっと肩が動いたイルカは素早く後ろを振り返った。
背後には木々が連なり森が広がっている。
そろそろと服の下に隠した武器に手が伸び、目は上下、左右、前後と周辺を窺う。
しばらく息を殺して動かずに気配を窺っていたイルカであったが・・・。
「おかしいな」
口の中だけで呟く。
「今、確かに気配が」
そう人の気配がしたような気がしたのに。
気配は跡形もなく消えている。
「勘違い?」
勘違いかもしれないが嫌な予感がした。
こういう時の勘はよく当たる。
「早く帰ろう」
イルカは注意に注意をして隠れ家へと戻った。
念のため結界を何重にも張り巡らす。
それから隠れ家に入って眠っているカカシを見て、ほっと一安心したのだった。
かたん、とした音にカカシは目が覚めた。
目を開くとイルカが隠れ家の入り口に立っている。
服装が忍の服ではない。
「・・・どこかに行っていたの?」
「ええ、まあ」
ぎこちなく答えたイルカが緊張しているのが見て取れた。
「ちょっと食べ物を」
無理に笑顔を浮かべたイルカは手に持っていた包みをカカシに見せてくる。
「そう・・・」
「お粥でも作りますね」
「うん」と答えたカカシはイルカを手招きした。
イルカの滋養強壮剤と睡眠をとったことで手は辛うじて動かせるようになっていた。
「なんでしょう」
近寄ってきたイルカの手に触れると、ほんのりと熱い。
手に汗をかいているのもあるが通常の体温よりも高く感じる。
・・・外で何かあったな。
カカシは推測した。
それに、とイルカの顔を見やる。
・・・イルカの体は平常ではない。
その二つが解ったことだった。
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