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その手の温もり11



教えられて急ぎ、病院の中庭に行ったカカシだったが、そこにはイルカの姿がなかった。
「あれ?いない。」
どこに行ったんだろうか・・・。
目と耳が不自由なイルカの行動範囲は広くない。
病院の外に行くとは考えられないので、多分、きっと、まだ病院の中にいるに違いない。
「イルカ先生、道に迷っちゃったのかな。」
カカシは元来た道を引き返して、病院内にてイルカの姿を探し始めた。



「イルカ先生〜、ど〜こですか〜。」
呼んでみたものも耳が聞こえないイルカに届くはずはない。
イルカの病室から通じている廊下を一つずつ丹念に探していく。
「イルカ先生・・・。あ。」
廊下の角を曲がるとイルカと思しき後ろ姿、少し遠くに見えた。
入院中のイルカは髪を下ろしていて目には包帯を巻いている。
パジャマを着せているのが、そのの模様には見覚えがあった。
なにしろ、パジャマはカカシがイルカに内緒で用意したものを着せておりイルカに似合うように念入りに選んだものだったからだ。



イルカは壁に両手をつきながら、そろそろと歩いている。
見ていて危なっかしくてカカシは、はらはらとしてしまう。
でも、とカカシは考えた。
いきなり声を掛けたら、びっくりするかもしれない。
静かに近づいて、そっと声を掛けようと思った。
だが、イルカの手をついている壁は、その先、数メートルで途切れている。
途切れた場所には壁は、勿論、存在せず、そこは階段となっているのがカカシには見えた。
階段とは知らず、イルカは壁伝いに進んでいる。
そのまま進んで行ったら・・・、とカカシは心配し、案の定、イルカは伝っていた壁を失い体のバランスを崩した。



「あっ。」
イルカがバランスを失い、階段から落ちるかと思ったとき、イルカはカカシの腕の中にいた。
転がり落ちる寸前でカカシが、それを阻止したのだ。
「危なかった〜。」
カカシの心臓は、すごい速さで、どきどきと動いている。
「よかった〜。ここで落ちたら、折角、治ってきた腹の傷が開いてしまいますもんね。更に怪我をするかもしれないし。」
後ろからイルカを抱きとめる体制のカカシは、イルカを抱きしめる手に知らず、力を入れた。
「あんまり無茶しないでくださいよ、イルカ先生。」
心配しちゃうでしょ、と言いながらカカシは、どさくさに紛れてイルカに髪に己の唇で触れてみる。
昨日、カカシが手伝って洗髪をしたばかりのイルカの髪からは、いい香りが漂ってきており、更に下ろした髪の間から見えるイルカの項にカカシの視線は釘付けだ。
イルカの髪の香りに半ば夢見心地、項を見ながらイルカを腕に抱いているという状態に、うっとりとしていたカカシはイルカの声で現実に引き戻された。



「あ、あの。す、すみません。」
イルカはカカシの腕の中から出ようと、もがいていたのだが余りにもカカシの抱きしめる力が強いため、出られずにいた。
「離していただけますか。」
「あああ・・・。そうですね。」
カカシは名残惜しそうにイルカの体に巻きついていた自分の手を外した。
その代わりに、イルカの手は握る。
「イルカ先生、一人で歩くと危ないから手を握りますね。」
握った手に、きゅっと力を入れるとイルカは僅かに体を引いた。



まるで何かに驚き、どきり、としたように。
「さっきは、ありがとうございました。お陰で助かりました。」
イルカは顔を赤らめてカカシに礼を述べる。
忍者なのに階段から落ちそうになるなんて、と失態したのを恥じているように見えた。
「いいんですよ〜。俺も急な任務が入っちゃって来られなくて、ごめんね。」
カカシは握ったイルカの手を引っ張っる。
「中庭に行くんですよね?」
イルカの手の平に『中庭』と書くとイルカは、こくんと頷いた。
そうしてカカシに手を引かれてイルカは中庭へと向かったのだった。




その手の温もり10
その手の温もり12




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