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その手の温もり10



綱手の予言どおり、任務に本気を出したカカシは昼前に里に帰って来た。
任務の報告も報告書を受付けに提出して、すぐに病院に向かう。
朝、イルカ先生のところに行けなかったけどイルカ先生、ちゃんと朝ご飯食べたかなあ。
そんなことが気に掛かる。
寂しがってないかなあ。
何しろイルカは、目と耳が不自由な状態だ。
誰かが、傍にいないと心細いに違いない。
例え、傍にいる人間、それがカカシと思われてなくてもイルカが寂しい思いをするのは嫌だった。



俺だって解ってほしいけど、でも、まあ・・・。
カカシは諦めと共に悟った。
俺じゃなくて、いいかなあ、イルカ先生が寂しい気持ちでいなければ。
でも、とカカシは悩む。
数年前、初めてキスをした時から想っている人だ。
簡単には諦めきれない。
もう数年に渡ってイルカに恋をしているのだ。



だって本当に好きなんだ。



自分の心に言い訳と弁解を交互にしながらカカシはイルカの病室に向かう。
しかし、そこにイルカの姿はなかった。
「あれれ。」
病室のドアを開けたカカシは眉を潜める。
「いない・・・。どこに行ったんだろう・・・。」
姿の見えないイルカに急に心配になった。
「まだ、退院のはずじゃないし。もしかして、傷口が悪化して手術とか・・・。」
考えは悪い方へと傾いていく。
そこへ通りかかった看護士がカカシに声を掛けた。



「あ、海野さんの付き添いの方ですね。」
「そうだけど。」
「海野さんなら太陽に当たりたいから、と言って、先ほど中庭に行かれましたよ。」
「あ、そうなんだ。」
カカシは、ほっとしながらも、はっとした。
「もしかして一人で?」



「ええ。」と看護士は渋い顔で説明する。
「一緒に行きましょうと書いて伝えたんですけれど、皆さん忙しいと思うのでリハビリがてら一人で行きたい、と仰って。」
忍者だから病院内くらい手探りで移動するくらいできる、とイルカは言い張ったらしい。
「何かあれば、すぐに声を出して誰かに呼びかけるようには海野さんには念を押しました。」
そうしてイルカは一人で中庭の方に向かったというのだ。
無謀といえば無謀であるが、イルカらしいといえばイルカらしい。
病院の中ならば誰かしら駆けつけますので、の言葉を最後に聞くと、すぐにイルカの後を追いかけてカカシは中庭の方へと向かったのだった。




イルカは手探りだけで壁伝いに病院内を歩いていたが、それは思っていたよりも難しいものであった。
「ここ、どこだろう・・・。」
すっかり道に迷ったりしていた。
一人で行くと言った手前、誰かに助けを求めるのは、ちょっとあれである。
「あれって、つまり恥ずかしいんだよな〜。」
イルカは小声で言って眉を八の字にする。
「忍者だって見栄をはった手前もあるし、いや、本当に忍者なんだけれどね。」
ちょっぴり後悔もしていた。



でも、とイルカは持ち前の明るさで気を取り直す。
「ずっと病室で寝っぱなしだったし、体を動かすのは楽しいよな。」
前向きに考えた。
「こんな状態になるのって、中々ないし、修行だと思えばいいよな〜。」
こんな状態とは目が見えず耳が聞こえずという状態だ。
気楽に考えたイルカは再び、壁伝いに歩き始めた。
「ん?」
急に壁が消え、何もない空間が現れてイルカは戸惑う。
「これは・・・。」
恐る恐るイルカは踏み出したのだが、その空間には何もなかった。



「わっ。」
イルカは叫んだ。
もしくは「ぎゃあっ。」とか「うあっ。」とかだったりしたのかもしれない。
決して今、一番の願望である「ラーメン食べたい。」ではなかったと思う。
それは兎も角として、イルカが踏み出した場所は階段であった。
階段の一番上で足を踏み外したイルカは、当然、転がり落ちるはずである。
あったはずのに、イルカの体は宙に浮き転がり落ちるのを誰かに防がれた。
その誰かはイルカの体を後ろから抱きとめて、大きく息を吐いている。
後ろで支えてくれる人物の胸の動悸がイルカにも伝わってきて、イルカも釣られて動悸が早くなってしまった。
すごく、どきどきしてしまう。



誰だろう?
腰に回された手に、そっと触ってみる。
その手は大きく力強い。
イルカを抱きとめる手には、指なしの手袋をしていた。
この手袋は・・・。
心を落ち着けたイルカは、相手のチャクラを感じとってみる。
そのチャクラは、よく知っている人物のものと同じチャクラであった。
すなわち、はたけカカシ本人のものだった。





その手の温もり9
その手の温もり11




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