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ずっと待っていた9



「は・・・」
はたけ上忍、と言おうとしてイルカは言葉に詰まった。
「・・・カ」
カカシさん、と呼ぼうとしても言葉に詰まってしまう。
いったい、何と呼べばいいのだろう。
目の前には見まごうことなくカカシ本人がいた。
片手を上げて「ヤッホー」なんて言っている。
「元気?背が伸びたね」
言いながらイルカに近づいてきた。
確かにイルカは背が伸びた。
会わない数年の間に、だいぶ成長した。
近づいてきたカカシと十センチも変わらない。
「大きくなったねえ、イルカ」
そう言われて頭を撫でられた。
子ども扱いは嫌だったがカカシが相手だと何故か嫌だと思わない自分がいる。



カカシのことを何と呼べばいいのか逡巡している間にカカシは話し出した。
「少し時間ができてね、里に帰ってきたんだ」
任務の合い間に里に少しだけ帰ってきたと説明された。
「また、すぐに里を発たなきゃいけない」
「すぐっていつ?」
そんな言葉が先に口に出た。
カカシと一緒にいられる時間は、どのくらいなのだろう。
「明日の朝」
端的にカカシは答えた。
「必要な物を調達しに里に寄っただけだから、明日の朝には里を離れるよ」
ごくり、とイルカは唾を飲み込んだ。
その音が自分の体の中で、やけに大きく響き渡る。
「で、急いで用事を済ませてイルカに会いに来たってわけ」
カカシは懐かしそうな目でイルカを見ている。
相変わらず片目しか出ていないが、その目が堪らなく優しい。
「で、立ち話もなんだからさ」
何気ない動作でカカシはイルカの肩に手を回した。
肩を抱くような格好になる。
「イルカに家に行きたいなあ」とカカシは要求した。
反射的にイルカは言ってしまう。
「え、駄目です」
「駄目なの?」
カカシは悲しげな目をしたのだが、あっという間に復活してイルカに言った。
「じゃ、俺の家に来る?」
「駄目です」
また反射的にイルカは言ってしまった。
駄目駄目ばかりでカカシは気を悪くしたのだろうか?
そうっとカカシを見ると苦笑していた。
「手強いな・・・」と微かな声も聞こえた。
苦笑したカカシは手ごろな案を出してきた。
「んじゃあ、ちょっと、その辺を歩こうか」
それについてはイルカは諾と頷いたのだった。



「ほんとイルカに会えて嬉しい」
カカシは素直に胸の内を吐露してきた。
「会えない間、ずっとイルカのことだけ考えていたよ〜」
その言葉にイルカの胸が、ずきっと痛む。
「死にそうになったときも、もう駄目だと思ったときも」
ぎゅっとカカシはイルカの肩を抱き寄せた。
二人の体は、これでもかというくらい密着している。
暗い夜道、人は誰もいないので見られる心配はないが。
「苦しいとき、イルカのことを想うと生きようと思うことできたんだよ〜ね」
口調は軽いが内容は重い。
「生きてイルカに会えて嬉しいよ」
カカシは実に嬉しそうにイルカに言ったのだった。



「あ、あのっ」
カカシがいると実感が沸いてきたイルカは漸くのこと声を出すことが出来た。
だが。
「は・・・、カ・・・。じゃなくて、ええっと」
呼び名で迷ってしまう。
どう呼んでいいのか。
カカシって名前で呼んでね、と別れ際に言われたが、すぐには実行できない。
相手は名の知れた上忍だ。
すごい人だ。
そんな人を上忍という敬称を切り捨てて呼んでいいのか。
イルカは迷いに迷った。
自分が中忍であることもあって迷いが断ち切れない。
「あの、カじゃなくて、はじゃなくて」
かなり緊張して混乱している。
「イルカ」
カカシが自分の名を呼ぶことで、一瞬にして緊張も混乱も収まった。
「落ち着いて」
カカシの声は涼やかなものとなってイルカの胸の落ちていく。
「俺はここにいるから。ね?」
カカシさんって呼んでみて、と耳元で囁かれるとイルカは逆らうことが出来ない。
どうしよう、と迷う間もなく口から出ていた。
「カカシさん」
「上出来〜」
イルカの肩に手を回していたカカシはイルカを引き寄せた。
自然な流れで額にキスされるイルカ。
「えっ!今のって・・・」
男同士でキス!と、うろたえるイルカをカカシは大人の余裕で制す。
「おでこに、ちょーっと触れただけでしょ。キスのうちにも入らない」
「そうなんですか?」
「そうだ〜よ」
力強くカカシに言われると安心してしまうイルカ。
カカシの言うことには素直になれる自分がいた。



「ところで」とカカシに訊かれた。
「イルカは、もう夕飯食べた?」
「いえ、まだです」
「一緒に食べない?」
俺、腹減っちゃってもー、とカカシに言われるとイルカの腹も応えるように、グーっと鳴る。
「あはは、イルカもお腹空いているんだ」
「ちょ、ちょっとだけ」
「はいはい」
子どもを、いなすように肩をぽんぽんと叩かれてイルカはカカシに誘導される。
「ご飯食べに行こうか、美味いとこに」
美味い飯を食べることにイルカは異存はない。
まだまだ食べ盛りの年頃だ。
だから誘導されるままにカカシに連れられてカカシのお勧めの店に行った。
そこから記憶がない。


朝。
がばっと起きたイルカは叫んだ。
「ここ、どこだ!」
全く見知らぬ部屋のベッドにイルカは寝ていたのだった。





ずっと待っていた8
ずっと待っていた10





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