その手の温もり9
眠りから目が覚めたイルカはベッドに起き上がった。
目が覚めたといっても目が開くわけではないが。
腹の怪我も、だいぶ癒えている。
起き上がったイルカは近くに誰かの気配を感じて、手探りでベッドの周辺を探ってみた。
すると、ふわりとイルカの手に触れるものがある。
髪の毛?
髪が手に触れたということは誰かの頭がベッドの上にあるのだろうか。
静かに髪の毛を手を触れていくと顔らしきところに行き着いた。
この人が、いつも俺の傍にいてくれる人、だよな・・・。
イルカが気配を探ると、すうすうと規則正しく息を吐き出し、緊張が解けているような状態なので、もしかしたら寝ているのかもしれない。
疲れているんだ、きっと。
自分の世話を何くれとなくしてくれているから、と思うと申し訳なくなってくる。
初対面なのに、すごく俺のことを気に掛けてくれる、不思議な人。
そして自分も容易く心を許してしまっている。
寝ている人物を前にして、好奇心を押えられなくなったイルカは、ベッドに突っ伏していると思われる人物の髪や顔を触れてみた。
髪は短くて柔らかめで、顔は・・・。
指を忍ばすと顔は額当てで隠しているようであった。
忍の中には額当てで顔を隠す者も複数いるので、とりわけ珍しいものでもない。
でも、額当てで顔の左半分、特に左目を隠しているようだけど。
それに、とイルカは更に顔半分、下のほうを触ってみる。
・・・布?覆面でもしているみたい。
つまり、とイルカは推理した。
この人は、額当てで左目を隠して、それで顔半分を覆面で覆い隠していて・・・。
誰かに似ている。
イルカの頭の中に、ある人物が思い浮かんだ。
まさか、カカシさんじゃないよね・・・。
でも、と頭を振る。
チャクラは似ているけれど、なんとなく違うし、手も素手でいつも触れてくる。
トレードマークになっている指なしの手袋してないし。
第一、カカシさんだったら、何で最初から名乗らないんだろう。
お互い、知っている仲なのに。
回りくどいことをして、どうして自分の名前を偽るなんてしなくていい筈だ。
胸に沸いた疑問はイルカの中に、ずっと蟠って残ってしまった。
ある朝、早くカカシは五代目火影の綱手に呼び出された。
イルカの病院へ行こうとする直前である。
緊急だということなので渋々、行くと任務を言い渡された。
「え〜。」
カカシは勿論、抗議した。
「約束違反ですよ。俺、行きません。」
「駄目だ。」
綱手は恐い顔をしてカカシを睨む。
「緊急かつ重要な任務で、どーしてもカカシでなけりゃあ、いかんのだ。」
「でも、俺、イルカ先生のところに行かないと。そっちのが重要です。」
譲る気のないカカシは、ごねた。
「あー、任務といっても今から行けば普通でも昼過ぎには帰ってこれるから、カカシが本気を出せば昼前には帰ってこれるだろ。」
ぴらり、と綱手は任務依頼書をカカシに見せる。
「ほら、お行き。この任務をしたら、おまけの休暇をあげるからさ。」
「うーん、だったら、しょうがないですねえ。」
カカシは任務依頼書を受け取り、さっと目を通すと懐にしまう。
「では、ちゃっちゃっと行って来ますね〜。」
のんびりと言っている割には、急いで姿を消そうとした。
「あ、カカシ。」
綱手が慌てたように呼び止める。
「ちょっと、訊きたいことがあるんだが。」
「なんでしょうか?」
「あ、ええと、ほら、イルカのことなんだけどさ。」
「イルカ先生なら順調に回復してますよ。」
「そうかい、ならばいい。私も、今、忙しくて診てやれないし・・・。」
「んじゃあ、ま、そういうことで。」
それだけ言うとカカシは、どろんと掻き消えた。
「あっ!そうじゃなくてさ、イルカに渡されたものがあるだろうから、それが欲しかったのに・・・。」
綱手は一人、盛大に肩を落としたのだった。
その手の温もり8
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