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その手の温もり3



「それは、そうだと思ってはおったが・・・。」
パックンは気が乗らないよう様子で返事をした。
主人であるカカシのイルカへの一見、過剰なまでの親切に見える独占的な態度やイルカといる時の普段からは思いもつかぬ懇切丁寧な言動を、ちら見して推測はしており前々から、もしかして主人は同性のイルカに恋心を秘めているのではと疑惑を持ってはいた。
疑ってはいたが、どうやら主人であるカカシの恋愛模様は知りたくはなかったらしい。
ひどく顔を顰めている。



しかし、今のカカシの告白は良くも悪くもイルカの耳には届いてはいなかった。
耳が聞こえない上に具合が悪ければ、当然である。
カカシは適確な判断で素早く、忍犬に指示を出した。
「アスマの所に戻って、先に里に帰ってイルカ先生の病院の手配をするように伝えて。俺はイルカ先生を連れて行くから。」
「分かった。」
パックンは頷いたものの動こうとはせず、渋い顔をしてカカシを見る。
「カカシよ。」
「なに?」
「身分を偽ると先ほど言っておったが。」
通りすがりの中忍、というカカシの言葉を指しているのだろう。
「嘘をつくと碌なことがない。きっと後悔するぞ。」
それだけを忠告するように言うとパックンは今度こそ姿を消した。



「嘘、ねえ。」
カカシがイルカの怪我の具合を見ながら、パックンの忠告に暫し考え込んでいると微かな声がした。
「・・・誰か、いるのか?」
苦しそうな声はイルカから発せられている。
「犬の気配が消えた・・・。そこいるのは・・・。」
ふらっとイルカの手が辺りを探るように上がりかけた。
その手をカカシは柔らかく捉えると、イルカの手の甲を安心させるように撫でる。



「・・・人?さっきの忍犬は・・・。」
カカシはイルカの手を宥めるように一度撫で、イルカの手を引っくり返すと手の平に自らの指で『木の葉』と書いた。
次いで、迷ったが『中忍』と書く。
何回か繰り返すとイルカは苦しい意識の下で理解したようだ。
「木の葉の中忍・・・?」
イルカの問いにカカシは手を撫でることで答える。
反射的にカカシの手がイルカの手に、ぎゅっと力強く握られた。
縋るように、まるで助けと求めるかのごとく。
カカシは少しの間、イルカの気の済むようにさせてやり、頃合いを見計らってからイルカの手の平を開いた。




そこへ『分かっている』と一言、ゆっくりと書く。
カカシが現在のイルカの状態や事情を忍犬から聞いて分かっていると考えて安心したのか、里の仲間と会えて安心したのか、ぐったりとしてしまったイルカは凭れていた木の幹から体が揺らぎ倒れそうになってしまった。
「あ、イルカ先生。」
慌ててカカシはイルカの体を支える。
ちょうどイルカはカカシの胸に寄りかかり腕の中に、すっぽりと収まる形になった。



成り行きでイルカを抱きしめることになったカカシは少し、どきどきする。
こんな時なのにイルカにキスをするチャンスかも、と不謹慎なことを考えていた。
だが、その顔はすぐに真剣なものに変わる。
「熱がある。」
イルカの体を支えたカカシは呟いた。
早く里に帰って病院へ、と気が急いてくる。
「・・・あの、・・・すみ、ません。」
カカシの腕の中でイルカは途切れ途切れに訴えてきた。
「俺のベストの、右胸の内ポケットに大事な書状が・・・。それを火影さまに・・・。」
それだけを言うと本当にイルカは力が尽きたのか動かなくなってしまう。
カカシはイルカから言われたとおり、ベストの内ポケットから火影宛の書状を取り出し自分の懐に仕舞いこんだ。
荒い息遣いだけが聞こえてカカシは急ぎイルカを背負うと、イルカの傷に障らぬよう揺れないようにと注意しながら慎重に里へと駆け出したのだった。



そして駆け出しながらカカシはイルカに初めて会ったことを思い出していた。
確か、あれは月の綺麗な晩だったな、と。




その手の温もり2
その手の温もり4




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