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ナチュラル



『ナチュラル23』



「ということで僕は無実です」
結局、ヤマトは洗いざらいカカシに白状してしまった。
カカシの言うとおりに、きりきり吐いてしまったのだ。
ヤマトの告白を聞いている間、カカシは怖い顔をしていたが聞き終わった後は、いっそう怖い顔になった。
「僕はイルカさんが困っていたので助けようとしただけで・・・」
「それは分かった」
カカシから低い声が漏れる。
顔は相変わらず怖い。
「で、ですね」
怖いカカシにヤマトはお願いしてみた。
「この件はイルカさんから先輩に話さないように口止めされているので、内密にお願いします」
頼みますから、とヤマトは懇願した。
そんなヤマトをカカシは、じろりと睨む。
嫉妬いっぱいの目で。
「イルカさんって呼ぶなって言っただろ」
「・・・じゃあ、海野さん」
「それもダメ」
「呼び名がないと不便じゃないですか」
「呼ばなくていい」
無茶苦茶なことを言っている。
「それにだ」
カカシがヤマトを指差した。
「俺を差し置いてイルカさんと秘密を共有していたなんて、許せん」
「そんなこと言われても・・・」
ヤマトは眉を八の字にする。
「だったら、イルカさんを助けない方が良かったんですか!」
「それはない!そんなことしたら明日の朝日が拝めなくなっていたのは確実だ」
はーっとヤマトは溜め息を吐いて、しみじみとして言った。
「恋する男は怖いですねえ」



「あったりまえだっての」
ヤマトをとりあえずは開放し、カカシも溜め息を吐いた。
「もー、イルカさんてば、そんな大事なことを俺に言わないなんて」
また溜め息。
額を押さえている。
「何かあったら、すぐに言ってねって言ってあったのに」
カカシの眉間に深い皺ができた。
「そんなに俺は頼りないかな〜」
ものすごく落ち込んでいる。
肩が下がっていた。
「あのー、先輩」
そんなカカシを見かねてヤマトが声を掛ける。
「イルカさん、先輩に心配を掛けたくないって言っていましたよ」
「そんなの知っているよ」
ヤマトを見ずにカカシは即答だ。
「あの人、自分で何とかできる、自分で何とかしようって、いっつも思っているもん」
「へー」
「芯はしっかりしている人だから、変に流されたりしないとは信じてはいるんだけど」
心配が尽きないらしい。
「問題は、イルカさんの意思に反する行為があった場合だよねえ」 深刻に考えている。
「あの人、真正面から向き合う直球タイプだから相手が卑怯な手を使ってまで、とは全くもって思ってないのよ」
「・・・それは、まあ」
何となくヤマトも分かる気がした。
疑うことをしない人だと思う。
「俺はねえ、本当にイルカさんのことが心配なの、不安なの、考えちゃうの」
何しろ、と深い溜め息をカカシは吐いた。
「イルカさんを気に入る人、もっと発展してイルカさんに淡い恋心らしきものを抱くやつが多くてねえ。ほーんと、困っちゃう」
落ち込んでいたカカシだが、次に顔を上げたときは不適な笑みを浮かべていた。
「そんなやつらを闇から闇に人知れず、葬ってきたからね。今回もイルカさんに知られず葬らないと・・・」
ふっふっふっと笑うカカシは不気味だ。
今まで何をしてきたのだろうか。
容易に推測できる。
そのことを考えて、ヤマトは改めてカカシは敵に回すまいと深く心に誓った。



『ナチュラル24』



「ただいま〜」
夕方、仕事を終えたカカシが早めに帰宅をするとイルカが既に帰宅していた。
「あれ、イルカさん、今日は早かったの?」
朝、顔を合わせた時には遅くなると聞いていた。
「ええ、まあ」
イルカは曖昧に笑う。
なんとなく不自然なものを感じたカカシは、よくイルカを観察してみた。
「あ!」
イルカは右手を背中の後ろに隠すようにしている。



「イルカさん」
イルカに詰め寄り、カカシはちょっとだけ険しい顔になる。
「手、見せて」
「え」
どきっとしたようにイルカが目を逸らす。
「右手。どうしたの?」
腕を掴んで後ろに隠してある右手を引っ張り出すと、そこには包帯が巻かれていた。
白い包帯が目に痛い。
新しいものだから今日、巻かれたものだろう。
「ど、どどどどどうしたの、これ?」
これが上擦るカカシ。
ひどく動揺していた。
「な、なんで、こんな怪我?大丈夫?痛くない?怪我したから早く帰ってきてたの?」
声が上擦っている。
「病院に行く?寝ていなくて平気なの?なんで俺に、すぐに連絡してくれないの?」
イルカが怪我をしたのなら、どこに居たって飛んでいくのに。
「大丈夫ですよ」
イルカは困ったように微笑んで、包帯を巻いていない手でカカシを抱きしめた。
「そんなに心配しないでください」
ちょっと転んだだけですから、と。
「俺は割りと頑丈ですから、滅多なことで壊れたりしませんからね」
そうはいうものの、カカシは心配で堪らない。
そして転んだ原因を何とかイルカから聞き出して、更に心配が募ったのだった。



『ナチュラル25』



イルカの怪我をした手をゆっくりと擦りながらカカシは涙目になっている。
涙は眦から零れ落ちそうに膨らんでいた。
「そんなに心配しなくて平気ですよ」
優しく微笑んでイルカはカカシの涙を指で掬い取った。
「さっきも言いましたけど俺は頑丈なんで」
「頑丈って言うけど」
カカシは、きっとイルカを睨む。
「頑丈でも怪我しているじゃないの。大事な人が怪我しているのに心配しないわけないでしょ」
怒っている。
「・・・すみません」
怒られてイルカは、しゅんとなってしまった。
「そんなつもりじゃなかったんですが」
俯いてしまって悲しそうな顔をする。
今度はカカシが慌ててしまった。
「ご、ごめんね、イルカさん」
怪我した手に触れないようにイルカを急いで抱きしめた。
「怒るつもりじゃなかったんです。ただただ、イルカさんが心配なだけで。イルカさんが怪我するくらいなら俺が怪我した方がいいのに」
「そんなこと言わないでください」
「だって本当だもん」
カカシは口を尖らせる。
「世界で一番イルカさんが大事でイルカさんを愛しているんだもん」
子供のような口調で、すごいことを言っている。
イルカが、ほんのり顔を染めた。
「・・・照れるじゃないですか」
もう照れている。
「ふふ、かわいいなあ、イルカさん」
ちゅっとカカシはイルカの唇に触れた。
甘い空気が流れる。
見詰め合った二人は惹かれるように唇を重ね合わせた。



「で、怪我の状態は?お医者さんに診てもらったの?」
イルカを腕に抱きしめたままカカシは訊く。
「捻挫です。二、三日安静にするようにと言われました」
「明日は仕事は?」
「休みますってか、休むように言われました」
ほっとカカシは息を吐いた。
安心したのだ。
「じゃあ、明日は家にいるんだね」
「はい」とイルカは頷く。
「ところで、どうして怪我したの?」
カカシの腕の中のイルカの体が僅かに強張った。
しかし、それも一瞬で、次には苦笑が浮んでいた。
「会社で重いものを運んでいてバランスを崩して転んでしまったんです」
「ふーん・・・」
「ドジですよね」
イルカは笑っていた。



『ナチュラル26』



「重いものって何を運んでいたの?」
カカシは妙に冷静に突っ込んできた。
さっきまで涙目でイルカのことを心配していたのに、こういう時は切り替えが早い。
頭の回転が人より数倍、優れているのだろう。
嘘を見破ることには長けている。
イルカはカカシの前で偽ることが苦手であった。
偽るといっても悪意はない。
ただ、カカシを必要以上に心配させたくなくて、言わなかったことがあったり黙っていたり、ちょっとだけ表現を変えて言ったりするだけだ。
「ええと」
まっすぐにカカシに見つめられて、うっかり視線を逸らしそうになってしまうのをイルカは堪えた。
余裕ぶって、微笑んで答えた。
「書類・・・ですよ」
本当は書類じゃなかった。
「ほら、廃棄しなければいけない書類ってありますよね、それが大量にあって運んでいたんです」
本当は何も運んでなんかいない。
「俺の会社では何年かに一度、大量に廃棄するんですけどね」
ドキドキする心臓を宥めながら、なんとかカカシの視線をやり過ごす。
もしも、本当のことを言ったら・・・。
胸の中でイルカは溜め息を吐いた。
怒って悲しむだろうなあ。
心配どころの騒ぎじゃない。
カカシが苦しむのは本意ではなかった。



「ふーん」
カカシは得心のいってない顔でイルカを眺めた後に、質問してきた。
「それ、ほんと?」
「え?え、ええ」
不意を突かれてうろたえたがイルカは、こくこくと頷いた。
「本当です」
「俺に言ってないことはないですか」
「な、ないですよ」
笑顔が引き攣ってきた。
「イルカさんは・・・」
カカシは慎重に言葉を選んで言ってきた。
「嘘は吐かないけれど、たま〜に黙っていることがあるからなあ」
恋人だけあってイルカのことを熟知している。
「黙って自分だけ我慢すればいい、な〜んて思っているでしょ」
「・・・まさか」
「隠し事はなしだよ」
「・・・もちろんです」
大きく頷いたものの、心臓はばくばくしている。
・・・どうしよう。
イルカは、ぶるっと震えた。
本当は・・・。
思い出していた。
本当は書類整理に地下の倉庫に行ったら、何故か同僚がついてきて足引っ掛けられて転ばされた、なんて言えないよなあ。
イルカの笑顔は引っ込んでしまって、いつの間にか難しい顔になっていた。
それをじっとカカシが見つめているのも気がついていなかった。




ナチュラル19〜22
ナチュラル27〜30





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