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その手の温もり15



どうにかこうにか、朝ご飯が終わった時には、ぐったりとイルカは疲れきってしまっていた。
ご飯を食べただけなのに、この脱力感はいったい、どういうことなんだ・・・。
自問自答していた。
普通は食後って、お腹いっぱいで眠くなるのに全然、そんな気にならないよ。
ならないというか、なれない。
カカシが傍にいるだけでイルカは緊張していた。
意識しまいと思えば思うほど、カカシを意識してしまう。



だって、あんなこと言うから・・・。
カカシが言った、あんなことの数々を思い出すと顔から火が出るように恥ずかしくなる。
おまけに耳が聞こえるとカカシに告げるタイミングを外してしまった。
どうしよう・・・。
イルカは本当に悩んでしまっている。
カカシのことで悩んでいるのにカカシは、イルカが不安なのかと今も手を握ってくれていた。



ああ、もう、俺の馬鹿。
自分を叱責してみるものの、解決策が浮かばない。
カカシさんをカカシさんだと解ってない振りをしながらも耳が聞こえるようになったことを、さり気なく教えたい。
そんなことを考えてみるが、無理な注文というものだった。
なんとかカカシさんが傷つかないようにっていうか、気にしないように耳が治ったことを言いたいんだけどな。
しかし、耳のことをいえば今までカカシが言ったことを総て聞こえていたということも分かってしまう。
それは伏せたいんだけど・・・。
考えれば考えるほど、どんどん、窮地に追い込まれていくイルカだ。



悩んで考えて、ふっと顔を上げたイルカは目に違和感を感じた。
目が少し痒いような、ちくちくと突き刺さるような感じがする。
カカシに握られていない方の手で包帯の上から瞼を撫でてみた。
すると瞼がむずむずして、ちくちくとした感覚が高まり包帯の上から瞼を掻き毟りたくなるような。
イルカの動作にカカシは気がついて言った。
「包帯の位置が少しずれていますね。巻き直しましょうか。」
そう言ってイルカの目の包帯を丁寧に取り外していく。
包帯が目から総て、取り払われるとイルカの瞼は自然と開いた。
ゆっくりと瞼を開けると何日かぶりの光と色の眩しすぎる世界。



目の前には光を浴びて銀色に輝く髪のカカシがいる。
「・・・見える。」
イルカは呟いた。
まだ目が視界に慣れなくて、瞬きを何回も繰り返しているが徐々に落ち着いてきた。
はっきりと目の前のカカシを確認してイルカは、ほっとして微笑んだ。
だがカカシは、と見ると顔が蒼ざめている。
「イルカ先生・・・。」
その後の言葉が出ないらしい
「あ・・・。」とイルカも気がついた。
お互いに嘘というか、隠していることがあるのを思い出したのだ。
そのままカカシとイルカは見詰めあい、気まずい沈黙が訪れた。




だけども沈黙は僅かしか続かなかった。
イルカの病室へ騒がしい来客者があったからだ。
「イルカ!耳が治ったんだって!」
大きな声で言いながら入ってきたのは、五代目火影の綱手だった。
「え、耳も治っていたの?いつから・・・。」
カカシは更に蒼ざめている。
「あ、あの、カカシさん。実はですね・・・。」
弁解を試みようとしたイルカだったが、それよりも切羽詰まった風の綱手に遮られた。



「イルカ!私が個人的な任務で頼んだ、受け取ってきてほしいと言った書状は今、どこにあるんだ?」
「え。ああ、任務の・・・。」
「そうそう、それそれ。明日、シズネが帰ってきてしまう、その前に一刻も早く、それを燃やして証拠隠滅を謀らないと・・・。」
イルカは綱手の切羽詰った様子が、よく分からないまま「多分。」とカカシを指差した。
「俺を助けてくれた忍の方に渡しましたので、カカシさんが持っているのではないかと・・・。」
任務で受け取ってきた書状は、てっきり、もう綱手に渡してくれている、とイルカは思っていたのだ。
「ああ、そうでした。」
カカシはイルカから預かった書状を懐から取り出した。



「すみません、すっかり忘れていました。」
ばたばたしていましたから、とカカシは一応、謝りながら綱手にイルカから預かっていた書状を綱手に渡そうとした時、もう一人の来客者がイルカの病室に現れた。
綱手が、その気配に傍目から見て分かるほど身を竦ませる。
「綱手さま、それはなんですか?」
病室の入り口に腕組みをして立っていたのはシズネであった。
「シ、シズネ。お帰り、早かったねえ。帰還は明日じゃなかったのかい?」
精一杯、平静を装うとする綱手に対してシズネは簡潔に答える。
「帰還が早まりましたので。里に着き、病院に入っていく綱手さまが見えたので、もしや、お怪我でもと思ってついて心配して跡をついて来たんですが・・・。」
シズネは、つかつかとカカシの近寄って綱手の代わりに書状を受け取って、じっくりと見てから綱手に訊いた。
「これは綱手さまの借金の証文に見えますが?」
綱手は冷や汗を浮かべて黙り込んでいる。
「借りた方はお名前から察するに綱手さまの古いお知り合いですね。」
シズネの追求は容赦ない。



「確か私が任務で里を一ヶ月ほど空ける時に約束しましたよね?誰にも借金はしないって。借金してまで賭場への出入りはしないって。」
「だ、だってさ〜。」
綱手は、そろそろとシズネは窺い見た。
「ちょっと魔がさしたんだよ、ほんとにちょっと。ちょっとだけ昔の知り合いからシズネのいない間にお金を借りて、すぐに返せばいいかと思ってさ。お金は全額返済したからイルカに、その証文を取ってきてもらっただけで・・・。」
ぴらぴらとシズネは借金の証文を振りかざす。
「これが、ちょっとだけって額ですか!」
シズネの雷が綱手に落ちた。
「だってさあ、小遣いだけじゃ足りないんだよ。」
綱手は、しゅんとしてしまう。
火影の威厳は、どこかに吹っ飛んで、まるで子供のようにシズネに叱られていた。
「だってじゃありません!」
シズネは眉を吊り上げて厳しく言い放つ。



「ねえねえ。」
そんな二人の間に恐いもの知らずのように割り込む者がいた。
「お聞きしたいんですけど、火影さま。」
「なんだい、カカシ。」
綱手はシズネから逃れるようにカカシの会話に喜んで乗っかった。
「火影さまの依頼で任務に行ったイルカ先生が帰り道に襲われたのは何でなんですか?その書状が関係あるんですかねえ。」
「いやあ、ただの偶然だよ。」
顔の前で綱手は手を横に振る。
「私も、びっくりしたからねえ。こんな秘密の隠し事を、こっそり頼むには口の固いイルカが適任だと思って頼んだら、まさか帰りがけに襲われて、こんなことになるなんて・・・。」
「じゃあ、火影さまが最初から借金しなければ、イルカ先生が余計な怪我することもなかったんですね?」
「そ、そうだな・・・・。」
カカシの突き刺さるような視線から綱手は顔を逸らした。



「さ、綱手さま。」
シズネは綱手の手を、そっと取り、がっちりと握った。
「詳しくは火影の執務室で伺いましょうか。詳細を全部残らず、洗いざらい吐いてもらいますよ。」
微笑むシズネの顔は恐ろしかった。
「私がいない間の仕事の進み具合もチェックしなくてはなりませんからね。」
「シズネ・・・。」
シズネは綱手を引き摺るように病室の入り口の方へ連れて行く。
「カカシさん、イルカさん、お邪魔しました。」
にっこり笑ったシズネに病室の扉は閉められる。



部屋にはカカシとイルカが取り残されて、再び二人きりになったのだった。





その手の温もり14
その手の温もり16




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