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その手の温もり4



イルカと初めて会ったのは十数年前だ。
お互いに、まだ十代だった頃。
カカシは、よく覚えている。



上忍数人と任務に出てカカシが単独で敵の行動を探索していた時だった。
ある場所で待機している仲間の上忍から里からの伝令の中忍が敵に囲まれているらしい、それがカカシのいる場所から近かったらしく助けに行くように指示された。
すぐに向かったカカシであったが、そこで敵に囲まれて身動きの取れなくなっていたイルカを発見したのだ。
イルカは敵の上忍と思しき忍に囲まれていても相手を気丈に睨みつけ反撃の機会を窺えっていた。
そして一瞬の隙をついてイルカは反撃に出たのだが、敵は上忍で多勢に無勢でイルカは、これまた一瞬で敵にやられてしまったのだ。
あっという間に武器を取られて体に傷を負い、しかし眼だけは強い意志の光が点っていて精神だけは決して負けていなかった。



イルカの強い眼の光に惹かれて敵とどう対峙するのか続きを見てみたかったカカシだったが、イルカが殺されては元も子もないので姿を現して、瞬時に敵を撃退した。
その様子をイルカは呆気に取られて見ていた。
そして敵が去ると、ぺたりと地面に座り込んだのだ。
腰が抜けたらしい。
虚勢を張っていたのだ、と近づいたカカシは分かった。
イルカの体が微かに震えていたからだ。



「もう大丈夫だよ。」
落ち着けるためにカカシは声を掛けた。
「安心して。」
カカシの声にイルカは、がくがくと頷いたが動揺が収まらないらしかった。
どきどきする胸を押えていた。
「水でも飲んだら落ち着くよ。」とカカシは持っていた携帯用の水筒を手渡したのだがイルカは、手が震えて水筒の蓋を中々開けることができない。
「あーもう。」
焦れったくなったカカシはイルカから水筒を奪い返すと蓋を開けた。
再び、イルカに水筒を渡そうとしたのだが、動揺しているイルカは水を上手く飲めず水を零すかもしれない。
任務において水は貴重だ。



考えたカカシは水を自分の口に含むとイルカの顎を持ち上げて、自らの口とイルカの口を合わせた。
驚いたイルカが何かを言おうと口を開けた時を狙って、水をイルカの口に流し込んだ。
イルカが水を嚥下するのを確認してから口を離す。
口を離したイルカの顔は上気して息が上がっていたのだがカカシは特に気にもしなかった。
妙齢の女性と口と口を合わすのなら後々、誤解を受けそうな気がしたが相手は男性、同性だから問題なし、と考えたのだ。



何ゆえ、その時そんなことを考えたのか、カカシは今でも疑問に思っている。
同性だから、口を合わせる行為をしても大丈夫だとか頓珍漢なことを考えるに思い至ったのか。
イルカだったからなのか・・・。
思えばイルカとの、その口移しで水を飲ませる行為がカカシの人生初の所謂、キスだったりしたのだ。



あれが運命だったんだろうか。
背に負っているイルカの様態を顔を僅かに後ろに傾けて見る。
余り様態に変化はない。
カカシは少しだけ足を速めた。
そして続きを思い出す。



水を飲んだ、いや飲まされたイルカはだいぶ落ち着いたかのように見えたのだが、今度は逆に別のことに動揺していた。
カカシに口移しで水を飲まされた、ということにだ。
イルカのカカシと同様、人生初のキスだったらしく、なんだか見ようによっては泣きそうな顔になっていた。
あの顔が可愛くて、きゅーんと胸が甘くて痛くなったんだよな。
少々、乙女チックになったことをカカシは思い出す。
で、惚れたというか好きになったというか、心を持っていかれたというか。
色々言い訳してみるが要するに恋をしてしまったのだ。
イルカに。



そのことについては後悔していないし、寧ろ、その運命に感謝しているくらいだ。
そんでもってイルカ先生が伝令だったから俺と一緒に仲間が待っている場所まで行くことになったんだけど。
行く途中でカカシは倒れてしまったのだ。
単純にチャクラ切れだった。
連日の任務で激務をこなして体力共に消耗していた。
あの頃から燃費が悪かったんだな、俺・・・。
余計なことも思い出してカカシは苦虫を噛み潰したような顔になる。



カカシが倒れたところにタイミング悪く、先ほど追っ払った敵が来襲してきてイルカ先生が守ってくれたんだっけ。
いつも誰かを守る側だったのに守られるのは初めてでカカシは、やけに感動した。
イルカは果敢に戦ってくれてカカシを護ってくれたのだ。
一人の時と違い、護るべき者がいた時のイルカは強かった。
そこにも惚れちゃったんだよね〜。



敵を一人で蹴散らしたイルカはチャクラ切れのカカシを背に負うと仲間の元に連れて行ってくれた。
連れて行くはずが連れて行かれて、そこでカカシの記憶は途切れている。
チャクラ切れのカカシは気がつくと眠っていて起きた時にはイルカの姿はなかったのだ。



それから、ずっとカカシは普遍的なイルカへの想いを抱き続けて、十数年の後、イルカと再会したのだ。
再会した時、イルカ先生は俺のことを覚えていなかったようだけど。
ちょっと残念だった。
でも、いいんだ。
カカシはイルカを、しっかりと背負い直した。
俺たち、また逢えたんだからね。



木の葉の里が見えてきた。
病院へ、とカカシの足は更に速くなり背に負ったイルカの回復を、ひたすら願っていたのだった。




その手の温もり3
その手の温もり5




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