Time is money 6
二人の間には空気は張り詰めていた。
触れたら切れてしまいそうな緊張感がある。
カカシはイルカを見つめたまま、表情を変えずに微動だにしない。
イルカが自分の望む答えを出すまで待つつもりなのか。
そんなカカシを見てイルカは悩んでしまう。
カカシ先生、怪我して心細くなっているのかな。
どうしたらいいんだろう、こういう時こそ誰か心安らぐ人と過ごすべきなのに、とイルカが眉を潜めて考え始めた、その時だ。
ぐーっ、きゅるるーっ。
イルカの思いとは裏腹に、イルカの腹が鳴ってしまった。
ぐーっきゅるるーっという音は、自分を主張するように何回も鳴り響く。
止めようとしても止まらない。
そして二人の間にあった緊張感が、あっという間に霧散してしまった。
張り詰めていた空気は、間が抜けたものに変わってしまう。
「あ、あははは〜。」
イルカは自分の腹の音が恥ずかしくなって乾いた笑いが出てしまった。
猛烈に恥ずかしい。
「そういえば、俺、晩飯まだでした。」
「あ、そうなんですか。」
カカシも拍子抜けしたような顔になる。
「ええ、これから家に帰って何か簡単に作って食べます。明日の仕事の準備もしないと。」
急速に日常の空気が戻ってきた。
「あ、カカシ先生はもう晩飯食べましたか?」
「え?ええ、俺はもう済ませました。」
「じゃ、俺、帰りますね。」
改めてイルカが玄関に向かうのを、今度はカカシは止めなかった。
カカシは玄関までイルカを見送ってくれた。
「イルカ先生、今日はありがとうございました。」
カカシが丁寧に礼を言う。
「いえ、俺の方こそ、お邪魔しちゃって。」
照れたようにイルカが言うとカカシは静かに首を振る。
「そんなことないです。イルカ先生が来てくれて本当に嬉しかった。」
カカシの顔を見ると、本心からそう思って言っているのが分かった。
目が、とても優しい。
俺に、こんなことを言うなんて、カカシ先生寂しいんだな。
「こんなことくらいお安い御用ですよ。」
言いながらイルカは少し胸が痛くなる。
誰か、大切な人ができるといいのに。
そしたら俺は必要なくなるけど、それがカカシ先生のためだ、きっと。
少し複雑な気持ちになるが仕方がない。
しかし、そんなイルカの気持ちを見透かしたようにカカシが言った。
「俺ね、イルカ先生と一緒だと楽しいんですよ。できたら、さっき言ったことは忘れないでほしいな。」
「さっき言ったことって、泊まるとかなんとかのことですか?」
「そう。」
「なあんだ。」
イルカは肩の力を抜いた。
「それなら怪我が治ったら幾らでもできますよ。それまでに俺の家も片付けておきますから、俺の家に泊まっていいですし。」
イルカは明るく笑って、気軽に答えた。
逆にカカシが複雑な表情をしながら「そうじゃないんだけどな。」とぼそりと言っている。
「え?」
「気をつけて帰ってね、って言ったんです。」
そして別れ際、カカシはイルカの耳に顔を近づけて囁いた。
「また来てね、イルカ先生。」
イルカはカカシに別れの挨拶をして手を振ってから家路を急ぐ。
空を見ると満点の星が光っていた。
白い息を吐きながら夜空を眺めながら歩くと、幾つか星が流れていく。
イルカは心の中で願う。
カカシ先生に大切な人ができますように。
そして、その人と里での時間を一緒に過ごせますように。
心から、そう思ってお願いした。
それからついでに自分のこともお願いしてみる。
自分にも、いつかでいいから大切な人できますように。
ちょっぴり欲張りなイルカだった。
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