眼鏡色の君 4
その目の前の光景に、かっと頭に血を上らせたカカシであったが上忍の意地で、ぐっと堪えた。
あくまでイルカは任務の一環として、ここで働いているのだ。
酔客の相手だって致し方ないのだ。
イルカの邪魔をしてはいけない。
カカシは気配を消すと店の中に入り、隅の空いている席へと座った。
少し冷静になり、店の中を見渡すと飲食店というよりは飲み屋で、しかも盛り場的な雰囲気が漂っている。
まあねえ。
顔にかけた眼鏡をカカシは、くいとかけ直した。
酒が入ると気持ちが大きくなり口も軽くなるので情報収集には持って来いの場所だけど。
だけど。
カカシは未だ、酔客に絡まれているイルカを凝視する。
酔客は昼間に見た、イルカの肩を馴れ馴れしく抱いていた男であった。
なんだ、あいつは。
イルカの手を握っている男に密かに殺気立つ。
ここに誰もいなけば人目がなければ、一思いに・・・。
愛しい人を想う気持ちから、かなり物騒なことを考えてしまっている。
物騒なことを考えながらイルカを見ていると、やっと手を解かれて厨房に行ってしまった。
そこから酒やら料理やらを運んでくる。
別の人にそれを運ぶと、そこでも手は握られはしないまでも何やら妙に気に入られたようで話をしていた。
イルカは、この店に上手く馴染んでいて忍者だとは思われてないようだ。
普通の一般人だと思われているので潜入は成功しているものだと思われる。
でもさあ。
カカシは胸には黒いものが湧き上がってきている。
これって、どうなの?
俺のイルカ先生が俺以外の人に触られたりしているのって。
これ即ち、嫉妬心というものであった。
気配をけして店の中にいたカカシであったが、堪えきれなくなってきている。
「すみません。」
ついに唐突に気配を現し、手を上げて店員を呼ぶ。
一応、酒やら料理やらを注文をするためにだ。
「注文お願いしまーす。」
手を上げて店員を呼ぶカカシの視線の先には案の定、イルカがいた。
声を掛けられたイルカは「はーい」と余所行きの声で可愛らしく返事をしてきたものの、声のした方を見て明らかに、ぎょっとして立ち竦んでいた。
驚いて口が、カの字になっている。
きっと、カカシさん、と言い掛けて止まってしまったのだ。
「店員さーん。」
カカシは愛想よくイルカを手招いた。
「ちょっと、こっち来てよ。」
イルカの顔は引き攣っていたが、そこはどんな時にも冷静に対応するように訓練された忍であるから、とりあえず笑顔を浮かべてカカシの座っている席まで来た。
「な、んでしょう?」
腰巻エプロンのポケットから注文表を取り出したイルカはペンを構えて、注文を聞く姿勢になっている。
目が、ものすごく何か言いたげであったがカカシは知らない振りをした。
「このお店のお勧めはなーに?」
とぼけて訊いた。
「お勧めは・・・。今日は、これとこれです。」
イルカはメニューに書かれている品を指差す。
「そう。じゃ、それでいいや。あと、お酒も適当に持ってきて。」
「・・・はい。」
厨房の方へ去ろうとするイルカをカカシは、わざと引き止めた。
「ねえ。」
イルカの手を取る。
先ほど酔客の男に触られている場所へと触れた。
眼鏡の下のイルカの目が微かに怯えたように揺れた。
それが何となく面白くてカカシは、にこにことしてしまう。
所謂、好きな子に意地悪するような気持ちであった。
イルカ先生のこんな顔、中々、見れないからなあ。
思わず、堪能してしまう。
ここではカカシはお客、イルカは店員の立場なので、イルカはカカシに何をされても余り強くいえないのだ。
あー、癖になるかも。
べたべたとイルカの手を容赦なく触って、漸く、満足したカカシはイルカを解放した。
「じゃあ、注文したもの早く持ってきてね〜。」
イルカは、ほっとしたように頷く。
だけども。
「あなたがね。」とのカカシの言葉にイルカの肩は、びくりと揺れたのであった。
閉店までカカシはイルカで働く店に居座って。
イルカを呼んでは注文し、他の客に対抗心を燃やして抗わないのをいいことにイルカを手を散々、触って。
店での仕事を終えて帰ってきたイルカにカカシは当然、大目玉を食らうこととなった。
でもイルカは怒りながらも言っていた。
「眼鏡をかけるなんて反則です。」
ちょっと頬を染めて。
「カカシさん、あんなに格好良くなるなんて。」
そう言われて怒られながらも、ちょっぴり幸せを感じてしまうカカシであった。
眼鏡色の君 3
眼鏡色の君 5
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