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その手の温もり17



「俺の話を聞いたら、カカシさん、きっと『くっだらない〜。』と思いますよ。」
「そんなこと思いません。」
「きっと笑うと思います。」
「笑いませんて。」
「俺のこと、馬鹿なやつだなあって思うかも・・・。」
イルカは話すと言いながら、何とかして先延ばしにしようとしている。
「あー、もう!」
鼻先が触れるほど近づけた顔をカカシは、もう少しだけ近づけた。
カカシとイルカの額と鼻先がくっ付く。
唇も触れそうになる。
「往生際が悪いですよ、イルカ先生。」
窘められて、苦い顔をしたイルカは今度こそ話し出した。



「俺、十四歳の時に中忍試験を初めて受験することになったんです。すごく嬉しくて、やる気満々で張り切っていました。絶対に合格するぞ〜って。」
「うん、それで?」
カカシが促すとイルカは当時を思い出したのか、何かを懐かしむような顔になる。
「で、中忍試験を数日後に控えた俺に単独の任務が回ってきました。俺は大喜びしました、下忍の俺に単独任務なんて初めてだったし。命令書を届けるだけのランクの低い任務だったけど嬉しかったんです。」
多分、下忍時代のイルカは、すごく頑張っていたに違いない、可愛かっただろうなあ、とカカシは別のことを考えていた。
「そして、その命令書を持っていく先が、これまた、すごかったんです。」
イルカは、うっとりするような顔になる。
「なんと、上忍の方だけがいる戦場に近い野営地へ命令書を持っていくことだったんです。上忍は俺の憧れであり目標だったので俺は任務を依頼されて、とても感動しました。憧れの上忍に会えるって、わくわくしていました。」
きらきらとイルカの瞳は輝いた。
「強い上忍、かっこいい上忍、クールな上忍、それが俺の上忍の方へ持っていたイメージでした。」
「・・・・・・へええ。」
その頃、既に上忍で上忍の内情を知っていたカカシであったがイルカの夢を壊さないためにも、敢えて何も言わなかった。



「でも。」とイルカは肩を落として顔を下に向ける。
声が低く小さくなった。
「俺が命令書を持って、その野営地に行くと・・・。」
そこで言葉が途切れて、はあっと溜め息がイルカの口から漏れる。
「そこで、何かあったの?」
心配になったカカシが下から覗き込むようにイルカ顔を見ると、イルカは少し微笑んでカカシを見た。
そのまま、顔を上げてカカシを見たので安心する。



「その野営地で、どうしたの?何か意地悪なことでもされたの?」
重ねてカカシが聞くとイルカは首を振った。
「ちょっと違います。」
何かは、あったらしい。
「俺が野営地に行くと鋭い目をした上忍の方が、たくさん、いらっしゃって俺は大注目されました。注目されて、どきどきしながら任務を受けた命令書を、野営地で一番偉い方に無事に渡せた時は本当に、ほっとしました。そして任務は終了したんです・・・。」
ふっと、イルカは遠い目になった。
「任務が終了して里に帰ろうと、上忍の皆さんに挨拶をした時です。上忍の方たちが一斉に俺に、わっと押し寄せてきました・・・。」
「えっ、上忍のやつらが?」
話の思わぬ展開にカカシの方が驚いた。
「そ、それで、どうしたの?」
イルカの身に何が起こったというのだろうか。



「上忍の方たちの行動に俺は、とても、びっくりして動けなくなってしまいました。そんな俺を上忍の方たちは『まだ、里に帰らなくてもいいのだろう、ゆっくりしていけ。』とか『任務が終了したのなら、ここで休んでから里に帰れ。』とか言ってきて。」
なんとなく、その後の様子はカカシは想像がついた。
戦場に出る忍の日常には変化が余りなく、里に家族を残してきてる者も多いので、十四歳という年頃のイルカが実に珍しかったに間違いない。
久しぶりに見る子供、少なくても上忍たちの目には、そう映り、テンションが高くなったのだろう。

「皆さん、『子供が、こんなところまで任務に来るなんて偉いなあ。』、『遠いところまで、よく来たねえ。ご褒美にお菓子をあげるよ。』と口々に俺を褒めてくださって至れりつくせり、俺のことを子供だ子供だ子供が来た〜!と頭を撫でてくれたり抱っこしたりして可愛がってくれました・・・。」 「・・・・・・戦場って娯楽が少ないからねえ。」
カカシがイルカを慰めるように言った。
「その頃の俺は十四で上忍の方から見れば子供といっちゃあ、子供ですけど・・・。中忍試験も受験するしって、俺、自分では、もう大人のつもりでいたんです。」
十四歳といえば、子供と大人の中間、微妙な年頃で、イルカは気持ちの上では背伸びして大人になったつもりでいただろうと容易に考えられる。



なのに。
「なのに上忍の方に子供扱いされて、いや、それはいいんですけどね、俺が子供だっただけですから。身の程を知ったということで。」
慰める言葉が見つからなくてカカシは握っていた手を離してイルカの肩に手を回して、もう片方の手でイルカの背を、ぽんぽんと軽く叩いた。
そんなカカシに安心したのかイルカは体の力を抜いてカカシに凭れかかってくる。
「俺の中の上忍のイメージも、がらがらと崩れ落ちました。上忍の方たちは親しみやすく親切で、大の子供好きだったんです。俺は十四歳としては背も大きくはなかったですけど、それなりに体格はあったのに、そんな俺を簡単に腕に抱き上げたり、軽々持ち上げたりと上忍の方は本当にすごくて。」
イルカ先生を抱き上げたなんて、ちょっと羨ましいとカカシは、どこの誰かも分からぬ上忍に嫉妬した。
俺も抱き上げてみたかった、と。



だけども今、自分の腕の中にイルカがいることで、その嫉妬は霧散する。
今が大事だ。
今、イルカが自分の傍にいることが大事なのだ、と。
「上忍の方たちに散々可愛がられた俺は、中忍試験があるからと、やっとのことで里に帰りました。でも上忍の方の予想外の行動に動揺していたらしい俺は・・・。」
イルカから悲しげな声が聞こえた。
「俺は、その年の中忍試験に落ちました。」
カカシは、ぎゅっとイルカを抱きしめる。
なんだか気の毒で気の毒で、しょうがなかったのだった。






その手の温もり16
その手の温もり18




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