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内緒の話 その五



「は・・・」
ヤマトの言葉にカカシは目を、ぱちくりとさせた。
「今、何て言った?」
「だから」
懇切丁寧にヤマトは同じ言葉を繰り返した。
「綺麗な女性と連れ立って、この人ごみの中で一際、目立っていました。とても、お似合いでお付き合いしていると思われても仕方がないくらいです」
「なっ・・・・・・」
出ている片目を大きく開いてカカシはヤマトを凝視した。
「それ、イルカ先生にも言ったの?」
「言ったっていうか、自然に言葉に出てしまったというか」
つまり言ったということだ。
「あれはねえ」
カカシはヤマトに言ってもしょうがないと思いつつ、弁解した。
「任務の同行者ってだけの人間なの。お似合いもお付き合いも、ぜんっぜん関係ない」
「そうなんですか」
「そうだよ。だいたい、くのいちは綺麗な顔して裏では恐ろしいってのは身にしみて知っているだろうが」
「それは同意です」
「だろう」
難しい顔をしてカカシは腕を組んで鋭い眼差しでヤマトを見た。



「それに俺がイルカ先生のことを、どう思っているか薄々と察していながら、そんなことを言うなんて」
カカシは非難がましい目だ。
「まあ、そうでしたね」
ヤマトは、とぼけて明後日の方向を向いた。
「つい、口が滑ったというか何というか彼んというか・・・」
言葉を濁している。
うかつなところもあるらしい。
「ところでイルカ先生の相談ごとって何よ?」
話が逸れてしまったが肝心なことをカカシは尋ねた。
「イルカ先生は何を悩んでいるの?それに何でイルカ先生の肩に手を置いていたんだ?」
色んなことが気に掛かる。
「イルカ先生の肩に手を置いたのは心配そうにしていたので慰めようとしただけで他意はありません」
「ふうん」
「相談ごととは、すぐには話せないとのことでしたので今晩、イルカ先生の家に伺って聞くことになっています」
「えっ、イルカ先生の家に行くの?」
それにはカカシも驚いた。
「どうして」
勢い込んで訊いてしまう。
「どうしてって言われても。誘われたので」
イルカに自宅に誘われるなんてとカカシの嫉妬心は、むくむくとわき上がってくる。
自分だって行ったことがないのに、と無性に悔しくなってきた。
「あ、夕食も誘われました。何でも作ってくれるそうで」
「なにー!」



人ごみの中であるということを忘れてカカシはヤマトに詰め寄った。
そして言った、おどろおどろした低い声で。
「俺も連れて行け、イルカ先生の家に・・・」
「えー、駄目ですよ。突然に、そんな」
「いいから連れて行けっての」
「イルカさんに悪いですから」
「それは何とか理由をつけてさ、上忍でしょ」
「先輩だって上忍でしょうが」
「それからイルカ先生って呼べって言ったろ」
「とにかくですね」
「今晩、絶対に一緒に行くからな」
あー言えばこう言うでカカシは先輩の権限を大いに使う。
意地でもイルカの家に行こうとしている。
ここら辺は譲れないのが恋する男たる所以だ。
「分かりました」
ヤマトは渋々、頷いた。



「じゃーなー」
夕方、カカシはご機嫌だった。
にこにことして満面の笑みを浮かべている。
満面の笑みの見本と言っていいくらいに。
「じゃ、頑張って行って来い!」
笑顔でヤマトに手を振っていた。
「今晩のことは俺に任せて、どーんとね」
「まあ、しょうがないですけれど」
ヤマトは溜め息を吐いていた。
「くれぐれも僕のことは誤解のないようにイルカ先生に言っておいてくださいね」
「はいはい、分かった分かった」
「急な任務で行かれなくなったことを僕が申し訳ないと謝っていた旨、伝えてくださいよ」
「オッケーオッケー」
ヤマトは夕方、予定外の任務が入ってしまったのだ。
「本当に分かっていますか?」
カカシに不審な目を向けて疑わしそうにしている。
「大丈夫大丈夫」
任務でいなくなるヤマトの代理をカカシがすることになったのだ。
イルカの相談ごとをカカシが代わりに聞くことになる。
ヤマトではなくカカシがイルカの家に行くことは、当の本人のイルカには知らされてはいなかった。
カカシがイルカの家を訪ねる、つまりカカシの突然の訪問でヤマトが来れないというのがイルカに知らされる。
大丈夫だろうか、とヤマトは危惧しながらも任務に行ってしまった。



「さて」
なんとなく邪魔者がいなくなったような気分でカカシは、うきうきとした気分になってくる。
無理矢理感は否めないが。
チャンスだと思ったのだ。
イルカと話をするチャンス到来だと。
カカシはイルカの家のある場所は知っている。
家の前まで行ったことはあるのだが、家の中まで入ったことはなかった。
イルカ先生の家か、わくわくするな〜と気持ちは高揚としてくる。
手土産は何がいいかな、と考えて楽しくなってきた。
ヤマトの代わりにカカシが来るなんてイルカは夢にも思ってないだろう。
内緒にしたみたいで悪いけど、ごめんねイルカ先生。
心の中で懺悔した。
イルカは果たしてカカシのことを受け入れてくれるだろうか、と一抹の不安はある。
そういえば、とカカシは思い出した。
イルカ先生が俺の家に来てくれたのは二回だったな・・・。
三年前のある出来事から、こっちイルカはカカシの家に来ていない。
好きな人が自分の家に来てくれたら、とカカシは思う。
いつまでもいつまでも好きだから、いつまでもいつまでも一緒にいてほしい。



夜になってカカシはイルカの家を訪問した。
時刻も夕食には程よい時間帯だ。
扉をノックすると「はーい」と中から返事があって、がちゃりと扉が開いた。
「いらっしゃい、どうぞ〜」
にっこりと笑ったイルカの顔が固まった。
「カカシさん・・・」
戸惑うように盛んに目を瞬かせた。
「イルカ先生」
すっとカカシはイルカに近寄った。
人懐こい笑顔を浮かべてイルカに微笑んだ。
「ヤマトの代わりに来ました。勝手ながら相談ごとのことは聞きました」
イルカはカカシの顔を、じっと見つめている。
「俺だって」
動かないイルカの肩にカカシは手を置く。
手土産を一旦、床に置き両手でイルカの肩に手を置いた。
努めて穏やかな声を出す。
「俺だって頼りになりますよ、イルカ先生のためならなんだってします」
そう囁いたのだった。





内緒の話 その四
内緒の話 その六





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