Time is money 11
冷たくて気持ちがいい。
そんなことを、うつらうつら思いながらイルカの意識は覚醒し始めた。
額が冷たくて、ひどい頭痛も治まったような気がする。
喉が渇いた、冷たいものが飲みたい。
そう思ったイルカの唇に、グラスの縁が当てられて傾けられた。
口の中に、冷たく爽やかな飲み物が流れ落ちる。
イルカが望んでた冷たいものが体を潤していった。
それは、イルカの体が求めていた水分で体中に心地よく染み渡っていく。
飲み終わったイルカは、はあ、と息を吐き出してから目を開けた。
目を開けると、いつもイルカが目にしている見慣れた天井が広がった。
ここ、俺の部屋?
ベッドの布団の感触も枕の感じも、自分がいつも使っているものと同じだ。
どうして?
がばり、と起き上がると額にあった濡れたタオルが落ち、がん、と頭の中で何かが響き鈍い痛みがくる。
余りの痛さに、イルカはベッドの上で頭を抱えた。
「すげー、頭が痛い。」
呟いて、再び、ベッドに横になることを余儀なくされた。
「あー、駄目ですよ、イルカ先生。」
そんなイルカの耳に聞き慣れた声が聞こえた。
声のした方を見ると、カカシが手にグラスを持って立っている。
「カ、カカシ先生?」
呆然としてイルカはカカシを見上げた。
「なんで、ここに?って、あれ、俺、いつの間に自分の家にいるんだろ?」
「まあまあ、落ち着いて、イルカ先生。」
カカシが妙に手馴れた様子でイルカに口にグラスを持ってきた。
イルカの首筋に手が添えられて、カカシの手で頭が支えられる。
されるがままに、イルカはグラスに口を付けた。
喉に流れ込んできた飲み物は、先程、イルカが飲んだ飲み物を同じだった。
冷たくて爽やかで美味しい。
喉を鳴らして飲み干したイルカをカカシは満足そうに眺めてから言った。
「イルカ先生、五代目の酒には気をつけなきゃ駄目ですよ。」
「え?」
「あの酒は悪酔いするんです。」
「はあ。」
イルカは何が何だか、訳の分からないまま頷いた。
「すみません。」
「分かって貰えればいいんです。」
カカシは、なんとなく偉そうだ。
ここは俺の家なのに。
どうしてだろう?
「あのう、カカシ先生。」
「何ですか?」
イルカは当然の疑問を口にした。
「なぜ、俺の家にいるんですか?」
「なぜ?」
カカシが怒った様子でイルカに逆に質問してくる。
片眉が、ぴくりと動き、つり上がっていた。
「なぜだ、と思いますか?」
「・・・え?なぜって、それは、えーと。」
きつい視線を受けてイルカは、しどろもどろになってしまう。
「なぜ、俺がイルカ先生の家の前で朝まで、イルカ先生の帰りを待っていたと思いますか?」
「朝までですか?」
「そうです。探しに行こうと思ったけど、あいつに『好きな人に酷いことしちゃ駄目よ。』って言われて。」
「あいつ?」
「ほら、イルカ先生も見たでしょ?昨日、廊下で、たくさんの書類を抱えていた時に。」
「ああ・・・。」
イルカは思い出した。
書類を運んでいた時にカカシと話していた、くの一。
あの女性はカカシの好きな人だと思ったのだ。
だから。
そのことを告げるとカカシの眉が更につり上がった。
「あいつは春には結婚するんです。話していたのは一楽のことで。」
「一楽?ああ、ラーメンが好きだとか。」
「そうです。それで俺の好きな人もラーメンが好きだから、それで盛り上がって。」
「俺の、好きな人?」
では、あの女性はカカシの好きな人ではないのか?
ほっとすると同時に新たな不安も湧き上がる。
他に好きな人が存在するのか?
イルカは、自分を見つめるカカシの顔に見入ってしまう。
そして言った。
遂に言ってしまった。
「カカシ先生の好きな人って誰なんですか?」
「誰って、それは。」
カカシは小さな溜め息をついた。
それを見てイルカは萎縮してしまう。
「ご、ごめんなさい、分からなくて。俺って、そういうこと疎いんです。」
それを聞いたカカシは、ふと優しい目でイルカを見た。
「知っています。イルカ先生のことなら何でも。」
カカシの優しい目がイルカの顔に近づいてきた。
「好きなんです。」
イルカ先生のことが、とカカシの唇がイルカの唇に、そっと触れる。
「イルカ先生、好きです。」
カカシの囁き声が、低く甘く、イルカの耳に響いた。
Time is money 10
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