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ねこねこ 2



自宅へと猫を連れ帰ったカカシは、傷めた足を手当てした。
腫れている足に薬を塗って包帯を巻く。
猫は、じっと大人しくしていた。
大人しくしていたというより元気がなかった。
三代目から離れた後、鳴きもしない。
時折、カカシを見上げては哀しそうな目をするだけだ。
「元気ないねえ、そんな三代目が好きだったの?」
膝の上に猫を乗せて話しかけると、三代目を言う言葉に猫がぴくりと反応した。
「好きなんだねえ。」
三代目を思い出したのか、猫が小さく鳴く。
「でもさあ。」
カカシが猫の背を撫でながら何気に言った。
「お前、三代目に預かられているんでしょう?じゃあ、本来の飼い主は別にいるわけで。」
カカシの言葉に猫の動きが止まり、体が硬く固まった。
「その飼い主は好きじゃないの?」
「にゃあにゃあにゃあ。」
カカシの気を逸らすように唐突に猫は鳴きだした。
「ん?どうしたの?」
喉をごろごろと鳴らして、猫は体をカカシの擦りつける。
猫が懐き始めたので、カカシとしても悪い気はしない。
「はいはい。じゃあ、ご飯にしようか?何が好きなのかな〜。」
立ち上がったカカシの足元に猫は擦り寄る。
「おいでー、イルカ。」
カカシの呼び声に猫は「にゃん。」と返事をした。






家の中でも家の外でも、カカシは預かりものの猫と始終一緒にいた。
「イルカ。」
名を呼ぶことにも、すっかり慣れた。
呼ばれるとイルカは必ず返事をしてから、小さな黒い目をカカシに向ける。
とても、お行儀は良い。
カカシの膝の上も、すっかり気に入ったようで腕の中でなければ必ず膝の上にいる。
ざらざらとした舌で、カカシの手を舐めてきたりもする。
親愛の情を示しているように。
就寝時、初日はベッドの足元の方にいたが、寂しかったのか起きた時にはベッドの中に潜り込んでいた。
それから小さな猫を腕に抱きしめて寝ている。
暖かく心地よい。



それに三代目が言っていたように甘えん坊で、カカシが風呂に入っているときは脱衣所で、ずっと鳴いていたりもする。
「どこにも行かないから。イルカは風呂に入るの、嫌いでしょ?」
猫は水が駄目だから。
そのような意味でカカシは言ったのだが、イルカは違うとでも言うように鋭く鳴く。
「イルカが人間だったりしたら、風呂に一緒に入れるけどねぇ。」
今度は、イルカは項垂れた。
「あらら。人間になりたいの?」
項垂れた小さな頭を撫でながら、カカシは慰めた。
「安心してよ。人間じゃなくても、イルカのことは好きだよ。」
しかし、猫は項垂れたままだった。



三日間は、あっという間に過ぎて。
イルカの後ろ足も完治して、三代目から猫を返すように、と催促の式が来る。
すっかりイルカに情が移ってしまったカカシはイルカを返したくない。
「イルカは帰りたい?三代目のとこに?」
イルカは哀しそうな目で、カカシを見て小さく鳴いた。
「そっか。」
溜め息を短く吐いてカカシはイルカを返すことにした。






「おお、おお。イルカ、元気だったか?」
三代目は猫を見ると、顔を綻ばせて名を呼んだ。
イルカはカカシの腕の中にいたのだが名を呼ばれると、あっさり三代目のところへ行ってしまった。
すぐさま三代目の膝の上で丸くなる。
そこが定位置だとでも言うように。
俺の家にいたときは、俺の膝にいたくせに。
俺の膝がお気に入りだったのに。
カカシは、なんとなく面白くない。
おまけに三代目のところに戻ってからは、自分の方を見ようともしない。
薄情だなあ。
理不尽なものを思いながらも、三代目から猫の世話の礼を言われるとカカシは火影の執務室を後にするしかなかった。






上忍控え室で待機するカカシは自然と溜め息をついていた。
「はあぁ。」
明後日の方向を見ては溜め息し、明々後日の方向と見ては溜め息をつく。
いい加減、鬱陶しくなっていたカカシの同僚の紅は聞いた。
「何を、そんなに溜め息ついてるのよ。もしかして、ふられたの?」
紅に聞かれたカカシは、また、溜め息をついた。
「そうだね。ふられたのかも。」
「えー、カカシでもふられるの?」
俄然、目が輝いてきた紅はカカシに質問する。
「で、どんな子にふられたの?どうしてふられたのよ?」
「小さくてフワフワしていて可愛い子だよ。」
勿論、カカシは猫のイルカのことを言っていた。
「黒い目がすごいキュートなの。」
「へええ。」
近くにいた、上忍の何人かも聞き耳をたて始めた。
「夜は一緒に寝ていたし、俺の膝の上が大好きで、すごく甘えん坊だったのになあ。」
カカシはイルカを思い出す。
「でも、ちょっと間抜けで、そこがすごく可愛いんだよね。」
「ふーん、あんたがそんなに言うなんて、よっぽど、気に入っていたのね。」
「うん、すごく気に入っていたよ。」
イルカのことを思いだすカカシの顔は優しい。
「そうよねえ。だって、カカシすごくいい顔してるもの。」
でも、と紅は首を傾げた。
「何で、ふられちゃったの?」
「俺より、好きな人がいたんだ。」
俺より好きな人とは三代目のことだ。
「そうなんだー。」
紅は、うんうんと頷いた。
「それは辛いわよねえ。」と、柄にもなくカカシのことを慰めていた。
しかし、まだ、興味が尽きなかったらしい。
「で、その、カカシをふった子はなんて名前なの?」
当然のようにカカシは言った。



「イルカ。」



紅を始め、聞き耳をたてていた何人かは目を見開き驚いた。
「・・・・・・イルカって。それ、本当?」
「うん。」
「本当に本当に本当?」
紅がやけにしつこく聞いてくる。
「本当だよ。」
カカシは口調を少々強くした。
「イルカに間違いない。」
「そう。」
紅は言葉少なに返事をして、微妙且つ大変複雑な顔をした。
他にも控え室では複雑な顔をしている者が何人かいた。
上忍控え室に沈黙が落ちて。
しばらくして、紅がぽつりと言った言葉がやけに響いた。
「カカシとイルカが、そんな関係だったなんて知らなかったわ。」



「でも、他では言っては駄目よ。」
イルカとのことを紅はやけに、カカシに念を押した。
「何でさ?」
紅が言う意味がカカシは全然、分からない。
あの猫のイルカには、里の機密でも隠されているのか。
「それは・・・・・・。イルカが困るからよ。」
カカシは良くてもね、と。
「ふーん。」
猫が困る、とは何とも奇妙なことだが。
とりあえず、カカシは「分かった。」と答えておいた。
紅は上忍控え室にいた何人かにも、口外無用と釘を刺していた。






「三代目。イルカはいないんですか?」
最近、カカシは三代目に会うと、必ずイルカのことを聞いていた。
「また預からないんですか?いや、そもそも本当の飼い主は誰なんですか?」
カカシの再三の追求にも、三代目は頑として教えてくれない。
「もう、イルカのことはいいじゃろう。」
「えー、また会いたいなあ。」
また、俺が世話したいなあ。
暗に三代目に言ってみる。
「駄目じゃ。それにイルカも会いたくないと言っている。」
「そんなぁ。でも、イルカが言ったって。猫って喋れましたっけ?」
ごほん、と三代目は咳払いをして。
「とにかじゃ、イルカは当分、預からん。」
だから会えないし諦めろ、と三代目は素気無い。
カカシは、その場は渋々と退散した。



ねこねこ 1
ねこねこ 3



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