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ずっと待っていた6



「えー、なに言ってんですか?」
イルカは本当に何を言われたのか分からないような口調で、あっけらかんとして言い放った。
「そりゃあ、嫌は嫌でしたけど」
「・・・・・・嫌」
イルカの、その一言にカカシは激しく落ち込む。
ショックだった。
「・・・・・・・・嫌、だったのね」
「でもですねえ」
不思議だなあ、といった感じでイルカは腕を組んだ。
「はたけ上忍に関しては違うんですよね」
「違うって」
「さっきの人みたいに、すっごい嫌悪感はないです」
さっきの人とはカカシにイルカと恋人だと牽制されて去ってしまった上忍のことだ。
「あ、そうなの」
途端、カカシの顔が明るくなる。
「なんでか解らないけど、はたけ上忍とキスしたことを思い出しても吐き気もしないし飯は食べれるしで、かなり違うんです」
イルカは考えている。
「夜も普通に寝れるし」
「それって嫌って言わないんじゃないの?」
カカシが指摘するとイルカが顰め面をした。
「でも男とキスしちゃったし・・・」
そこがネックらしい。
カカシとキスをしたというより、男とキスをしたということがイルカの中では問題なのだ。
なにしろイルカは可愛い女の子とキスしたいという男の子らしい願望があるのだ、一応。
カカシと仮初めにも恋人になったら、その辺のところはどうなるのだろうか。
カカシは『好きな人が出来て上手くいったら、この仮の恋人関係は解消すればいいじゃない』と言ってはいたが。



「まあ、そんなに深く考えなくてもいいんじゃないの」
「そうですか?」
イルカは不安げにカカシを見やる。
「俺とイルカの恋人関係が仮のものだっていうのは俺たち以外知らないでしょ」
「はあ」
「イルカに好きな子が出来たのなら俺のことは気にせずに、好きな子に告白してみたらいいよ」
「えっ、いいんですか?」
ものすごく意外そうな顔をしてイルカはカカシを見た。
びっくりしている。
「でも、それって、あれじゃないですか」
「あれって?」
「あー、えー・・・」
その言葉を言う時、イルカはちょっと躊躇い恥かしそうな顔をした。
「う、浮気とか・・・」
「あー、浮気ね」
年に不相応な言葉を言うイルカがカカシの目には可愛く見えた。
「浮気は駄目だって、かあちゃんが言ってました」
「へええ」
カカシは面白そうな顔をしてイルカの話に聞き入る。
「浮気するような男は最低だって」
「ふーん」
真面目な顔して真面目にイルカは話していた。
「浮気だけは絶対にするなって」
親の言いつけに背くようなことをイルカはしたくないらしい。
それに浮気というのに抵抗がかなりあるようだ。
「でもさあ」



カカシは肩を竦めた。
「俺とイルカは仮の恋人で、しかもそれは緊急避難措置みたいなものだからいんじゃない」
「緊急・・・」
「そ。イルカにキスした時も非常事態で医療行為。今回もそれに類似したようなもんだから」
「それは・・・」
「だからイルカが俺と恋人ってことになっていて他の子に告白しても、それは浮気にはならないと思うよ」
カカシの巧みな説明にイルカは惑わされている。
いいのか悪いのか判別か付かなくて困惑気味だ。
そんなイルカをからかうようにカカシは、にっこりと笑った。
そして意味深なことを言う。
「ま、俺は大人なんでイルカが浮気しても俺は許してあげる」
語尾にハートマークがつくような言い方だった。
「で、やっぱり結局、浮気になるんですか、それ」
さっき浮気にはならないと言ったのに違うじゃん、とイルカは口を尖らせている。
「俺、そういうのは嫌だなあ」と。
「じゃ、イルカが他の誰にも告白しなきゃいいでしょ。浮気って言われるのが嫌なら」
それがカカシの結論だった。



「うーん、何が何だかなんですけど」
カカシがイルカに悪意を持っていないことは何となく分かった。
「そういえば、はたけ上忍は、どうして俺と恋人なんて言ったんですか?」
今更ながらに根本的なことを訊くイルカであった。
それは真っ先に訊かなければいけないことだったのに。
「この際、理由は置いといて。俺とキスしたり、俺と恋人だって言ってくれたり」
イルカはカカシを真っ直ぐに見つめてきた。
「俺を助けるためなら他に方法があったと思いますが」
どうして、そうまでして俺を助けてくれたんですか、と黒い瞳は問いかけてくる。
いつの間にかカカシが魅了されていた黒い瞳であった。
「それはね」
イルカに手を伸ばしてカカシは腕の中にイルカを抱きこんだ。
「なんだかさー、ほっとけないんだよね、イルカが」
ぎゅっと抱きしめてみてもイルカは嫌がらない。
「俺に触れられて嫌?」
訊いてみる。
「そんなにっていうか。嫌じゃないです・・・」
「キスは?医療行為じゃないキスとか」
「それは分かりません」
「じゃ、してみる?」
カカシに言われてイルカは、なんとも言えない顔になった。
イエスでもノーでもなく。
微妙な顔に。
「それからさ」
戸惑うイルカを尻目にカカシはイルカに、ひっそりと囁いた。
「イルカは俺の恋人なんだから俺のことは、はたけ上忍じゃなくて名前で呼びなさい」
カカシさんってね、と言われてイルカは衝動的に体が、かっと熱くなった。
恥かしさもあったのだが、それは妙に甘く痺れるよな感覚でもあったのだった。




ずっと待っていた5
ずっと待っていた7





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