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眼鏡色の君 8



でも、とカカシは思い直す。
イルカを悲しませるのは本意ではない。
好きな人を悲しませるのは恋人の風上にも置けないと思ってしまった。
「じゃあ、ええーと。」
カカシは、あっさりと妥協案を出した。
「イルカ先生のお店には、もう行きませんから。」
「えっ。」
「大人しく家で待っています。誰とも会わずに。」
それならいいでしょ、とカカシが言うとイルカは眼鏡を外して俯いてしまった。
「どうしたの?イルカ先生。」
俯いたイルカを覗き込む。
なんだか悲しげな感じだ。



「いえ、なんでもありません。」
顔を上げた時にはイルカは微笑んでいた。
「そう?そういう風には見えなかったけど。」
伊達にイルカと付き合ってはいない。
例え、付き合い始めてからの期間は短くても、それ以前からカカシはイルカを見ていたのだから。
イルカは自嘲するように笑ってから言った。
「あのですね。」
「うん。」
「俺・・・。」
はあ、とイルカは息を吐いた。
「カカシさんを独占できたら、と思ってしまって。思った自分が浅ましく思えて・・・。」
イルカの告白にカカシは微笑んだ。
「なあーんだ、そんなこと。」
「そんなことって。」
「だってさあ、そんなこと、俺は常日頃、しょっちゅう、いっつも思っているよ。」



カカシの言葉にイルカは驚きの表情を見せた。
「え、そうなんですか?」
「そうそうそう。」
カカシはかけていた眼鏡を外し、その辺に置くと嬉しそうに笑ってカカシはイルカを抱きしめる。
「俺なんて、いつもいつも、イルカ先生を俺だけが独り占めしたいと願っていますから。」
おかしなことじゃないですよ〜、とおどけたように言うとイルカは、やっと本当の笑みを見せた。
抱きしめたカカシの腕に体を預けてくる。
ぴったり、と体をくっ付けるとイルカは安心感を得るようだ。
そしてイルカの口からリラックスしたからなのか、一緒に外へ行こうという言葉が出た。



「え、いいの?」
その言葉に驚いたのはカカシの方だった。
「はい、大丈夫です。食料の買出しも兼ねて、外へ買物がてら食事でもしに行きましょう。」
「でも。」
「平気ですよ。今日は呼び出しもありませんし。」
呼び出し、と言われてカカシは、はたと考えた。
そういえばイルカは店から帰って来てから少し休むと日中は、どこかへと出かけていた。
どこに出かけていたのかは知らないが。
きっと任務に関わることなのだと思ってカカシは黙っていた。
「実はカカシさんのことは他に潜伏する仲間に既に伝えてあるんです。」
「えっ、そうなの!」
「そうですよ、だって、こんな里から離れた場所に有名なカカシさんに会ったら逆に、びっくりするでしょう。」
「そっか。」
「それに。」とイルカは言い添えた。
「里に、ここでの休暇申請した時点で総てバレていますしね。」
「・・・それもそうだよね。」
あはは〜、俺としたことが、とカカシは照れかくしに笑ってみせたのだった。



朗報もあった。
外に出て一緒に歩きながらイルカは話してくれた。
もちろんイルカは眼鏡はかけている、カカシは面倒で眼鏡をかけていなかったけれど。
「ここの任務も、もうすぐ終わりそうなんですよ。」
「そうなんだ。」
そうしたらイルカは里に帰れるのだ。
そのことにカカシの心は躍った。
里に帰れば落ち着いて二人きりになれるから。
二人きりになって、あれこれ、進展させたいこともある。
「今週中くらいには終わりそうで。」
「うんうん。」
知らない街中をイルカと二人で歩くのが楽しくてカカシは機嫌が良い。
恋人同士みたいだなあ、と思ってから、いや恋人同士だから、と突っ込みを自分に入れていた。
穏やかにイルカと話しながら歩いてカカシは満ち足りた気持ちになる。
そんな時、ふと遠くに、ある人物が目に入った。
こちらを見ているようである。
イルカは気づいてないようだったが初めて、この街に来た時にイルカの肩を抱いていた男性であった。



カカシの心中に、たわいない悪戯心というには、ちょっと無理がある気持ちが湧き上がった。
すなわち見せ付けてやろう、というものである。
イルカと自分の仲を。
「ねえ。」
さり気なく、自然にカカシはイルカの肩に手を伸ばして引き寄せた。
そのまま肩に手を回してイルカの肩を抱く形になる。
「どうしたんですか?」
肩に手なんて、と不思議そうにイルカがカカシの方を見ている。
「いーえ、別に。」
言いながらもカカシはイルカの肩から手を離す気はなかった。
そうして前方の男性はカカシとイルカの方を見ていたのだが、いつの間にか姿は消えていた。



カカシは思い切り心の中で、ざまあみろ、と思っていた。
人の恋人の手を出すからだ、とも。
イルカ先生には、この俺がいるんだからな、と心の中で息巻く。
口に出したらイルカに怒られそうだったから。
そんなカカシの心中を知らずにイルカは特に何も疑問に思わずカカシに肩を抱かれて歩いていたのだが。
突然、「あ!」と声を上げた。
そして走り出す。
人ごみの中に誰かを見つけたようだった。
カカシを置いて走って行ってしまいそうだったので。
「ちょっと待って!」
外で名を呼ぶことは禁じられていたので、イルカ先生とは呼べず。
カカシも慌ててイルカの跡を追いかけたのであった。





眼鏡色の君 7
眼鏡色の君 9






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