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眼鏡色の君 2



知らない誰かに肩を抱かれるイルカを物陰から見ていたカカシは、ギリギリと歯を噛んだ。
ハンカチがあったら噛み締めていたかもしれない。
知らない誰かとはイルカより少し背の高い男性であった。
「イルカ先生、なんで〜。」
悔しそうな呟きが漏れてしまう。
なんで、なんで、そんなやつなんかに〜。
もしかしたらカカシの目には薄っすらと悔し涙が浮かんでいたかもしれない。
肩を抱くなんて、俺だって数えるほどしかやったことないのに。
正確に言えば二十六回ほどだ、イルカの肩を抱いたのは。
気持ちが通じ合ってからのことだけど。



イルカは見知らぬ誰かと顔を合わせて微笑んでいる。
楽しそうに話しながら。
きっとイルカの任務は潜入、諜報による情報収集をしているのだろう。
そのことは容易に想像できた。
ターゲットか知らないが、相手方を油断させるためにイルカは知らない誰かに妄りに体を触れるのを許しているのだろう。
油断を誘って情報を得ようとしているに違いない。
違いないけれど・・・。
そこまで頭では解っていながらカカシは感情が追いついていかない。
感情に関しては忍として常に冷静になるように訓練されているのに。



目の前で、やっと勝ち得た想い人が他の誰かに肩を抱かれているなんて。
頭が沸騰しそうだった。
そっと自分の気配を消してイルカの跡を付ける。
曲がり角まで来るとイルカは、その誰かと別れて一人になった。
一人になったイルカは、てくてくと歩いて家が立ち並ぶ住宅街らしき場所へと入っていく。
そして一軒の家の前で足を止めた。
がちゃりと鍵を開けて入っていく。
自分の家のように。
家の中にイルカ以外の気配はない。
暫く、外で佇んでいたカカシは何事か考えた末に、ふっと姿を消した。




「はああ〜。」
イルカは台所で溜め息を吐きながら、気を落ち着かせるためなのか冷たい水を飲んでいた。
「もう、嫌になるなあ。」
先ほど知らない誰かに触れられていた肩を、ぱっぱっと手で払う仕草をする。
「止めてほしいって言っても、いっつも触ってくるんだもんなあ。」
顰め面をしていた。
「へええ、いつも触られるんですかあ〜。」
その声に、びくっとイルカの体が震える。
絶対に、ここにはいない人の声だったから。
「あんな風に、いつも触られているの?」



イルカが振り向くと背後に恨めしげな顔をしたカカシが幽霊のごとく立っていた。
「まさか・・・。カカシさん?」
驚愕するイルカを余所にカカシはイルカの詰め寄った。
「そうですよ〜、俺です。」
「なっ、なんで・・・。」
ここに?と言いたかったのであろうか、口をパクパクさせている。
上手いこと、声が出ないらしく本当に驚いていた。
「どっ、どどどうして。」
「どうしてって、それはね。」
ぐぐっとカカシはイルカに近寄った。



顔も鼻先がくっ付くほど近づいている。
目と目が合い、お互い見つめう。
「ちょっと通りすがりの通行人として任務帰りに、この街に寄ったら、ほんとにほんとに偶然、イルカ先生を見つけたんですよ。」
カカシがイルカに、更に迫るとイルカは後がないのにカカシから身を引こうとする。
それが面白くなくてカカシはイルカの腰に手を回すと、ぐいと自分の方へと引き寄せた。
密着度が上がる。
カカシとの接触に寄ってイルカの体温も上がったようだ。
「じゃ、じゃあ、あの・・・。」
しどろもどろにイルカは言った。
「早く里に帰らないと。」
「でも疲れているから、どっかに泊まろうと思って、この街に寄ったんだよねえ。」
泊まるところ、どこにしようかな〜とイルカを凝視すると、イルカは弱々しく首を振っている。
「こ、こは駄目です。俺、任務中で。」
それはカカシにも解っていた。



しかし一ヶ月も離れていた愛しい人に、偶然にも会えたのだ。
離れたくない。
それがカカシの気持ちだった。
「ねえ、イルカ先生。」
誘惑するような甘い声でカカシはイルカに囁いた。
「任務の邪魔はしませんから、ここに泊めて。」
「でも、それは・・・。」
「せっかくイルカ先生に会えたのに。イルカ先生は俺に会えて嬉しくないの?」
そう言うとイルカは困った顔をする。
カカシの言葉に迷っているようだ。



カカシは止めの言葉を刺す。
「ここに泊めてくれれば、宿代とか浮きますし節約になりますよ。ただで泊まれるところがあるのに、宿を取るなんてもったいないでしょ。」
任務にかかる経費は里に請求するので、節約になるのは里の財源だが。
しかしイルカは節約とか、もったいないと言う言葉に滅法弱い。
時として、それはカカシより優先されてしまったりするのだが今の場合、良い方へと傾いたようだ。
「本当に任務の邪魔はしませんね?」
イルカが疑わしげにカカシを見て念を押す。
「はいはい、邪魔しません。」
「絶対にですよ。」
「うんうん、絶対に。」
「約束ですよ。」
「オッケーオッケー、約束します。」



やっと納得したイルカは、ぎゅっとカカシの首に手を回して抱きついてきた。
「カカシさん、会いたかった・・・。」
イルカの本音が零れる。
「俺もだよ、イルカ先生。」
カカシはイルカの顔を両手で挟む。
野暮ったいような黒縁の眼鏡がイルカの顔には似合っていた。
野暮ったさが逆にイルカの顔を引き立たせ、本来、イルカが持っている純朴さや真っ直ぐな性格を目立たせている。
そっとカカシはイルカの眼鏡を外した。
服の袖でイルカの顔を擦ると化粧か何かで隠れていたイルカの顔の傷も露わになる。
「ああ、俺のイルカ先生だ。」
呟くとカカシは目を閉じてイルカに唇にキスを落としたのだった。





眼鏡色の君 1
眼鏡色の君 3





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