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ナチュラル



『ナチュラル31』



「あの・・・、そんなに痛くないですから」
カカシの腕の中で身動ぎしたイルカは逃げようとしたのだが、あっさりとカカシに捕まってしまった。
無言でイルカを抱え上げたカカシは寝室へ直行する。
寝室に行くと慎重にイルカをベッドの上に下ろして、これまた壊れ物でも扱うように慎重に布団をイルカに掛けた。
布団と掛けると、ぽんぽんと軽く叩くのがカカシの癖だ。
さあ、安心して眠りなさいと言っているように。
だが、その日は違った。
布団を軽く叩いてから、カカシは怖い顔をしてイルカの寝ているベッドの脇に腕を組んで仁王立ちしたのだ。
・・・カカシさん、怖い。
顔を半分、布団に埋めて目だけ出してイルカはカカシを、そうっと見上げた。 ・・・・・・怒っている、よな?
「イルカさん」
地を這うようなカカシの低い声が聞こえた。
「・・・はい」
イルカはカカシの迫力に押されて小さな声で応える。
「足は、どのくらいの怪我なんです?」
「えっと」
イルカは目を何度も瞬かせた。
それから視線を泳がせる。
「ちょっと、ちょっとだけぶつけて捻っちゃって」
「痛みは?」
「そんなには・・・」
「痛いんですね」
「今は薬を飲んでいるので痛くないです」
「つまり、薬を飲まなければならないくらい痛いんですね」
「いえ、そうではなくて。そのう・・・」
カカシの誘導尋問に簡単に引っかかっているイルカだ。
確かに怪我した場所は痛いことは痛い。
会社にある医務室に行き、そこで応急手当をしてくれたときに後で痛むからと鎮痛剤を飲まされただけで。
実際に痛いか、どうかはよく分からない。
なんとなく、怪我しか箇所が熱を持っているような気がするが・・・。
明日、会社を休むのも病院に行くためであった。
それをカカシに告げるかは悩むところだ。
言ったらカカシは、きっとイルカの病院へと付き添いに来るだろう。
でも、黙っているのも、何だか嫌だった。



するとカカシの悲しげな声が聞こえた。
「イルカさん」
はっとして布団から顔を出すとカカシが悲しい顔をして自分を見つめていた。
目は寂しげだった。
「そんなに俺が信用できない?」
そう言われてイルカは頭を振る。
「そ、そんなことあるわけないです!」
カカシはイルカにとって世界で一番大事な人で、信用も信頼もしている。
「信用しています、とっても」
嘘ではない、本心だ。
「そう」
カカシは、ほっとしたように微笑んだ。
ベッドの脇に立っていたが、すっとイルカの寝ているベッドに腰を下ろしてイルカを覗き込んでくる。
手が伸びてきてイルカの髪を優しく撫でた。
そうして、微笑んだままカカシは優しく言った。
「俺を信用してくれて嬉しいです」
「あ、はい」
カカシの顔に見蕩れながらイルカは頷いた。
「じゃあ、全部、総て包み隠さず、どこでいつ、誰に何をされて、何が起こったのか、省略せずに詳細に事細かに欠片も残さず話してくれるよね?」
俺に、とカカシの笑顔はこの上なく優しかったのだった。




『ナチュラル32』



「あ、テンゾー?」
イルカが寝ているベッドの傍でカカシが電話を掛けていた。
「え、なに?ヤマトだって?そんなこと分かっているよ」
カカシの声は不機嫌そうだった。
「今は、そんなのどうでもいいから。それより、明日は俺は休みだから」
勝手に休みを宣告していた。
「イルカさん絡みかだって。そんなの、お前に関係ないでしょ」
『そんなこと突然に言われても・・・』
電話口から通話相手の困惑したような声が聞こえてくる。
「いいから!明日のことは任せたから。俺は緊急事態ってことで。え、なんだって?」
今度は相手の諦めたような声が聞こえた。
『以前も、こんなパターンありましたよね・・・』
「じゃ、そういうことで」
がちゃりと電話が切られる。
・・・あとでヤマトさんにはメールで謝っておこう。
布団の中でイルカは思っていた。



「じゃあ、イルカさん、俺も明日は休みです」
無理矢理とも強引ともいえるやり方で休みをもぎ取ったカカシは、ニコニコしている。
イルカと休みが重なり、一緒にいられるとなると終始、笑顔になっている。
しかし、この場合、理由が理由であったので笑顔はすぐに引っ込んだ。
「明日は、ちゃんと医者に行きましょう。それから、イルカさんの会社の目の下に隈がある不健康そうな人の電話番号教えてください」
そんなこと言ってきた。
「目の下に隈?」
「そうです。あ、咳がトレードマークの」
「あー」
すぐに思いついた。
カカシはハヤテのことを指しているのだろう。
でも、なんでハヤテの電話番号?
不思議に思っているとカカシが一片の曇りのない笑顔で言う。
「ちょーっと仕事の関係で聞きたいことがあるので」
「あ、そうですか」
容易くイルカは信じてしまった。
仕事の関係なら、会社宛てに電話すればいいことなのに。
ハヤテの電話番号をゲットしたカカシはイルカを寝かしつけると、その夜、早速、ハヤテに電話をして遅くまで話しこんでいたのだった。



『ナチュラル33』



「ごめんね、イルカさん」
カカシは、しきりにイルカに誤っていた。
「今日は休んで、一日、付きっ切りで看病したかったんだけど」
「そんな、いいんですよ。気にしないでください」
イルカはベッドの中から笑ってみせた。
「大人しくしていますから、仕事に行ってきてください」
「うん、まあ、行くけどね・・・」
イルカが寝ているベッドの脇に立っているカカシはスーツ姿でネクタイを締めて、凛としている。
これから出勤するという出で立ちであった。
「俺がいない間、無理なんてしないで寝ていてくださいね。昼飯は台所にありますから温めるだけです、夜は俺が帰ってきてから作りますから」
「平気ですってば」
イルカが言うとカカシが首を振る。
「だーめ。イルカさん、いっつも無理ばっかしているから心配なんです」
「・・・はい」
カカシの気持ちを汲んでイルカは神妙に頷いた。



本当はカカシは今日は強引に一日仕事を休む予定にしていたのだったが、やっぱり昼から出勤することになったのだ。
午前中はイルカの病院に付き添い、帰ってきてからイルカをベッドに寝かせて、無理をしないようにと言い聞かせの真っ最中であった。
「いいですか、イルカさん。怪我を治すにも病気を治すにも、たっぷりの睡眠と栄養のある食事が肝要ですよ」
カカシが寝ているイルカに顔を寄せてきた。
「だから、今日は一日、俺がいなくて寂しいでしょうけど、ゆっくりぐっすりと寝ていてください。日頃の疲れもあるんですから」
優しくイルカに言い、じっとイルカを見つめる。
その目は、とっても優しい。
・・・なんか照れるな。
照れくさくなったイルカは、そっと顔を半分だけ出して布団の中に潜り込み、目だけ出した格好でカカシを見上げた。
・・・カカシさん、心配しすぎなんだよなあ。
そこがまた、嬉しかったりするから困ってしまう。
カカシは何を思ったのか、そんなイルカを見て嬉しそうに額を撫でてくる。
くすぐったい。
「それと俺の限りない、海より深く山より高い愛情があれば、イルカさんの怪我なんてすぐに治りますよ」
気障な台詞をまんま言ってくる。
それが似合うのもカカシならではかもしれない。
・・・カカシさんって自分のことをよく分かってないんじゃ。
イルカは、ちょっと心配になった。
家の外で誰かに、こんな台詞を言っているとしたら相手はカカシに、いちころだろう。
しかし、カカシはイルカの心を読んだのか「こんなことを言うのは過去も未来も現在もイルカさんだけ、イルカさん限定、イルカさんオンリーですからね」と念を押してくる。
恥かしさが最高潮に達したイルカは顔が赤く染まった。
「わ、分かりましたから仕事に行ってください、遅れますよ」
「あー、はいはい」
カカシはお座なりに返事をしてイルカの額に、ちゅっとキスをした。
「すっごく早く帰ってきますからね、待っててね」
「はい、待ってます」
素直に返事をしたイルカに気を良くしたカカシは更にイルカにキスをしてくる。
額にこめかみ、瞼に鼻先。
そして最後に唇。
「じゃあ、行って来まーす」
ベッドに真っ赤な顔をしているイルカを残して。



カカシが部屋を出て行く直前、イルカは思い出したので訊いてみた。
「あ、そういえば今日は俺の会社と商談があったんでしたっけ?」
振り向いたカカシの顔は何ともいえないものがあった。
笑顔ではあったのだが、そこには底知れない何かがあったのだがイルカは気がつかない。
「ええ、そうですよ」
カカシは明るく答えた。
「イルカさんが電話番号教えてくれた目の下に隈がある、咳がトレードマークの人にも会います」
「そうですか、よろしく伝えておいてください」
「了解です」
屈託なく答えてカカシは部屋の外に消えた。
玄関の扉が閉まる音がする。
一人になったイルカは静かに目を閉じたのであった。



ナチュラル27〜30
ナチュラル34〜36−2





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