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内緒の話 その二



三年前にあった、とある出来事、どちらかというと失敗からイルカと気まずくなってからカカシだって何もしなかった訳ではなかった。
それなりにイルカとの接触を試みたのである。
しかし如何せん、カカシは忙しすぎた。
一言では語りつくせないない複雑な事情で木の葉の里は非常に慌しかったし、任務も途切れなくきて休む暇もなかった。
それはイルカも同様でカカシが、やっと里に帰ってきたかと思えばイルカが任務で里に不在。
会っても時間がなく受付所などで擦れ違ってイルカの顔を見るのが、やっとだった。
やっと三年経って木の葉の里も落ち着いてきた。
火影も五代目が就任して、皆がほっとしたところであった。
それはカカシも同じで、ようやく自分の時間や休みが取れ始めた。
だからこそ、とカカシは思う。
何とかイルカと元のような関係になりたい、少なくとも。
他にも希望というなの欲望も多々あったが第一目標は普通に話せるようになる。
これだった。


「そういえば」
カカシは、あることを思い出した。
「今晩あたりに親睦会と称した飲み会があったような・・・」
年度始めは何かと飲む機会が多い。
顔合わせや結成や団結の意味で士気を高める意味もあって飲み会が多かった。
今日も名称は忘れたが飲み会があるはずだった。
中忍、上忍、その他含めた合同の。
それにカカシも誘われていてメンバーに加わっていたはずだった。
「いいこと思い出した」
カカシの口元が緩む。
「きっとイルカ先生も飲み会に来るよね」
そしたら、とカカシは密かに計画を練る。
「隣同士の席になって酒の力を借りたらガードが緩んで、イルカ先生と普通に話せるかも」
いささか弱気な計画だったが。
カカシは決めたらしい。
「よし!酒の力を借りてイルカ先生と話そう計画実行!」
作戦名も、そのまんまだった。
しかしカカシは真剣だった。
「どうにかして深い溝を埋めて、イルカ先生の笑顔を見たい」
長らくイルカの笑顔を間近で見ていない。
遠くから気づかれないように、そっと見ていることは多々あったが。
「ということで」
カカシは印を結ぶ。
「夜に備えて英気を養おう」
ぽん、と木の葉を撒き散らして消えてしまった。
どこで英気を養うのか・・・。
それはカカシしか知らないことであった。



夜。
親睦会という名の飲み会に参上したカカシは、そわそわとしていた。
早めに来て、いい席をキープしていたのだ。
隣は、もちろん空いている。
大きな座敷に据えられた席に自由に座っていいというのも好都合であった。
「カカシが来るなんて珍しいわねえ、毎回、誘われてもすっぽかしているのに」
何故かカカシの周りには見知った面子が座っていた。
「飲み会なんて興味がなかったんじゃないの?」
そう言ったのは酒豪のくのいち、紅である。
「だなあ、こんな場所に顔を出すなんて明日は雷雨か竜巻か」
タバコの煙をくゆらせて同じ上忍のアスマも興味深げにカカシを見ていた。
「おまけに隣を空席にして誰か座ってほしい人でもいるのか?」
からかわれている。
「そんなのいいでしょうが」
カカシは紅をアスマに釘を刺す。
「ここに誰が座ったっていいでしょ、口を出さないでよ」
「はいはい」
「わかったわかった」
紅とアスマは、わくわくといった感じで面白そうにしていた。



時間になって飲み会が始まったのだがカカシの目当ての人は来なかった。
「欠席なのかなあ」
不安が募る。
「もしかして急に来るのを止めたとか」
しかし座敷を見渡してみると、ちらほらと空席がある。
遅れている人間もいることにカカシは少し安心した。
「イルカ先生、忙しいから遅れているだけだよな」
気長に待つことにする。
イルカが来たら何を話そうか、とカカシは頭の中で考える。
第一声は大事だ。
雰囲気が決まるといってもいい、第一声。
腕を組み、考え込んでいると視界の隅に待ちわびた人が入ってきた。
「イルカ先生!」
ぱっと顔を上げて入り口の方を見ると確かにイルカであった。
黒髪を頭で結ったその姿は、まさしくイルカである。
カカシは手を上げてイルカの名を呼ぼうとして気がついた。
イルカの隣には誰かがいる。
その誰かとイルカは一緒に来たらしい。
誰かとは昼間にイルカを『大事な友人』と、のたまってくれたヤマトであった。



「なんで、あいつがイルカ先生と・・・」
色んな可能性を考えてカカシの眉間に深い皺が寄る。
目つきが鋭くなっていた。
イルカは、ちらとカカシの方へを一瞬だけ視線を寄越した。
それだけでカカシは嬉しくなったのだが。
イルカが隣のヤマトへ内緒の話でもするように何かを耳打ちして、ヤマトが苦笑いをしている。
二人は「じゃあ、また後で」みたいな会話を交わして別れ、イルカは中忍が集まっている方へと行ってしまった。
「ああ〜」
せっかくイルカを待っていたのに、とカカシは、ひどくがっくりとしてしまった。
これでは何のために、ここに来たのか分からない。
そしてカカシがキープしていた空席にはヤマトがやって来た。
何食わぬ顔をしてカカシの隣に座ってしまう。
「何しに来たんだよ、ここはイルカ先生の席だ」
カカシは八つ当たり気味だ。
不機嫌を露にしている。
少々、大人気ない。
「いえね」
ヤマトは困ったように答えた。
「この座敷に入ってきた時、先輩が僕たちに手を振ったでしょう?」
「あれはイルカ先生にだけ振ったの」
素早く訂正を入れる。
「それを見たイルカさんが僕に言ったんですよ。『カカシさんがヤマトさんの席を確保してくれていますよ、優しいですね』って」
だから、とヤマトは続けた。
「この席に来ざるを得なかったというか・・・」
はあ、とカカシとヤマトは同時に溜め息を吐いた。
「俺はイルカ先生と飲みたかったのに」
「僕はイルカ先生と飲むつもりだったのに」
それから顔を見合わせて渋い顔をする。
「世の中、上手くいかないなあ」
カカシは、この夜、二度目のがっくりを経験していた。
計画が裏目に出てしまったのは明らかであった。



「ところでさ」
カカシには訊きたいことがあった。
これ幸いとヤマトに訊いてしまう。
「どうしてイルカ先生と一緒に来たんだ。しかも仲良そうに」
嫌味を込めて言うとヤマトは涼しい顔をして答えた。
「偶然、途中で会ったんです。僕もイルカ先生も仕事が長引いてしまって遅れただけですよ」
「・・・なんで『イルカさん』って呼ぶんだ?」
イルカとヤマトが親しい間柄のようで癪に障る。
「なんでって」
当然のようにヤマトは言う。
「ナルトたちの影響でイルカ先生と呼ぶ時もあれば、イルカさんと呼ぶ時もありますよ」
特に決っていません、との答えだ。
「あ、そう」
聞くだけ聞いたカカシは興味を失った。
なんだか聞けば聞くほど二人の関係に嫉妬してしまう。
イルカとヤマトは友人同士の関係ではあったが。
「はああ〜」
溜め息が後から後から漏れてくる。
そんなカカシを見かねたヤマトが提案してきた。
「先輩、消極的になってないで二次会にイルカさんを誘ったら、どうですか?」
「イルカさん言うな」
羨ましい呼び名を咎める。
「イルカ先生って呼べよ」
「はあ。で、イルカ先生を二次会に誘って親交を深めるようにしたらいかがです?」
「そうだねえ」
名案かも、とカカシが思った時だった。
近くに座っていた紅とアスマが、それを聞きつけた。



「二次会、いいわねえ。参加してあげてもいいわよ〜」
「俺も参加してもいいぜ〜」
二人は結構、酔っていた。
「じゃ僕も」
どさくさに紛れてヤマトも便乗してくる。
「お前らなあ」
カカシのこめかみが、ぴくぴくと引き攣った。
図々しいやつらだと思ったのだが、、でも、とカカシは思い直した。
俺と二人きりだとイルカ先生に警戒されるかもしれないから。
誰か、第三者がいた方がいいかもね、と。
親睦会が終わると、さっさと紅たちがイルカを二次会に誘っていた。
イルカは了承したようで嬉しそうにして、はにかんでいる。
少し酔っているようだったが楽しげな表情をしていた。
それから皆で連れ立って二次会をする店に向かうとする中、カカシは、それとなくイルカとの距離を縮めた。
すぐ隣の位置に来て肩を並べる。
久しぶりに近くで見るイルカに、どきどきと胸が高鳴った。
「イルカ先生」
思わず名を呼んでしまう。
いつもならカカシと極力、顔を合わせようとしないイルカであったが、この日は違っていた。
酒の所為なのか「はい」と返事をして、にこやかにカカシを見てくる。
しっかりと目を見てくれていた。
そして嬉しいことに「カカシさん」と言ってくれたのだ。
天にも昇る気持ちがあるとしたら、今、この瞬間だとカカシは思ったのだった。




内緒の話 その一
内緒の話 その三





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