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ナチュラル



『ナチュラル47』



「あ、先輩」
月曜日に久々に本社に出社したカカシに後輩が声を掛けてきた。
「おはようございます、お久しぶりですね」
「ああ、おはよう」
欠伸をしながらカカシは挨拶を返した。
眠そうである。
「あー、もっと休んでいたかったなあ。やっと帰ってきたと思ったら仕事だなんて」
サラリーマン生活を嘆いている。
しかし、次の瞬間、不気味に微笑んだ。
「でも、まー、いっかー」
通勤カバンの中からカラフルな布で包まれたものを取り出し頬擦りする。
「イルカさんのお弁当があるしー、愛情たっぷりのー」
早く食べたいなあ、早くお昼にならないかなあ、朝っぱらから惚気ていた。
その様子に後輩はカカシとイルカの事情を知っているとはいえ、やや引いている。
「・・・ご機嫌ですね」
「まあねー」
しかし、イルカの名前で何かを思い出したらしい後輩は自分の席に戻り、何かを取ってきた。
小さなシャレた紙袋に入っている。
「あ、先輩。これ、イルカさんに渡してもらえますか?」
「はあああ?」
「ちょうどよくって言ったら、アレなんですが先輩が出社してくれましたので」
「なに・・・」
カカシの顔が、どんどん怖くなっていく。
先ほどまで上機嫌だったのが急降下だ。
「おい、こら」
低い声を出したカカシの目は据わっている。
「イルカさんに何を渡す気だ?俺がいない間に何、仲良くなっちゃってんの?あれほどイルカさんの携帯の番号とアドレス消せって言っただろうが」
「・・・嫉妬深すぎですよ、もう」
後輩は今度は呆れたようだ。
「僕がいくらイルカさんの番号とアドレス消しても、イルカさんから連絡来たらどうしようもないじゃないですか」
正論である。
「何を渡すってイルカさんから頼まれたものですよ。僕の方から押し付けた訳じゃないです」
最もである。
「それに先輩がいる間にも仲良くはしてましたし」
「とにかく駄目だ!俺はイルカさんに渡さないから」
カカシは勝手に決め付けた。
「イルカさんに近づくなっての」
「そう言われても」
困るなあ、と後輩は眉を顰めていたが「はい」とカカシに従った。
「先輩が渡してくれないなら、今日の昼にでも会うか会社帰りに会うかします」
「それも駄目だ!」
結局、カカシは後輩から頼まれた物をイルカに渡すことになってしまった。



「ったく、もー」
カカシは怒ったように、ぶつぶつ言っている。
「何で俺がイルカさんに渡さないといけないんだ」
じろっと後輩を睨みつけたりして。
嫉妬全開だ。
「本当に先輩って」
後輩が肩を竦めた。
「イルカさんに対して嫉妬独占欲束縛120パーセントなんですねえ、いや200パーセント?」
「悪い?」
「悪くないですけど」
風向きが怪しくなってきたので後輩は逃げの体勢だ。
「前に僕、イルカさんに聞いてみたんですよね」
「何を?」
「先輩が鬱陶しくないのか?って。嫉妬深いし独占欲強いし束縛し捲くりだし」
僕なら絶対に嫌です了見が狭すぎです、と余計なことまで言う。
「そしたら、イルカさん」
後輩はカカシのこめかみがピキピキと音を立てているのに気がついていない。
「こう言ったんですよね、イルカさん。先輩のそういうところ、ひっくるめて全部好きだって」
「・・・すんでのところで命拾いしたな」
「え?」
ようやく後輩はカカシの様子に気がついた。
気がついて後退る。
バキバキとカカシの指が鳴った。
「次にイルカさんにろくでもないこと言ったら容赦しないからな・・・」
「あ、はい。えーと肝に銘じます。じゃ僕、これで」
後輩は、そそくさと立ち去ってしまった。
「あいつは〜・・・」
怖い顔で後輩を見送りカカシは椅子に座る。
「帰ってくるなり何なの、いったい」
渡された紙袋を眺める。
中は見ない。
「イルカさんに渡して、見てもいいって言ったら見よう」
そういうところは妙に律儀なカカシだ。
袋はちょっとだけ重い。
「何だろ?」
激しく気になったが家に帰るまで我慢した。



「ただいま〜」
カカシが家に帰宅すると一足先にイルカが帰っていた。
「あ、お帰りなさい〜」
パタパタと玄関まで急いでくる。
「お帰りなさい、カカシさん」
「うん、ただいま」
帰ってきたら、抱きしめてキス。
ああ、いいなあ。
このイルカさんの体温、匂い、感触。
どれもこれも、カカシにとっては最上のものだ。
なくてはならない、欠かすことのできないもの。
ぎゅっと強く抱きしめてイルカを離し、カカシは後輩から渡されたものをイルカに差し出した。
「これ、お届け物です」
「あ、すみません」
イルカが申し訳なさそうに受け取った。
「すみません、お使いさせてしまって」
「いえいえ、これくらい」
「ヤマトさんから、カカシさんに渡したってメールが来て悪いなあと思っていたんです」 「メール?」
カカシの片眉が、ぴくりと跳ね上がる。
「あ、はい」
イルカはカカシの思惑など全く気がつく様子はない。
・・・イルカさんの携帯からヤマトの番号とアドレス消したら怒られるよなあ。
さすがにカカシも勝手に、そんなことはするつもりはないが。
「ところで、それ何なんですか?」
激しく気になったいたことを訊く。
「ああ、これ」
イルカの頬がほんのり赤くなる。
そこで、またカカシの片眉が更に跳ね上がった。
「これですね」
笑わないでくださいね、と言ってからイルカは話してくれた。
「ゲーム機です、それとゲームのソフト」
意外なものだった。
「俺、やったことがなくて。それを話したら、ヤマトさんがたくさんあるから貸してくれるって言ってくれて」
袋の中には、持ち歩ける携帯可能なゲーム機が入っていたのだ。
「ふーん、イルカさんゲーム好きなの?」
「最近、興味が出てきたんです」
恥かしそうに、でも嬉しそうにイルカは袋の中からゲーム機を取り出して見ている。
「カカシさんも一緒にやりましょうね」
イルカに笑顔で言われては断ることはできない。
「もちろん」
笑顔で返したカカシはイルカの頬にキスをした。



『ナチュラル48』



「結構、難しいもんなんですねえ」
ゲームって、とイルカは溜め息を吐いていた。
会社から帰って来て夜の寛ぎタイム、ソファーにカカシと並んで座ってゲームをしていた。
カカシはイルカの隣で読書中。
「簡単に出来ると思ったら負けてばっかり・・・」
「ん〜、そうなの?」
「はい」
イルカは、しょんぼりとしている。
カカシの後輩から借りたゲームをしているのだが、上手くいかないらしい。
「カカシさんは前にやったら、すぐ出来たのに。俺はぜんぜん上手くいきません・・・。反射神経鈍いのかなあ」
「まあまあ」
しょげるイルカが可愛いのと可哀想なのとの境目で揺れながら、カカシは慰めた。
「ゲームによって向き不向きがあるんじゃないですかねえ。それか別のゲームをしてみるとか?」
イルカがやっているのはシューティングゲームだ。
「ほら、RPGとかっていうのは?あと育成ゲームとか。そういうのの方がイルカさんには合っているじゃないの?」
「そうですねえ」
イルカは思案中だ。
「お借りしたゲームのソフトには、そういうのないです」
「そうなんだ」
「あ、そうだ!」
イルカが、にこっと笑ってカカシを見る。
その笑顔にカカシは、くらっとくる。
「カカシさんもゲームしませんか?」
「え、俺?」
「そうです」
うんうんと頷くイルカ。
「思い切ってゲーム機を二台買うんです。俺、カカシさんとゲームがしてみたいです」
「そうですねえ」
イルカに、そう言われればカカシもしてみたくなる。
悪くない。
「カカシさんと対戦ゲームとか。あと通信とかもしてみたいですね!」
面白そうだ。

「ネットで見たら、色んなゲームがありましたし。ゲーム機も色も種類も豊富で。カカシさんと色違いのゲーム機が欲しいです、俺」
日頃から物欲がほとんどないイルカの珍しい、おねだりだ。
カカシが断るわけがない。



「それは名案ですね」
カカシは、にっこりと微笑んだ。
微笑みついでに心中、思う。
・・・これで借りたゲーム機はいらない。
さっさと後輩に返却しよう。
最初から買えばよかったのだ。
なんで思いつかなかったのだろう。
「じゃあ明日、早速借りたゲーム機返してきますね。会社帰りに待ち合わせてゲーム機を買いに行きますか?」
「え、明日?」
急なことでイルカは戸惑ったようだった。
「明日ですか・・・」
「そう、明日」
早い方がいい、カカシにとっては。
「明日は金曜日だし、少しくらい帰宅が遅くても大丈夫でしょ。買物して夕飯食べて帰ってきましょ」
「いいですね」
イルカは同意してくれた。
「だったら」
すとっと立ち上がる。
「お菓子でも作ろうかな。ゲーム機を借りたお礼に手作りで悪いんですけど」
「ええっ!」
思いもよらぬ展開にカカシは思わず叫ぶ。
「やっぱり手作りは止めた方がいいですか?」
イルカは不安そうに訊いてくる。
「何か買ってお渡しした方がいいですかね?そうすると何がいいでしょう」
ヤマトさん何が好きなんだろ、なんて考え込んでいる。
「いえいえいえ、違います!」
カカシは慌てて手を振った。
「イルカさんの作るお菓子は美味しくて最高です。俺のために甘さを控えてくれて、本当にいつ食べても美味しいです!」
そうイルカの作るお菓子は美味しい。
甘いのが苦手なカカシのために、普通のものよりも断然に甘さが控えめにしてある。
ひとえにカカシへの愛ゆえだ。
「だったら・・・」
お礼に渡しても大丈夫ですか?と再び尋ねてくるイルカにカカシは素直に頷くことができない。
イルカの作るお菓子は人様にあげても市販のものと殆ど遜色はないと思う。
思うが、でも。
カカシは単に後輩にイルカの手作りと食べさせたくないのだ。
それだけだ。



「じゃあ、クッキーでも作ろう〜」
エプロンをつけたイルカはお菓子作りの道具を用意し始めている。
ちなみにエプロンはカカシが贈ったもので鮮やかなピンク色だ。
三角巾もお揃いの色になっている。
今更、後輩に食べさせたくないから作らないでは、とても言えない雰囲気で。
「あああ〜・・・」
嘆いてみるも、どうしようもない。
真実を話したいが、話したくもない。
心の狭い男と思われたくない、けど。
イルカさんは俺だけのものなのに〜。
なんで別の誰かのためにお菓子なんて作るんだ〜。
心の中で白いハンカチをギリギリと噛んで悔し涙を流すカカシ。
嫉妬の炎でメラメラだ。
明日は目に物見せてくれる・・・。
その嫉妬は誰にぶつけられるのか。
きっと何も知らない後輩に違いない。
ただただ厚意からイルカにゲーム機を貸しただけなのに。
おそらく理不尽な目に遭うに違いなかった。



『ナチュラル49』



「そういえば」
あることを思い出してカカシは真っ青になった。
顔から血の気が引く。
「イルカさんの誕生日・・・」
すっかり忘れていた。
「不覚・・・」
カカシは、がっくりと膝を突く。
「イルカさんの誕生日を忘れるなんて恋人として有るまじき行為!」
少し芝居がかっているのは無意識だ。
「ああ、もう生きている視覚がない〜」
とカカシは床に突っ伏している。
絶望していた。
「もう俺はダメだ〜」
瞳が潤んでいる。
泣きそうだ。
「カカシさん」
見かねたイルカが嗜めた。
「そんなに悲しまないでください」
「だって、年に一度のイルカさんの誕生日なのに」
大事な大切な恋人の誕生日なのに。
「いつもありがとうございます」
イルカは微笑んだ。
「毎年、カカシさんが俺の誕生日を一生懸命祝ってくれているのは知っています、とても感謝しています」
イルカはカカシを抱きしめた。
「本当に本当に嬉しいです」
「イルカさん」
カカシも、ぎゅーーとイルカを抱き返す。
「好きです、イルカさん」
「俺も・・・、好きです」
イルカの体温が、かーっと上がる。
「俺もカカシさんが好きです」
更にイルカの体温が上昇した。



「それに誕生日プレゼントは、もう貰っていますよ」
イルカは意外なことを言った。
「この前、一緒にゲーム機を買いに行きましたよね?」
そういえば、そんなこともあった。
「俺は、あれが誕生日のプレゼントだと思っていましたから」
お揃いのゲーム機を買い、それから時々二人で対戦などしている。
「カカシさんと一緒に楽しめることが一番です」
「イルカさん・・・」
イルカの言葉に感動するカカシ。
「イルカさん、大好き」
イルカの総てが好きだ。
イルカがいなくてはカカシんも存在は成り立たないほどに。
「ごめんね、忘れちゃって」
「カカシさん、忙しかったから」
気にしないでください、とイルカは気遣う。
「ううん、本当にごめんなさい。埋め合わせは必ずするから」
「いいんですよ」
それではカカシの気が済まない。
「遅れちゃったけど、イルカさんの誕生日お祝いしますから」
宣言した。
だから、今は。
「キスだけで」
我慢してね、と。
有り余る情熱と、有りっ丈の愛情を込めてイルカにキスをしたのだった。




ナチュラル44〜46
ナチュラル50〜53





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