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内緒の話 その一



カカシは目の前の光景を見て、密かに眉を顰めた。
目の前の光景、それはイルカとカカシの後輩であるヤマトが立ち話をしているというありふれた光景だった。
だがカカシにとっては、ひどく羨ましい光景であった。
書類を一抱え持ったイルカが手振りを加えて話をしているヤマトの話を楽しそうに聞いている。
時々、頷いたりして一言、二言、相槌を打ったり。
仲が良さそうだな、と思える光景であった。
カカシにとっては眩しすぎる光景。
もう何年かカカシはイルカと親しく話をするということをしていなかったから。



大きく息を吐き出し、大きく息を吸うとカカシは何気なさを装って話をしている二人に近づいた。
「こんにちは」
愛想よくイルカに話しかける。
後輩のヤマトには一瞬、視線を走らせただけ。
「・・・こんにちは」
話しかけられたイルカは返事はしたものの、先ほどとは打って変わって表情を固まらせたまま下を向いてしまった。
「あの、イルカ先生・・・」
更に話しかけてきたカカシを避けるようにイルカは頭を下げ「失礼します」と言うや否や、早足で去って行ってしまった。
まるで逃げるように。
去って行くイルカをカカシは未練たっぷりに目で追った。
廊下の角を曲がって姿が見えなくなるまで見ていた。



「ちょっと先輩」
イルカと話していたヤマトから抗議が上がった。
「僕がイルカ先生と話していたのに、割り込まないでくださいよ」
不満そうな声だ。
「せっかく、いい雰囲気だったのに」
「いい雰囲気ってなんだよ」
イルカの姿が見えなくなった途端、カカシの愛想は消えて仏頂面だけが残った。
「二人で楽しそうにしちゃってさあ」
カカシの言い方は嫉妬むき出しだ。
「話するのに、あんなに近づく必要ないだろう」
「そんなの僕とイルカ先生の自由ですよ」
それこそ先輩には関係ないしょう、と正論を振りかざされる。
「イルカ先生と話をしたかったら、すればいいじゃないですか」
前々から疑問に思っていたことをヤマトは言ってみた。
「いっつもイルカ先生が誰かと話をしているところに割り込もうとしてますよね」
ヤマトに突っ込まれてカカシは黙り込む。
「なんで一人で、一対一でイルカ先生と話そうとしないんですか」
厳しい突込みだ。
「あ、そういえば」
思い出したようにヤマトは言った。
「イルカ先生も先輩と話そうとしませんね。さっきは目も合わそうとしていませんでしたし」
ずばり指摘される。
「先輩、イルカ先生と何かあったんですか」
随分、長く黙り込んだ末、カカシは憂鬱そうな声で呟いた。
「・・・あったよ」
憂鬱そうな表情で吐き出す。
「正確にはあったらしい」



「あったらしい?」
興味津々に目を輝かせてヤマトは訊く。
「いったい何があったんですか」
滅多なことで弱みを見せない先輩の弱点を知るチャンスとばかりにヤマトはカカシを問い質した。
溜め息を一つ吐いたカカシは「絶対に誰にも言うなよ」と約束をさせてヤマトに、あることを話して聞かせた。
聞いたヤマトの第一声は簡潔だった。
「最低ですね、先輩」
「そう思う?」
「思いますよ、そりゃあ誰だって」
「やっぱり?」
「物事には順序ってものがありますから」
「そうだよねえ」
「イルカ先生が怒るのも無理ありません」
「それを言われると・・・」
「しかもはっきり覚えていなんて。他にも失態をしたかもしれないんでしょう?」
「多分、まあ、そうかもね」
肩を竦めたカカシにヤマトは容赦ない。
「それで後ろめたくて一人じゃイルカ先生に話しかけられなかったですか」
「まあねえ」
「いったい、いつからなんですか?」
こんな状態が続いていることを指して訊くとカカシは嫌そうに答えた。
「ん〜、ナルトが里を出る前からだから」
三年くらい、とさらりと言われる。
「三年!」
ヤマトは、かなり驚いていた。
「三年も先輩が一人の人を・・・」
絶句している。
「あのねえ」
むっとした顔にカカシはなる。
「それは失礼でしょうが、俺に」



「いや失礼しました」
とりあえずヤマトは失言を詫びる。
「まさか、先輩がと思いまして」
「ますます、失礼だねえ」
「すみません」
「俺は一途なの、実際は三年前のそのまた何年も前からなんだから。いつまでもいつまでも一人の人を好きなタイプなの」
「一途っていうより、しつこいっていうか執念深いっていうか」
ヤマトは、また失言している。
今度は、その失言をスルーしてカカシはヤマトに、ひそっと耳打ちした。
「だからさ、俺はイルカ先生と仲直りしたいわけ」
「はあ」
「俺とイルカ先生のために一席設けなさいよ、仲介役として」
「ええ〜」
今度はヤマトが肩を竦めた。
「お断りします」
「なんで!」
「イルカ先生は僕の大事な友人なので」
「先輩が困っている時に助けるのが後輩でしょうが!」
「友人を騙すようなことはしたくありません」
きっぱりと断れてしまった。
「仲直りしたいのなら正々堂々、正面からイルカ先生と話すべきです」
ごく当たり前のことを言ってヤマトは一礼すると行ってしまった。
ヤマトに言われたことを反芻してカカシは歯噛みする。
「それが出来るなら、とっくにやってるっての!」
それからヤマトが去った方向を睨みつけた。
「いつ、イルカ先生と友人になったんだ?それも大事なって何?」
色々と悩み多きカカシである。



「でも」とカカシは思い直した。
「イルカ先生と仲直りしたいのは本当だし」
ぐっと拳を握り締める。
「今更、遅いかもしれないけれど」
ちょっと弱気だ。
「また一からってことでイルカ先生にアタックしてみよう!」
気持ちを切り替えて新たな目標に向かって前進しようと心に決めた。
だってイルカ先生のことが好きだから。
ずっとずっと好きだから。
ある出来事、主にカカシの方に原因があるのだが、それからイルカと気まずくなってしまった。
すぐに謝ってイルカも許してはくれたのだが、しこりが残り溝が深まってしまった。
年々、年毎に溝は深まり回復の兆しは見つからない。
「まずは、どうしたらいいかなあ」
どうしたらイルカの心を解きほぐせるのか。
どうしたらイルカの心をカカシに開かせることができるのか。
真剣にカカシは考え始めたのであった。



内緒の話 その二



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